ジウスドラの誕生
ルマクの配偶者バタナシュは、ルマクの父マツシャルの兄弟の娘で、際立って美しく、またしてもエンキはその美しさに強く惹かれた。
エンキはマルドゥクに指令を出した。
「お前の領地にルマクを呼び寄せるのだ。そこで、地球人によってどのように都が築かれているのか、彼に教えるのだ」
マルドゥクはすぐにルマクを呼び出した。ルマクがいなくなるのを見計らい、エンキはパタナシュをニンマーの土地シュルパクに連れて来た。
エンキは、住居の屋上でパタナシュが入浴している隙をつき、逢引きをした。シュルパクからルマクへ伝言が送られた。
“エディンへ戻れ。息子が生まれた”
と。
ルマクはシュルパクへ戻り、パタナシュは息子を見せた。その見た目は自分の思う子のそれとまるで違った。子を見たルマクは怖れ、蒼白し、父マツシャルの下へ急いだ。
「パタナシュに産まれた子を見せられました。自分の子だとは思えません」
ルマクから話を聞いたマツシャルは、子を確かめるためにパタナシュの元へ訪れた。雪のように白い肌、白銀の毛色、瞳は太陽のように輝いた。マツシャルから見てもルマクの子、自身の孫のようには思えなかった。
「この子の父親は誰だ? イギギか? ルマクの子ではあるまい。真実を言いなさい」
「父親がイギギではないことは命に懸けて誓います」
とパタナシュは答えた。マツシャルはルマクに言った。
「この子の容姿は妙だが、何かしらの啓示かもしれない。きっと彼は使命を持ち生まれてきた。それが何なのか、今この時は知る術はないが、しかるべき時が来たら解ることだろう」
マツシャルは困惑したが、何かしらの意味を見い出そうとした。まるで自身を説得でもしようとするように。
「そうだ、きっとこの子は特別なんだ。それこそいいことがやって来る前兆かもしれません」
とマツシャルは言った。バタナシュは、2人に息子の秘密は明かさなかった。
「ジウスドラ、そう名付けます。長く健やかに育って欲しいという想いを込めて」
とパタナシュは言った。
ニンマーは、新たに誕生した特別な子、ジウスドラを自分の保護下に加えた。エンキはジウスドラをたいそう可愛がり、エンキ直々に教育を施した。
1※ 110番目のシャルに生まれたジウスドラは、シュメール語で長寿者、バビロニア神話、ギルガメッシュ叙事詩での生命を見た者、ウトナピシュテム、アッカドでのアトラ・ハシース、方舟ノアと同一と考えられる説もある。大洪水により生き残り新たな人類の相となった。
この場面はエノク書にも記載がある。エノク書とは、創世記に登場する族長エノクに帰せられる書の1つで、現在ではエチオピア語訳のみがその全体を伝えている。エノクが幻の中で神を見て、200 人の天使が天から降り、天上、地上、地下の世界を巡って世界の秘密を知らされる。エノクが見た秘密の中には、この世の理だけではなく、自然界の法則、大洪水や最後の審判などの預言も含まれている。しかし、原型はタブレットのエンキ・メの話である。
このタブレットでは、マツシャルがエノクのところへ行ったという記述は無く、マツシャル自身がルマクに対して語っている。また、天の契約を踏み外したのは人々ではなく、マルドゥクと200人とイギギであり、火星から降りてきて地球人女性と交わった。
また、ジウスドラはエンキの直接の子であるが、容貌は白人系であるとされている。そして、ジウス ドラの長男セムはアジア系、ハムはエジプトアフリカ系、ヤフェトは白人系の祖となる。つまり、ジウスドラ以前はアヌンナキに似たモンゴロイド系しかいなかったが、エンキが直接地球人と交わったことにより、突然変異としての白人系が誕生したのである。
エノク書の記載の中で最も重要なのは、人間の娘と交配した、200人の天使=堕天使の名称などについての記述で、セムジャザを筆頭に、アラキバ、ラメエル、コカビエルなどが含まれている。こうした天使は、後にエノクデーモンと呼ばれるようになり、現代の一部の界隈においてエノク書は、デーモンについてのハンドブックとして、重要な魔術書の1つに数えられている。




