地味令嬢と恋の雫
クラリス・シスケン子爵令嬢の婚約者、アスラン・ミューゼル侯爵令息は派手な美貌の持ち主でモテモテの女たらしである。
今日の夜会でも、クラリスはいつものように壁の花になって、女子に囲まれて歯の浮くような台詞を繰り返す婚約者を眺めていた。
金色の髪にエメラルドの瞳、白皙の美貌の侯爵令息を婚約者に持つクラリスは、灰色の髪に薄い青の瞳という目立たない容姿の地味令嬢だった。
そのため、周りからは不釣り合いな二人と言われている。
「身分違い」だの「地味令嬢では釣り合わない」だの、そんなことは言われなくても誰よりクラリスが一番よく知っている。
ミューゼル家が何のつもりなのか知らないが、侯爵家からの申し出を断れるはずもなく、クラリスは何がなんだかわからないままにアスランと婚約した。
アスランも、不本意なのだろう。婚約者としての義務は果たすものの、学園では常に女の子に囲まれているし、夜会ではクラリスをエスコートして入場した後は他の女の子達の元へ行ってしまう。
(さっさと婚約解消してくれないかな……)
自分はいつまでこの無為の時間を過ごさねばならないのだろう、と、きらびやかに着飾った美しい令嬢にモテモテの婚約者を眺めてクラリスは溜め息を吐いた。
「アスラン様ぁ。わたくしの今日のドレス、どうかしら?」
「ああ。白のジョーゼットがセイラ嬢の金糸の髪をさらに美しく引き立てているね」
「アスラン様! 我が家の薔薇園が見事に花をつけましたの。是非、お目にかけたいわ」
「美しい薔薇も、コーラ嬢の前ではかすんでみえるだろうね」
群がる女の子を褒めちぎるアスランはとっても楽しそうだ。
そりゃあ、綺麗な女の子に囲まれる方が、地味令嬢と一緒にいるより楽しいだろう。
クラリスは自分のドレスを見下ろした。鮮やかな青いドレスは両親には「似合う」と絶賛されたが、アスランからはいつも通りの無反応しか得られなかった。他の女の子には「似合う」も「可愛い」も「美しい」もふんだんに浴びせるくせに。
(まあ、私は地味だし可愛くも美しくもないから、仕方がないけれど)
褒め言葉を期待している訳ではない。
ただ、毎度毎度、令嬢達からのやっかみやら侮蔑やらの視線と、それ以外からの好奇と憐れみの視線に耐えるのにうんざりしているだけだ。
ふと、令嬢に囲まれる婚約者の肩越しに、幼馴染が手招いているのが見えて、クラリスは壁から背を離した。
アスランに断っていこうかと思ったが、彼は侯爵令嬢アーデルの見事なワインレッドのドレスを鑑賞するのに忙しいようなのでクラリスは何も言わずにそっと場を離れた。
「貴方の婚約者、いつも通りの最低男ね」
伯爵令嬢のココナは夜会の会場からクラリスを連れ出すと、思い切り嫌そうに顔を歪めた。
「こっちからは断れないって知っていてクラリスをないがしろにしているのよ、絶対。本当、なんであんなクズ男がクラリスの婚約者なのかしら。クラリスも、黙っていないでなんとか言ってやればいいのに」
「別に。アスランが何をどうしようと私には関係ないわ」
クラリスは淡々と言った。
アスラン樣、と呼んだら「婚約者なのだから樣はいらない。敬語もやめろ」と命じられたので呼び捨てにしているが、そのことでまた令嬢達から「馴れ馴れしい」「調子に乗るな」と敵視されるので面倒くさい。さりとて、命令を無視すればアスランが不機嫌になって面倒くさい。今のクラリスはアスランに関わる全てがとにかく面倒くさかった。
「どうせ、あの手のタイプはそのうち奔放な相手を孕ませて「真実の愛に目覚めた」とか言い出して婚約破棄してくるわよ。もしくは、私をお飾りの妻にしておいて外に愛人を囲って遊びまくるとか」
「なんで、そんなに冷静なのよ?」
