観覧車の中で……
この作品は「なろうラジオ大賞6」応募作品です。
今日は金曜、金曜女のドラマシリーズです!
秋の日差しの中、観覧車がゆっくりと空へ上がって行く。
その中では……エレキギターと機材のキャリーを座席に立て掛けている男と、大きなトートを脇に置いたパンツスーツの女性が相対している。
「そんな濃いサングラスじゃせっかくの紅葉が見れませんよ」
「オレはただ、アンタに連れ込まれただけだ」
「男にとって女性から個室に連れ込まれるのは光栄なのでは?」
「そんなヤツばかりじゃねえ!」
「そうかしら?多河遼さん?」
との言葉に男は舌打ちしてサングラスを外す。
「アンタ!どういうつもりだ!」
「私、LDAグループの宮野弥生と申します。」
男は渡された名刺の裏表を胡散臭そうに眺める。
「ホンモノですよ」
「どうかな?アンタがホントの業界人なら犯罪者のオレを相手にする訳がねえ!」
「『準強姦罪』を犯したから?」
「ああ!中止罪で執行猶予になったがな! こんなオレを捉まえて、いったいどうするつもりだ?!」
「私は遼さんに命をも賭けるつもりなんです!だからこそ!真実を教えて欲しいのです!!」
「マジか?! いや、その目はマジだな……」と男は溜息をつく。
「オレを訴えて事件にした女はオレの恋人で……オレはアイツの事を心の底から愛していたんだ」
「ええ、それは私も知っています」
「その事をアンタがどうやって調べたのかは知らねえが……アイツは“潰し屋”に騙されてオレをはめたんだ! でもオレが黙って潰れればアイツに類が及ぶ事はねえ! だから何も言わず、全てを受け入れたんだ! メジャーデビューが目前だったから、他のメンバーには本当に悪い事をしたと思ったが……」
「メンバーも“潰し屋”と同じ穴の狢だった」
男は頷いて窓の外の陽ざしに手を翳した。
「紅葉は綺麗だが……サングラスが無いオレには眩し過ぎるな」
「すぐに慣れます!遼さんはこれからスポットライトを浴びるのだから」
「それはできねえ!何のためにオレが!!……」
女は男を制し、ゆっくり頭を振った。
「残念だけど……彼女は亡くなりました。不幸な形で……」
その言葉に息を呑んだ男はサングラスを掛け、しばし青空を仰いだ。
「もうすぐ頂上だな」
「ええ……もし私が『頂上でキスを下さい』って言ったら?」
「オレは性犯罪だぞ!!」
「そんな履歴!問題ではありません!あんな素敵な歌が作れる人を……信じて惚れない女が居るのかしら?」
「どうかな……問題はお互い、信じ続けられるかどうかだろうよ!」
おしまい
1000文字以内ですと……意味分かるかしら??(^^;)
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