アブズ
アプガルは、自身の巧みな操縦技術と、何より天命の書版により、危険回避、航路のナビゲート、水砲と連動した自動追撃システムにより無事ニビル星に帰還した。
しかしニビル星を目視し、アプガルは恐怖した。
金の撒かれて修復されたはずのオゾン層は霧散し、大気には亀裂が入ったままの母星は痛々しく、破滅の兆しを依然として残していた。
アヌと謁見したアプガルは金の採掘状況を告げた。
「王よ、地球にある大量のミネラルを含んだ水から金を採取するのには限界があり、更なる増援が必要だと進言いたします」
「アプガルよ、このままでは見ての通り、我らの星ニビルが、そして我々が滅びるのは時間の問題だ。早速、進言を検討し対策を講じる。其方は地球に戻り、其方が実際目にした物を司令官に報告せよ」
アヌは直ちにアプガルに地球に帰還するように命じ、ヌンガルが随行することとなった。
ニビル星が3600年事に太陽系を通過する度に、金によるシールドは太陽から発せられる太陽風により霧散してしまうことが分かった。
大気圏にはまた亀裂が入りその光景を見た住人達は恐怖した。
アヌンナキ達は、星を維持する為にもより大量の金が必要だと理解した。だがひとまず星の滅亡を阻止出来るとより金への期待値が高まり、地球での採掘は重要な任務となった。
アプガルが地球に帰還すると、エンキに謁見と、ニビル星で目撃したことの詳細を報告した。
報告を聞いたエンキは内心焦っていた。
次の周期で帰還させる貨物船のコンテナには僅かな金しか積み込まれていなかったからだ。
エンキは空から探索船で地質的に金の鉱脈が形成されそうな箇所くまなく探した。
調査しては毎回反応がないタブレットを見ながら焦る気持ちを抑えながらもついに、現在のアフリカ、ジンバブエの一帯に鉱脈を発見した。
エンキはニビル星に声明を送信した。
「やはり地球には金が大量に埋蔵されていた。私は彼の地をアブズと名付け、大地を掘り起こし、金を採掘し、我らが惑星ニビルを救おう」
報告を聞いたニビル星人は歓喜し、早速、採掘するにあたり会議を始めた。
しかしエンキの異母弟であるエンリルは疑念を払拭出来ないでいた。
「この場を借りて進言いたします。我が兄エンキは海から金が採掘出来ると保証しました。だが実際、期待と不安に待たされた挙句、成果は出せなかった。誰もが見てる通り、このままではこの星は確実に滅びる。鉱脈が見つかったからと言って採掘が滞りなく成功する可能性はどれほどのものか? 確証はあるのか? 我々には時間がない。その為に、金の存在と採掘を確実にする証明が必要だ」
アヌを始めらその場にいた者は皆エンリルに同意した。それほどまでにアヌンナキ達は追い詰められていたのだった。
焦りは猜疑心を生み、猜疑心は疑念を生んだ。
アヌはエンリルに命じた。
「我が王子エンリルよ、其方が地球に向かい、計画を成功へ導いてまいれ」
アヌはエンリルに全権を与え地球へ派遣することとなった。
こうしてニビル星から天空神アヌの勅命にて、新たな地球司令官が艦隊を率い派遣される。
司令官の名はエンリル、先発隊として任務に従事していたエンキの異母弟である。
エンリルは補佐官であるアラルガーを率い、大規模な金採掘に向けた艦隊を派遣し、火星に中継基地を作り、1※300名のイギギを常駐させ、2※600名のアヌンナキを地球に配属させることとなった。
アヌは、任務に従事する為に集まった民衆に語りかけた。
「ここに集まった者たち、皆立場に違わず英雄だ。君達がニビルを救う。全ての命運は君達に懸かっている。君達の成功は永遠に記憶され、永続的な栄光、名誉を得るだろう。さぁ我らの手で、我らの力で、我らのニビルを救おう!!!」
「ニビルを救おう!!!!!!!!!」
一同は思い思いに声をあげ、地を蹴り、手を打ち鳴らした。
そして、任務を指揮し、王位継承権を持つエンリルは、王の勅命により司令官の権限を引き継いだ。
だがこれは後に種族間の争いにつながっていくこととなる。
1※ イギギとは、ニビル星出身のアヌンナキに所属する別種族アンシャガルであり、巷ではグレイ星人ではないかとされている。アヌンナキは「天から地球へ来た者」という意味であり、イギギは「観察し見る者」の意味である。グレイ星人は器であり、アバターの役割があるとされたり、生殖機能がなく、人類の母体を用いて繁殖するとの説もあるが真相はまだ謎のままである。
2※ 45万年前、エンキ率いる先発隊が地球を訪れ、その3万年後42万年前、エンリルが900名もの兵士を引き連れて地球に訪れ、本格的に地球資源の採掘が始まった。42万年前まで金は海水から錬金されていたが、900名の労働者を使って鉱脈の採掘が始まった。