「婚約破棄なら自由になれるし、白い結婚なら三年経てば離縁できるじゃない」
クラリスが言うと、ココナは溜め息を吐いた。
「そういう問題じゃないわよ。私が心を痛めているのは、あのクズ男のせいでクラリスが「男の子と知り合ってトキメいたり胸を痛めたりする素敵な時間」を失ってしまっているということよ!」
「私みたいな地味な女にそんなの、元から縁のない時間よ」
自嘲ではなく、クラリスは本心からそう言った。
アスランと婚約する前も、そんな経験は微塵もなかったのだから、この先もきっとないだろう。
「もー! どうして貴方はそう枯れているのよ!」
「別に、枯れては……」
十七の令嬢を捕まえてさすがに言い過ぎだろうと、眉をしかめたクラリスの前に、ココナがずいっと手を差し出した。
「……何?」
「クラリスにこれをあげるわ!」
ココナの手に乗せられているのは小指の先ほどの大きさしかない小さな小瓶だった。口元が紐で結わえられており首にかけられるようになっている。
「何、これ」
「”恋の雫”よ!」
「こいの、しずく?」
首を傾げるクラリスに、ココナは目をきらきらさせて説明した。
「お父様が旅の途中にキャラバンから買ったのですって。「これに願えば、神樣が恋を叶えてくれる」っていう魔法のペンダントよ」
ああ。おみやげ品によくありそうだなぁ。とクラリスは思ったが、口には出さなかった。ココナは昔からおまじないとか大好きで、こういうものに目がなかった。
小さな瓶には確かにうっすらと色づいた液体が入っている。小さな瓶に色水を入れて売っているのだろう。
「自分が願い事すればいいじゃない」
「あら、私にはもう必要ないわよ」
ココナはニコニコと笑みを浮かべる。確かに、必要ないだろう。彼女はクラリスよりも二つ年上の十九で、幼い頃から婚約していた八つ年上の従兄と既に結婚している。新婚ほやほやでラブラブだ。
「受け取ってよ。私はクラリスには絶対に幸せになってほしいの」
そうまで言われては、受け取らない訳にもいかない。クラリスは礼を言って小瓶を受け取った。
***
「じゃあ、会場に戻りましょうか」
「あ。私はもう少しここにいるわ」
どうせ戻ってもあの光景を見続けることになるだけだし。と言うと、ココナはそれもそうねと納得して去っていった。
それを見送って、クラリスはふう、と溜め息を吐いた。
(恋なんかしていないんだから、恋の願いなんかないわ)
クラリスは植え込みの陰にしゃがみ込んで小瓶をみつめた。
こういう可愛らしいおまじないに胸を弾ませたり出来ないから、自分は可愛いげがないのだろうか。自分より二つ年上のココナは人妻になっても可愛いままだ。
(でも、願い事なんて何も……)
その時、誰かが庭に入ってくる気配がして、クラリスはハッと息を詰めた。別に悪いことをしているわけではないが、こんなところで一人でいたとバレたら「婚約者に相手にされていないから庭に一人でいた」と思われてまたぞろ憐れまれることになる。
そう思って身を竦ませたのだが、次の瞬間、もう一つの足音が庭に近付いてきて高い声を響かせた。
「アスラン様! こんなところで何をしていらっしゃるの?」
クラリスは眉をひそめた。
よりにもよって、庭に入ってきたのはアスランと、彼を追いかけてきたらしきどこかの令嬢だ。
「ああ。俺の婚約者がどこかに行ってしまってな。まったく、一人で勝手に行動するとは」
アスランの苛立たしげな声を聞いて、クラリスは眉間にしわを刻んだ。どの口が言う。
「まあ、アスラン様をないがしろになさるだなんて。やはり、シスケン子爵令嬢ではアスラン樣にはふさわしくないのでは? 向こうから無理にせがまれて婚約されたのでしょう? お気の毒に」
令嬢が声を震わせる。クラリスは拳を震わせた。
(なんだって?)
