エデン追放
手術が終わり、生命の樹へと枝が付け加えられたアダムとティアマトはエデンに戻された。
明らかに以前と違っていた。
ティアマトはアダムの自分に対する視線が今までと違うのが気になった。
アダムはアダムでティアマトに視線を向けると、どうしても身体に視線が行ってしまった。
ティアマトの、自身とは違う柔らかな曲線を描いた肢体を見ると、何故か鼓動が高鳴り、息苦しくなり、下半身が抑えきれないほど熱くなった。
ティアマトは、アダムの視線に耐えきれず、咄嗟に近くにあった大きな葉で身体を隠した。
間が悪くエンリルは、モニター越しにアダムとティアマトの2人を観察する、エンキとニンマーの元を訪れた。
するとティアマトは、モニター越しのエンリルの視線に、観察されていることに気付いたように、アダムの手を引き死角となる森へ逃げてるように隠れた。
エンリルはその様子を見て困惑と共に怒りが込み上げてきた。
「これは一体、何をしているんだ? 君たちは何をしてるんだ? 気味の悪いペットでも飼育しているつもりか!? 本来の目的を忘れたのか!? 労働力を作る、その目的の為にこの本来であれば許されないことを許可した。 次は何をするつもりだ? 服でも着せて散歩でもする気か? 時間をどれだけ無駄にするつもりだ! 今どれだけまた反乱の兆しが出ていると思っている!! 私は最初から反対だった! 神にでもなったつもりか!!?」
「エンリル様、これはまだ実験の最終段階で、成功までの一歩手前でございます。ようやく彼らは生殖行為により、自立的に繁殖し、ただ我々の為に働く労働力として成り替わるのです」
場は凍りついた。
エンキとニンマーがどう弁明しようか考えていると、ニンギシュジッダは物怖じせず弁解した。
己の所業を微塵も間違っているとは思わず、科学者として、これから待つ結果に対して揺るぎない絶対なる自信があった。
しかしこれがさらにエンリルを怒らせた。
今目の前にいたのは紛れもなく“生物”。
なんら我々とは変わりない生物。
エンリルは、ニンギシュジッタの人道的ではなく、生物を物として捉えたような言い回しに我慢出来なかった。
「作戦は中止だ!! あの生き物をここから1※追放しろ!!!!」
「ちょっと!! すべてを台無しにする気!?? そんなことしたら全て水の泡となる!」
ニンマーは訴えたがエンリルは取り合わなかった。
エンリルの命令で、エデンから追放されたアダムとティアマトは、 エンキによって秘密裏にアブズへと匿われた。
木々で囲まれた泉のほとり、外敵の少ない比較的安全な土地に2人は放たれた。
エンキは実験の成功へ向けた奇跡を、今か今かと注意深く見守った。
それはまさに奇跡であり、エンキは未だかつてないほどの喜びを感じていた。
…………そして…ついに…
………………ティアマトは妊娠した。
ニンマーはエンキから、2人の出産の知らせを聞くと、信頼できる助産師を伴いやってきた。
無事、双子の男の子、女の子が産まれた。
エンキとニンマーは驚嘆の目で産まれたばかりの奇跡を見つめた。
さらに、アブズのドームから手術を施した14名の男女の番をコロニーへ放った。
彼らもまた子を授かった。
彼らの成長、発達速度はは驚きだった。
彼らの子はまた、それぞれと交わり、その子がまたすぐ成長し、またそれぞれで交わり、また子が産まれ、また子を産み、月日は流れるように過ぎ去り、アヌンナキの感覚で1年が経つ頃、つまり3600年経過する頃には、アダムとティアマトから始まった人類は爆発的に増えていった。
エンキは人類に食物を与え、労働力としての訓練を施した。
人類は命令を理解し、アヌンナキと共に採掘に従事した。
アヌンナキたちであれば悲鳴を上げるような、単調な重労働力をこなしながらも人類は、不平不満を訴えることはなかった。
彼らは無意識か、もしくは食糧を得るためか、人類にとっては創造主であるアヌンナキと共にいたいと思い、従順に仕事をこなした。
次第に人類の人口増加と共に、アブズに配属されていたアヌンナキ達は徐々に過酷な任務から解放されていった。
反乱の兆しも収まり、金は当初想定していたよりも早く、安定した量がニビルへと送られ、ニビル星の大気は修復されていった。
アヌはこれを深く感謝し、エンリルはエンキたちの所業、ルルアメルである人類を認めざるをおえなかった。
1※ 聖書にある楽園追放に繋がる。主たる神はエンリルであり、食べるなと言われていた知恵の実を、目が開き善悪を神々のように知るだけだと食べるようにイブにそそのかした蛇、リリスであるエンキ、ニンギシュジッタ、ニンマーのことを話している。イブはアダムにも実を食べさせ、善悪を知り、男女であることを知り、エデンを追放された。リリスは呪われよと地を這い回る蛇に変えられたとあるが、これは立場による解釈による見方、問題である為、一概にもその言葉通りに受け取らなかった場合また話は変わってくる。知恵の実が実る知恵の樹、これは生命の樹だとすると、人類に知恵を授けたエンキは、悪魔サタン、堕天使ルシファーともされるが、本来は賢者であり、龍神ということになるからだ。




