マルドゥク
地球の周期では、遥かに長寿で、本来であれば時間を感じる感覚も長く、成長も、老いるのも、もっと遅いはずであるアヌンナキたちも、見るからに無視できないほど影響が強く出始めていた。
地球産まれの子供たちが産まれ、その子らは、純血のアヌンナキには違いないが、ニビル星に比べて早い地球の周期により、成長する速度も早かった。
周期に適応出来ずにニビル星に帰還する者も少なくはなかったが、目に見える顕著な違いを見てアヌンナキ達は驚き、自分たちの老いも少なからず感じているものが出てきた。
そうして人類が増えると共に月日は流れ、エンリルとニンニルの息子、ナンナルは立派に成長し、王族として、後継者としての教育を受けた。
王族として各基地を回り、各部族長に挨拶をしている際に、アブズを訪れていたラクササス帝国の姫君であるクガランナと出会った。
黒い髪が映える美しい翠の瞳を持つ彼女は、その容姿でナンナルを虜にし、当然の事のように2人は恋に落ちた。
2人には娘が産まれ、エレシュキガルと名付けられた。
その容姿はそれはまたとても美しく、力強い高貴なオーラに満ち溢れていた。
しかしエレシュキガルはラクササスの因習により、親元を離され、ラクササス王家に引き取られた。
そしてナンナルは、正当な配偶者であるアヌ族の血筋であるニンガルとの間に双子の子を儲けた。
2人はウツとイナンナと名付けられ、2人の1※誕生は地球、ニビルと共に盛大に祝福された。
25万年前ほどになると、人口も増え、エリドゥを中心にアヌンナキ王族による2※初期王朝時代が始まった。
ニビル星の王、アヌを頂点とし、地球司令官エンリル、その下に王が置かれ、各地を統治し、地球を支配した。
時は流れ20万年前、地球はヴェルム氷河期へと入る。
気候の厳しさにより、地球上の生物の多くはは死に絶えた。
気候の寒冷化によって人類にも飢饉が発生した。
飢餓に苦しんだ人類は、創造主であり保護者でもあったエンキに救いを求めた。
エンキはエンリルに人類をアヌンナキの母船に匿う、もしくは居住区のドーム内に匿うよう進言した。
しかしエンリルはその進言を却下し、人類は自然の摂理に任せ放ってとくようにと通達を出した。
エンキは命令に反し、秘密裏に人類に食糧を供給し、衣服を与え、火を起こす技術授けた。
しかし無情にも、厳しい寒さには抗えず、大きく人口が激減することとなった。
そうした状況から、アヌンナキの兵士たちには新たな不満が芽生えていた。
共に働き、さらには自分たちに代わり、過酷な労働を担い、健気にも慕ってくれた人類を愛おしく感じている者が増えていたからだ。
16万年前になると、氷河期は終わりを迎え、王族の子孫に、役職が割り当てられるようになった。
彼らは各地の対応に追われたが、以前より分担出来るようになった為滞りなく復興は進められた。
気温が上昇し、再び氷は溶け、大地のミネラルを多く含んだ水は海へと流れ、豊かな海からまた雨が降り、大地を潤し、植物が繁茂し、野生動物が海と大地に多く増殖していった。
しかし、さらなる異常気象が地球各地を襲っていた。
雨は多くなり、雷は鳴り響き、川は勢いよく流れ氾濫した。
地域によっては異常な暑さが続き、地域によっては異常な寒波に襲われた。
海の氷が解け始め、マグマが蠢き、火山が噴火し、地震が多発した。
アブズから南、アフリカの南端に、エンキは観測所を設置し、息子のネルガルと彼の妻エレシュキガルに指揮を委ねた。
『何かがおかしい…』
明らかに”普通ではない”ことを、ネルガルはエンキに告げた。
ニップールでは、異常事態に気付いたエンリルを中心に、航路を順に周りながら偵察が行われていた。
火星ではマルドゥクが不平をもらしていた。
「異常気象が起きています。ここは普段から厄介な砂嵐が巻き起こっているうえにさらに、小惑星帯が乱れているのを観測しました」
