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履歴書から見える人柄

作者: はやはや

 先日、とあるアルバイトの面接に行ってきた。うん十年ぶりに履歴書を書いた。とはいえ現役就活生が書くような気合いが入ったものではない。

 面接時間は15時〜16時の間に設定されており、その時間に来た人から順番に面接を行うシステムだった。14時55分に会場に到着すると、既に全ブースは埋まっており待機する椅子にも二十人近くが腰掛けていた。


 フライングが過ぎる! どんだけの熱量やねん! と心の中でツッコむ。受付を済ませ、追加の資料を記入した後、私も待機用の椅子に座った。

 久しぶりの面接なので緊張していた。私は都合上、週2回しかシフトに入れないのできっと採用はされない。それでも面接してくれるだけありがたいなぁ〜とポジティブに捉え、緊張を紛らわしていた。


 順番はなかなか来そうにない。少し余裕が出てきた私は周囲を見回した。会場にいるのは老若男女だった。私の斜め前に座っている白髪の女性の履歴書がちらりと見えた。


『年齢:74歳』


 え? 74? この仕事、立ちっぱなしでしかも重い荷物を運ぶとか書いてあるよ? マジか?

 てか、やはり年金だけの生活では厳しいのか。74になっても働かざるを得ないのか。あぁ老後が思いやられる……と意気消沈していると、年齢の隣に貼られた写真が目に入った。

 そこに写っているのはスーツで、セミロング黒髪の女性。その写真が貼ってある履歴書を持っているのは74歳の白髪の女性。


 いや! 何年前の写真やねん! 少なくとも20年は前よな?


 またしてもツッコむ。ニヤニヤしてしまいそうだったので、それ以上、その女性を観察するのはやめた。


 □


 何気なく左隣に目をやると男性の右腕が目に入った。その手にはクリアファイルに入った履歴書を持っている。またしても年齢が目に入る。


『年齢:51歳』


 カッターシャツにスーツのパンツ姿の、どこにでもいそうな中年サラリーマン。姿だけ見れば会社員である。でも、アルバイトの面接に来ているということは何か事情があるのだろう。

 彼が左手に持っている、事前に配られた希望シフト表が目に入った。彼が志望していたのは、深夜の時間帯ばかりだった。

 ここで私の妄想癖が開花する。

 

 ははん。マンションか家のローンでも抱えているんだろう。今の仕事も安月給で正社員じゃないのかもしれない。だから奥さんもパートに出ていて、それでもローンだけじゃなくて子どもの学費とかも必要で、深夜にこのアルバイトを入れたいのだな。

 その時間なら1,150円でこのアルバイトの中で一番時給が高いし。


 いや、まてよ。離婚の慰謝料を払うためのアルバイトかもしれない。


 というように数分妄想を次々開花させ、またしてもニヤニヤしている自分にはっ! となる。いかんいかん。面接の待機場所でニヤニヤしてる人なんて不気味だ! 自分に言い聞かせるも幾度かのタイミングで私の前に座ってくる74歳女性(履歴書の写真は20年は前の女性)によって、なかなかニヤニヤがやめられなかった。


 おかげで緊張しなかったのはありがたい。そして、面接は何の手応えもなく終わった。

読んでいただき、ありがとうございました。

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