まさか、アスランはクラリスが無理矢理アスランとの婚約を望んだとでも言いふらしているのだろうか。
冗談じゃない。侯爵家からの強い申し出だったではないか。
クラリスの父が「しかし、我が家では家格が~」とのらりくらりとかわそうとしたのを遮って圧してきたのはそちらではないか。
父も母も兄も、「クラリスには好きな相手に嫁いでいいと言っていたのに、こんなことになって……すまない」と肩を落としていたのだ。それを、まるでクラリスとその家族が権力欲のために侯爵家にすり寄ったみたいな嘘偽りを広めているのか。
それは絶対に許せない。
「いや……ないがしろにされている訳ではないが、彼女はこういう夜会は嫌いなようで」
「あら、そうですの。まあ、アスラン様のお隣ではどうしたって比べられてしまいますものね。地味令嬢ですもの」
「……まったく。いつもつまらなそうに壁に張り付いているくせに、どこに行ったのか」
「もしかしたら、他の殿方に誘われて二人で抜け出したのかもしれませんわよ」
「それは絶対にあり得ない! あんな地味な奴、誰が誘ったりするもんか!」
そこまで聞いてクラリスは立ち上がった。これ以上聞いていたら、アスランをそこの池に沈めてしまいそうだ。
「では、そんな地味な奴とはさっさと婚約解消してちょうだい」
立ち上がってそう言うと、アスランはばっと振り向いて顔を青くした。
「クラリス。いつからそこに……」
「最初からよ」
クラリスはアスランを睨みつけた。
「アスラン。いえ、アスラン様。「美しいご令嬢達から愛されている貴方が、地味令嬢に無理矢理婚約させられて可哀想」だと皆樣が心配していらっしゃいます。そんな地味令嬢とは婚約解消すべきです」
クラリスが強い口調で言うと、青ざめていたアスランがきっと目をつり上げた。
「婚約解消など出来ないぞ。何故なら、俺は……」
「では、私と結婚した後に愛人を囲うつもりなら、「白い結婚」が成立するまでは間違っても痴情のもつれとかで刺されたりしないでくださいね。私、未亡人になるのは嫌なので」
「なっ……」
怒りのためか、アスランの顔が真っ赤になった。
「では、私はこれで」
「……っ、待て! クラリス」
「ついてこないでください! 気分が悪いので帰ります!」
アスランは何事か喚いていたが、すべて無視してクラリスは足早に庭から走り出た。
行きはアスランが迎えにきたが、帰りもあの男と同じ馬車に乗るのは嫌だ。辻馬車を拾おう。
くさくさした気分で廊下を歩くクラリスは、拳を握りしめて吐き捨てた。
「地味令嬢で悪かったわね! 私だって、私だってどうせ婚約するならあんな派手な軽薄男じゃなくて、もっと……地味で誠実でクソ真面目な男性が良かったわよ!!」
握った拳を振り上げた拍子に、クラリスは自分が小瓶を握りしめているのに気づいた。うっかり忘れていた。
せっかくもらったものを割ってしまうといけないと、クラリスは小瓶を首から下げて服の下に隠した。
(せっかくだけど、恋の願いなんて当分の間、何も願えそうにないわ……)
なんだか申し訳なくなって、クラリスは心の中で小瓶に謝った。
そのクラリスの腕を、背後から誰かが掴んだ。
驚いて振り向くと、むすっと不機嫌そうな顔のアスランが立っていた。
「放してください」
「……帰るんだろう」
「ですから、放してください」
「送る」
「一人で帰れます!」
クラリスはアスランの腕を振り払おうとしたが、アスランはクラリスの抵抗に構わずそのまま引っ張られてしまう。
結局は馬車に押し込められて、家まで気まずい無言で過ごす羽目になった。
(何なのよ……)
クラリスは腹を立てていたが、もしかしたら、明日にも侯爵家から婚約解消の申し出が届くかもしれないと想像して気分が軽くなった。
あれだけ言ったのだから、アスランだって腹を立てているだろう。いくら愛人と楽しく過ごすためのカムフラージュとはいえ、こんな気の強い妻は御免だと侯爵に泣きつくに違いない。
(はやく婚約解消したい……)
クラリスははーっと溜め息を吐いた。
***
翌朝、クラリスはいつものように家を出て、学園へ向かった。
いつもは校門でアスランが待ちかまえていて、朝の挨拶を交わしてから予定の確認をされるのだが、今日からはもうそんなことはなくなるかもしれない。
そんなクラリスの期待は、綺麗に裏切られた。
本日も、アスランはいつもとまったく同じく校門前でクラリスを待っていたのである。
ただし、その光景はいつもとまったく同じではなかった。
「おはよう、クラリス! 今日の天気は晴れ! しかし、午後からは少しどんよりとした曇り空になるだろう! ただし、雨は夜まで降らないようだ! 明日の朝は雨上がりになるため、泥はねに気をつけるように! むっ。そこの男子! 制服の前ボタンはきっちり首まで留めたまえ!」
「……アスラン?」
「そこ! 道に広がって歩かない! 左端に寄り、二列ずつになりなさい! 他の通行人の迷惑にならないように!」