その後、地球に細かい隕石が降りそそいできた。
それらは空で爆発し、燃え盛る塵となった。
塵は空を多い、風が嵐の如く吹き荒れた
降り注ぐ小惑星の数は次第に数は増え、ミサイルのように降り注いだ。
地球の地表は荒れ果てた。
火星も地球も大打撃を受け、アヌンナキの科学力を持ってしても迎撃しきることは出来なかった。
この緊急事態にエンキとエンリルは、アヌに助けを求めた。
時を待たずしてニビルから返答があった。
《太陽系にて、惑星直列が起きている! そこにニビルが太陽系に接近したことにより、重力場の均等が崩れ、小惑星帯を刺激してしまったようだ…》
惑星直列の段階で、ニビルが太陽系に近づき均等の取れていた各惑星の磁場が狂った。
それにより軽く塵のように円を描き舞っていた小惑星の軌道がずれ、地球、火星に降り注いだ。
金星はニビルの重力に捉えられ、自転方向が逆転した。
そして、砕けた惑星のかつてのパートナーであり文明の結晶、惑星の盾であり、ティアマト星の兵器が、地球からも肉眼上で見える位置に弧を描きながら姿を現した。
“キングゥ”
後の”月”である。
ニビル星が太陽系を離れ、惑星直列も終わり、小惑星帯もひとまず落ち着きを取り戻した。
エンキ、エンリル、マルドゥク、ニヌルタを中心に大惨事の調査に取り掛かった。
エンキは地球の惨状を調べ、ニヌルタは墜落箇所を調べ、隕石を回収した。
隕石衝突の影響により、少しの間、地球表面には粉塵が上がり、陽の光は遮られたが幸い地球は無事だった。
だがマルドゥクが火星を調べると、その傷は深く、火星の大気に亀裂が入っていた。
その報告を受けたエンリルは、マルドゥクに火星基地を捨て、直ちにエデンに避難するよう指示を出した。
ニヌルタは、火星基地にあった金輸送用の貨物船格納庫を、金属の町バドディビラに近い場所に建設してはどうかと、エンリルに提案した。
金を輸送用に精錬、精製加工してすぐに貨物船に乗せてニビルへと運べると非常に効率が良い。
息子の知恵と成長を誇りに思ったエンリルはそれを承諾した。
エンリルは、早速通信会議を開き、アヌへその計画を伝え、建設に取り掛かる許可を求めた。
「貨物船格納庫と、発着場をバドディビラと連携します。 今まで以上に金を効率良く輸送でき、ニビルからの供給物資の輸送も円滑に行えるようになるはずです」
そこでエンキが異議申し立てをした。
「だがその計画には1つ大きな欠点があります。 地球の引力や磁場は、火星よりもはるかに大きい。機体の消耗が激しいのではないでしょうか? 宇宙空間に基地を建設するとか代替案を検討してはどうだろうか? そして私には1つ気になっていることがあります。 キングゥの存在です。 あれを活用出来ないでしょうか? あれの有用性は計り知れない。 是非私とマルドゥクで調査させてくれないでしょうか?」
エンキはアヌ王に訴えかけた。 話を聞いたアヌ王は、2つの計画を議題にあげ話し合った。
「地球の大気が厚く、抵抗が強いのは確かだ。まずは例の衛星を調査しよう」
アヌは、地球に決定事項を伝えた。
会議では大多数が衛星探査に賛成だった。
キングゥはティアマト星の遺産であり、その科学力、貴重な資源は彼らからしても魅力的であった。
それにエンキは大いに喜んだ。
実はエンキはキングゥに魅せられていた。
彗星のごとく尾を引き弧を描くその雄大な姿に、未知の科学力と技術、彼の科学者としての探究心は病的なまでにキングゥに魅了されていた。
どのような素材で、どのような構造で、数々の外敵からティアマトを守ったその堅牢な防御力の秘密とは…。
彼はいつも考えていた。
キングゥを眺めない日はなかった。
度重なる眠れぬ夜。
どんな秘密が隠されているのか、エンキは心の底から解き明かしたいと、そう思っていた。
