都市計画
エリドゥに向かう道中、エンリルはニンマーに彼の都市計画を話した。
「エリドゥから少しばかり離れた土地で、1※プランヌ川の川沿いに築かれたラルサ、それと対になる双子の都市2※ラガシュ、その2つの都市の中間点から5キロほど先、丁度三角形で交差する位置に、安息の都3※シュルッパク、更にその延長線上に4※ニップールを配し、そこを拠点に宇宙と地球を繋ぐ基地を築くつもりだ。そこにエンキの天命の書版を保管し、すべての工程を効率よく循環させるのだ」
「兄上、それは素晴らしい計画ですわ」
ニンマーは彼に言った。
「シュルッパクはお前の拠点の為に用意しようと思う。医療都市として整備しよう」
「私のために…それは感謝しますが、本来の計画を優先して下さいね」
「相変わらず君は美しくも聡明だな」
その頃アブズでは、エンキも自身の拠点をどうするか計画を練っていた。
アヌンナキ達の住居をどこに準備するか、採掘はどう進めていくか、エンキは天磐舟に乗り、周辺地域の環境や土地、広さを彼は注意深く調査した。
アブズは非常に良く肥え、大きな川が流れ、豊かさで溢れた土地だった。
エンキは、流れる川の側、澄み切った湖の辺りに自分の為の住居を築いた。
採掘員が採掘の為に、地底へと降りていくために、アフリカ大陸の中央付近に大型の掘削機を設置した。
それは深く地球の内部へと掘り進み、トンネルを形成した。
そして、掘り進む間に障害となる岩盤や、岩を砕く破砕機や粉砕機を設置し、金を抽出し、精錬していった。
そこからそこから宇宙飛行管制基地に運び、宇宙船でラームの中継基地へ運び、溜め込まれ、ニビルが近付く3600年毎にまとめてニビルへと発送された。
エンキは、エリドゥとアブズの間を忙しく行き来して監督した。
時は流れ41万年前、地球には氷河期が訪れていたが、採掘の為の地球植民地化計画は順調に進んでいた。
メソポタミアには、エンリルの構想通りに七つの都市が建設され、宇宙航路網、黄金輸送網が確立。
アフリカのアブズ金鉱で採掘された黄金は、エンキの厳重な管理化の元、エリドゥに設置された黄金分離機により抽出され、バド•ティビラで精錬された後、シッパルの宇宙航に運び込まれ、ニップールにある航空管制センターで出荷を管理され、ララクとラガシュは誘導都市としてそれぞれの役割を分担、組織化し、火星の中継基地に出荷した。
採掘で怪我をした者は、ニンマーがシュルッパクのデルムンの丘に設立した病院で治癒され、採掘場に戻された。
そしてさらに時は流れ36万年前、エンリルは、金を輸送する際に火星を経由必要が無くなればと常に考えていた。 火星ではアンズーとその配下、そして300人のイギギが作業に従事しており、中でもイギギは人種的にも位が下と考えられなにかと差別を受けた。
しかしイギギたちはそれでも不満を漏らすことなく指示に従い真面目に作業に勤しんだ。
美しい地球に暮らしているアヌンナキたちに比べて、厳しい環境の中暮らし、そんな火星に配属されたアヌンナキたちからは水面下で不満が高まっていった。
中でもアンズー中心としてイギギは唆され、次第に軋轢は生まれて行った。
エンリルは、どこか自我が強く交戦的なアンズーを好ましく思っておらず、火星を経由せず直送で運搬出来ないかと計画を始めた。
エンキにことの次第を相談したエンリルは、天命の書版を用いれば可能だと判断した。
天命の書版とは、彼らの言葉で”メ”と呼ばれ、現代でいうタブレットの最終形態のようなもので、持ち歩きできるスーパーコンピューターであった。
全てのデータを保管し、自己学習機能があり、常にアップデートしながら、最適な回答を導き出し、使用者権限付きではあるが、あらゆる機器や兵器を遠隔操作出来るという使い方を間違えれば、破滅にも繋がる危険でもある代物だった。
一度航行したルートであれば、現在の惑星軌道、小惑星の軌道を計算式で導き出し、性格で安全な航路を導き出すのも容易く、自動迎撃システムにもリンクし、万が一の緊急事態にも対応出来た。
エンリルは管制塔に篭り、没頭するように天命の書版にのめり込んだ。
書版にあるデータと、安全に、自動的に運搬を可能とするシステムを構築する、それにより金はより効率良くニビルに輸送可能となり、ニビル星の大気層の亀裂は今まで以上に早く修復可能となる。
エンリルはさらに、天命の書版で構築したプログラムにより、地球各所にオベリスクを建造し、中継航路を整備した。
天と地を繋ぐとされたそれは、ニップールを中心に、光の柱を宇宙にまでそびえ立たせ、天磐舟の航路として活用した。
こうして、ニップールを中心とする、金輸送網が確立されていったのだった。
1※ ユーフラテス川
2※ ラガシュ: 灯台都市、後の大洪水後はニヌルタの都市とされた。
3※ シュルッパク: ニンマーの治療センター。
4※ ニブル・キ(アッカド語でニップール): 宇宙飛行管制基地でありエンリルの都。このニップールを中心とし、円を描くように、直接上に都市が並ぶ。また、シッパールを起点とした飛行ルートと、そこから左右対称に6度間隔で線を結ぶと、都市がすべて正確にこれらの線上に配置されている。




