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水星霊達の旅路  作者: 愚畜
1/1

プロローグ:仲間との出会い

よろしくお願いします

 海か、湖か、川か、池か。

 少なくとも、水深++〔ゝ.〔ゝ ゙_(約65メートル)の水底に陽の光が届く程度には清らかな水中。

「私」はそこに住む、少し魚らしい人類・半魚人族だ。

さらに詳しく細かく、厳密に言うなら鱸の村生まれ・鱸の村育ち。

「私」はその中で少し変わっていて、水の上に興味がある。

 もちろん、ほとんど人間でも魚らしく水に住むので「私たち」の中では珍しい。

 別に必要なわけではないし、ここが嫌いなわけでもないけど。

 なんとなく、水の中だけでなく、水の外にも行ってみたかったのだ。

 幸いというのか、水の中に住むのは単なる風習で、わたしたち半魚人という種族は水の上でも普通に暮らせる。

 泳ぎやすい足の形は、少し土の上を歩きにくいらしいけど、別に浅瀬から土の上を見てみるだけでも、歩かなくても別に良いのだ。


 そんな変わり者の「私」だが、別に珍しいだけで、特に悪いことは無かったから、最初、水の上に出たいと言い出した頃は、何も言われなかった。

 なのに、いつからか近所の水の精霊(ウンディーネ)水の精霊人(ニンフ)の里が、誰かに襲われたのか警戒するようになって。

 最近は「私たち」の仲間も、どこかへ行ってしまう。

 そんな物騒な時期になってしまって、「変わった」行動はできなくなってしまったのだ。

 最初は普通に泳ぐこともできたのに、今では半魚人の村からも出られない。

 今が兵士(守り)の時期なのは分かってるけど、旅人志望の「私」が閉じこもってどうするというんだろう。

弓矢(監視)だって、敵を探すのならともかく、村の中に向けて良いことなんてないって、少し考えればわかるのに。


 ……まぁ、こんな窮屈な時期を、ただ漂って待つわけもなく。

 村を囲む岩山に、抜け道を見つけた「私」は、抜け出した後に伝わるように言葉を残して、生まれた村を抜け出したのだ。


 とはいえ、無謀だとは分かっているので、少しは考えてある。

 要は、敵の正体が分かれば良いのだ。

 水の精霊たちは、半魚人族より怒っているらしい。

 だから、水の精霊(ウンディーネ)たちの里へ行って、こう……協力する。

 相手だって、こんな突飛な行動は、あまり想定しても、対策はできないだろう。

 なにせ古くから伝わる……と、長老が語っていた勇者様と同じ作戦だ。

 こんなよく分からなくて、みんなが不安な時期を打開して、そして冒険したい、そんな状況に、これほどぴったりな作戦はあるまい。

 まさか本当に魔王の仕業とは思わないけど、でもみんなを不安にさせるのは悪い奴で、その悪党を出し抜いて懲らしめるのに、これ以上は無い。多分。


 ところで。

 近所の水の精霊(ウンディーネ)の里とは言ったが、近所とは全体的な意味だ。

 つまり、比較対象がこの水の世界全体の、いろんな種族の里とか村とかなのだ。

 当然、そんな中で近所とは言っても、祭りとかならともかく、一人旅には遠い。

 もちろんそんなことは常識なので、抜け出すつもりの以上、準備はしていたが。

 ちょっと見張られてたので、不完全というか、八分というか、五分というか。

 ぶっちゃけ三割しかない。食料が。

 しかも一人だと逃げないように監視するのも難しいので、もっと大変かも。

 なので、この旅も危険なものである。

 孤立しているのだから、まあ当然だ。

 例の犯人かすら関係なく、普通の捕食者達も襲ってくるだろう。

 だが、仮にも?自分を勇者様と例えたように、戦闘能力はある。ちゃんと斬撃の。

 どういうことかは、村のみんなも、たまに里の精霊も首をひねるけど。

 なんか爪を伸ばしたりして、こう、まあ、強くなって戦えるのだ。

 あと牙も伸びる。鋭くもなる。攻撃用だけど、硬くもなるらしい。

 それでも普通に頼りないけど、頑張って進むしかない。

 実際、この状況で自分一人消えても、みんなは勝手に出ていったってわかるだろうし、逆に村の中まで入ってきたかもって想定もして警戒もする。

 そしてちゃんと成功した場合、膠着してて調査が遅いのが一気に進む。

 捕まって人質になっても、今までいっぱい消えてるんだから今更変わらないし。

 つまり、自分一人を失って警戒がちょっと強まるか、大打撃を与えるか。

 考えるまでもなく有利な賭けで、自分の目的も達成できる。

 負ければ死ぬか、それぐらいやばいけど、まあ、それはいつの旅も同じだろうし。

 そして、襲われた上で勝てば、足りない食料もなんとかなるかもしれない。

 うん。

 きっとなんとかなるし、なんとかならなくても大丈夫。

 食われるのは嫌だけど数日で終わるだろうし、捕まったらどうなるかは興味もあるから、死ねば終わるだけで、なんともないのだ。


 と、同じようなことを何度も考えても、道が縮むわけでもなく。

 踏み均された黒い苔の道を50歩百歩、五千、五万歩以上歩いたかという頃。

 里はまだのはずだが、何やら奇妙な、歪曲した物体を見つけた。

あんな奇妙なものは、水の精霊ぐらいだ。

 もしや、何かあったのだろうか。

 いや、現状で単独行動しているなら、何か無くても異常なのだから必ず何かある。

 しかし、あれが犯人か捕食者の釣り餌という可能性も……


「貴方半魚人!?どうしてここに!?」


 見つかった。この距離で見つかるならほぼ間違いなく水属性。

 あの焦燥感も釣り餌に演じられるものではないはず。

 つまり、多分本物の水の精霊(ウンディーネ)だ。


「里まで、協力へ行こうかと。

 それに、もしかしたら犯人も見つけられるかもって」


精霊(ウンディーネ)にも見つけられないのに?

 そもそも、半魚人は狙われないでしょう?」


「え、はい?

 もちろん、精霊の代わりに見つけるのは運頼みですが……

 (ぼく)の村からも、確かに行方不明者は出てますよ。

 (ぼく)みたいな旅人ではなく、弓矢や兵士も。」


「妙ね……まぁ、協力は助かるわ。

 私も脱走しても帰り道が分からなかったし。

私は箱舟(ウンモ・ルェイ)。貴方は?」


「私はアドゥジャ。アドゥジャ・アォリと申します。

 やはり分かりづらい拠点にでも捕まってたんです?」


「それが、そもそもこの水の異界の中ではなかったらしいわね」


「中ではない?別のところから?」


「ええ。土の気配が濃かったし……土の精霊の関係ね。

 いつの間にか隣接してる異界を作って、土の中から石の中に繋いでたし」


「それは確かに土ですね。ですが、なぜ土の民が?

 水と相性は悪くなくとも、それこそ何の因縁も無いはずですが……」


「私にも分からないわ。少なくとも、最近妙な話を聞いたりはしてない。

 魔王軍の策略か、あるいは余所の水の民が勝手に喧嘩ふっかけたとかかしら?」


「……まぁ、それも後で調べましょう。

 ところで、実は切羽詰まってて食料が少ないのですが、くれませんか?」


「もちろん。助けてもらうし、旅人一人養うぐらいは簡単よ」

この世界の深さの単位。

+ ゙_ = 約40cm。


ちなみに海中の長さの単位は[‘⊃]。+‘⊃で約65cm。


海中と地上・空中では、マイルとメートルなどのように長さの単位が違う。時間も地球とは違う。

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