彼の科学者としての血が騒いだ。 そして、エンキとマルドゥクは、宇宙船に乗ってキングゥへと旅立った。
キングゥの表面に近づくと、宇宙船上から無数にある深いクレーターを観察した。
彼らは地表の傷跡を横目で眺めながら、比較的なだらかな丘に場所に着陸した。
宇宙服に身を包み、3※鷲型のヘルメットを被ると、宇宙船の外に出た。
月面の重力は非常に軽く、容易に歩き回れた。
地表は砂で覆われていたが、少し掘り進めただけで硬い金属盤にぶち当たった。
「父上、これ以上掘り進められない。岩盤か何かにぶち当たった。これはただの岩の塊だ。火星と違う。基地としては使い物にならない」
マルドゥクはエンキに訴えた。
「時間の無駄です。もう帰ろう」
「まぁ待て。焦るでない。この美しさ、完璧さが分からないのか? ここには我々の視界も、行動も、何も妨げるものはない。太陽もすぐ近くに見える。星がすぐそばで煌めいている。ここに比べると地球はまるで空虚という檻だ。闇でただぶら下がる灯の灯らない空っぽの球だ。ここからであれば我々のもつ船で遥か遠くまで駆けることが出来る。我々は、偉大なる創造主の創り出した作品をこの広大な孤独の中で好きなだけ楽しむことができる。とどまろう。この真の楽園に」
エンキは目を見開き、マルドゥクの肩に手を置き、興奮しながら語った。
エンキの言葉にマルドゥクは説得され、宇宙船を居住用に整備した。
まず初めに彼らは、地球の動きを観察し、地球の周りの動きを測定し、1ヵ月の期間を計算した。
地球の6周の間、太陽の周りを12周掛けて、地球の年を計算した。
2つの星の絡み合いが、どう輝きを失う原因を作っているのか記録した。 それから太陽の方に注意を向け、水星と金星についても研究を始めた。
「今の状況は、太陽を周回するように水星と金星があり、地球、キングゥ、火星と調和がとれている」
エンキはマルドゥクに説明した。
「砕けた腕輪のような小惑星帯が広がらないよう、かんぬきをかけるように、木星、土星、天王星、海王星、冥王星とニビルと6つの星がお互いでバランスをとっている。こうしてこの宇宙は太陽を中心とし12の家族からなる」
まるでこの世が終わるのではというような、悲惨な大災害を目の当たりにしたばかりのこの今、絶妙なバランスにより成り立つ目の前の太陽系にマルドゥクは畏怖を抱き、父に尋ねた。
「どうしてあんなことが? どうして7つの星が一列に並んだりしたんですか?」
そう彼は父に尋ねた。
宙に映し出したモニターに、太陽系の立体縮尺図を映し出し、星々の周回軌道を演算したデータを反映させた。
すると、ニビル以外の惑星は、太陽を中心に円を描くように周回しているにも関わらず、ニビルは軌道から大きく外れ、外郭を大きく楕円状に、まるで十字を切るように弧を描いた。
この星の道をエンキはアヌへの敬意の意を込めて”アヌの道”と名付けた。 深淵の奥に広がる、数多の星々を眺め、エンキは4※絵を描いた。
12の星を名付け、アヌンナキの象徴とした。
後世へと名が響き渡るように。
「私が地球に訪れた際、それは魚座の時代であった。インプットしたこのデータを元に星の位置、周期から時期をいつでも割り出せる。次いつ惑星直列が起きるか、ニビルの航路、交差するタイミングと星の位置、全て把握出来るのだ」
エンキはマルドゥクに語った。
マルドゥクはそれを聞いて、誇らしさとともに、胸につっかえていた疑念や、不満が溢れかえっていた。
「父上はすごい。星への知識や理解、科学者としてまさに天才だ。しかし何故なんです? 何故、地球とニビルでは、真に貢献した者を評価しない?」
そうマルドゥクはエンキに不満を漏らした。
「マルドゥクよ、何が不満なのだ?」
エンキはマルドゥクに言った。
「誰もまだ知り得ない真理を我らで掴んだではないか。他に何を得る必要がある?」
「父上…」
マルドゥクは頭をグシャグシャに掻きむしると、悲痛な声で項垂れるように吐き出した。
「父上がルルアメルを造ろうとした時、真っ先に選ばれたのは母ではなくニンマーだった。そして私ではなくニンギシュジッダが右腕として選ばれた!」
エンキはマルドゥクに弁明した。
「お前にはイギギと火星の最高司令官になる命令が与えられたではないか」
不満な態度をもはや隠せないマルドゥクは続けて胸の内を曝け出すように捲し立てた。
「父上、何故父上は王位を継げないんだ!? 何故地球総司令官を剥奪されたんだ! 父上のほうがあいつなんかより優れているじゃないか! それにより俺まで王位の権利を、剥奪されている! 父上、あなたはアヌの長子じゃないか。しかしなんで後から来たあいつが我が物顔で偉そうにしてるんだ!! 父上、あなたが最初にエリドゥを開拓して、アブズを見つけて、ニビルを救ったんじゃないか!! なのにエリドゥやニップール、宇宙航路に至るまで支配してやがる!! なのに貢献してきた父上の領土はアブズと海だけなんてそんな仕打ちったらあるか!!! あいつら俺に火星の総司令官の地位でも渡しとけば満足するとでも? ふざけるな!!!! 何故父上が次期王じゃない? 俺は父上、あなたの長子だ。父上を尊敬しているし、偉大なる母の元ニビルで産まれた正式な血統であり王族だ。しかしニヌルタばかりもてはやされ、金の採掘運搬に関する評価は全部あの野郎が持っていってしまいやがる。こんなの出来レースだ」
感情が昂り、涙ながらに訴えるマルドゥクをエンキは黙って抱きしめた。
1※ これは神宮式年遷宮の最初の大きな行事である“宇治橋渡り初め”が3世代揃った夫婦によって始められることの原型となる。 渡り初めの先頭は、祖母が渡女という役割で行われる。渡女は旧神領民の内から選ばれるが、3世代の夫婦が揃って元気であることが条件である。白衣を被った渡女は、夫、子供夫婦、孫夫婦を従えて、新しい橋を東から西へと渡る。
2※ アヌンナキによる地球産まれの子孫、その中から選ばれた王が、メソポタミアにあったシュメールのエリドゥを支配し始める。それにより、アルリムがシュメール王朝の最初の王となった。後の大洪水までの24万1200年は、下記の王達が都市を変えながらシュメールを支配していく。
・エリドゥ王、アルリム(在位28800年間)
・エリドゥ王、アラルガル(在位36000年間)
・バド・ティビラ王、エンメンルアンナ(在位43200年間)
・バド・ティビラ王、エンメンガルアンナ(在位28800年間)
・バド・ティビラ王、ドゥムジ(牧神)(在位36000年間)
・ララク王、エンシブジアンナ(在位28800年間)
・シッパル王、エンメンドゥルアンナ(在位21000年間)
・シュルッパク王、ウバル・トゥトゥ(在位18600年間)
そして、紀元前12000年頃、大洪水が起こる。
3※ 数多くの紋章で使われる”双頭の鷲”、シュメールの壁画に残された鳥頭の神、エジプト神話に伝わる鳥や犬を模った神々、これはアヌンナキが被っていたヘルメットからきていると考察できる。また米国は軍隊に鷲を模った紋章をしようしているが、これはエンリル率いるアヌンナキの宇宙軍のシンボルである。少なからずこの世の支配者層は真の歴史、真実の一端を知っている。だからこそ米国はイラクに駐留し、関連資料を根こそぎ略奪し、証拠となりえる史跡をアルカイダに破壊させた。そして今現在約205ヵ国の国章のうち、鷲1匹が約29ヵ国、2匹の鷲か双頭の鷲は5ヵ国が用いている。
4※ エンキの思想は今でも脈々と受け継がれている。黄道12星座、太陽系の周期、歳差運動などもエンキが観測し、まとめたとある。アヌの道の下を黄道12星座からなる帯状の道、”エンキの道”と名付けた。上の層の12の星座を”エンリルの道”とし、36星座で表し、3つの道を振り分けた。