普段はさらさらと流している美しい金髪をぴっちりとオールバックに固めて、いつもはラフに着崩している制服をきっちり第一ボタンまで留めてまっすぐにネクタイを締め、いつもの気怠げさは皆無の直立不動の立ち方で、何故かいつもは掛けていない瓶底メガネをくいっと持ち上げ、周りの生徒に指導を飛ばすアスラン・ミューゼルの姿に、クラリスは茫然とした。
「どうした、クラリス?」
「……いや、そっちこそどうしたの?」
「俺はどうもしていない! 普段通りだ!」
嘘吐けや。
クラリスは思わず心の中で突っ込んだが、同じ突っ込みをしたのはクラリスだけではなかった。
「なあ、あれって……」
「よく見たら、アスラン様じゃない?」
「どうしてあんな格好を……」
周りの生徒達がざわめき出す。
「さあ、教室に入ろうクラリス! 遅刻はいけない!」
誰もが戸惑う中で、アスランだけは堂々と胸を張っていた。
「ア……アスラン様!?」
わなわなと震える声でアスランを呼んだのは、昨夜アスランを囲んでいた令嬢の一人、アーデル嬢だ。
「ど、どうなさったの? 何か、悪い呪いを掛けられて……?」
「むっ!」
アーデルの姿を目にするなり、アスランが素早く動いた。
さっと手を振り上げ、背中から取り出した――物差しを。
カッと物差しを地面に突き、水平にして地面からの距離を測る。
「きゃあっ!」
「アーデル・ブンゲルハイト侯爵令嬢! 貴殿のスカートは規定よりも1.3センチ短い! リボンも曲がっている! クラリスの正しい着方を見習うように!」
いきなり侯爵令嬢のスカート丈を測るという暴挙に出たアスランが朗々と述べる。
令嬢になんてことを。
「さあ、行こう。クラリス」
「え?……ええ?」
手を差し伸べられて戸惑うクラリスだったが、アーデルがへなへなと座り込むのを見ると思わずそちらへ駆け寄った。
「大丈夫ですか?」
「……わ、わたくし……わたくし……」
アーデルは蒼白な表情でぶるぶる震えている。クラリスは彼女を助け起こすとアスランに目を向けた。
「……ブンゲルハイト侯爵令嬢を医務室へお連れしてから教室へ行くので、アスラン様はどうぞお先に行ってください」
「様付けはよしたまえ! 俺達は婚約者なのだから!」
「ああ、はい……」
アスランが何かに呪われたのか何かよろしくないものを食べたのか何なのか知らないが、とりあえず関わりたくないとクラリスは思った。
***
アスラン・ミューゼルはその日一日おかしいままだった。
東に廊下を走る生徒があれば競歩で追いつき「廊下を走るのは違反だ!」と注意し、
西に授業をサボる生徒があれば「明日までに授業に出られなかった理由を原稿用紙四枚で提出したまえ!」と脅し、
南に生徒をいびる教師があれば「貴殿の行為は教育者としての権利を逸脱している! 故にこのことは王立教育委員会に報告させていただく! 既に書類は用意してある!」と言って追い詰め、
北に喧嘩やいじめがあれば「不当な暴力は法で禁じられている! 話し合いで解決しよう! 案ずるな! 貴殿等の両親は既に呼び出してある!」と言って青ざめさせ、
着崩された制服を許さず、
授業の始まる五分前に席に着き、
皆に「アスラン・ミューゼルが狂った」と言われ、
学園中の生徒及び教師の心胆寒からしめた。
そういうものに、
彼はなってしまった。
(何があったんだよ……)
放課後の教室で、クラリスは頭を抱えた。
今日一日、クラリスの元にはアスランの奇行が逐一報告され、その被害を受けた生徒及び教師陣から「あれをなんとかしてくれ!」と懇願されたのだ。そんなこと言われても。
本当に何があってあんなに人格が激変しているのだろう。なんでも教師がミューゼル侯爵家に問い合わせて確認したが、昨夜、アスランが頭を打ったという事実はないらしい。侯爵家にそんな確認するなんてすごい度胸だが、確認したかった気持ちもわかる。
(昨夜までとは全く別人だもん……派手派手な軽薄男が一夜にして地味で真面目な青年に変わっただなんて。頭を打ったんでなければ、それこそ呪いか魔法かしか考えられない……)
そこで、クラリスははた、と気づいた。
派手が、地味に。
昨夜、クラリスはそう願わなかったか?
私だってどうせ婚約するならあんな派手な軽薄男じゃなくて、もっと地味で誠実でクソ真面目な男性が良かった。
確かに、そう口にした。
だが、ただ口に出しただけで、クラリスにはアスランを呪った覚えなどない。だいたい、クラリスには呪いも魔法も使えない。ただの偶然だ。
「……魔法……?」
あっ、と声を上げそうになった。
クラリスは慌てて胸元に手を突っ込んだ。
そこに、昨夜ココナからもらった「魔法のペンダント」がある。
「恋の願いを叶える「恋の雫」……いや、まさか……」
そんな訳がない。自分にそう言い聞かせるクラリスだったが、アスランのあの変わりようを他の要因で説明することは出来ない気がした。
混乱するクラリスの元に、アスランが訪れた。
「クラリス、一緒に下校しよう」
「ひっ」
クラリスは思わず小さく呻いて身を固くした。
「クラリス? どうしたんだ?」
「い、いえ……なんでもありませ……なんでもないの」
動揺を隠して席を立ったクラリスだったが、今のアスランを直視することは出来なかった。
そんなクラリスの耳に、「アスラン様!」と叫ぶ声が届いた。
目を上げると、涙目のセイラ嬢がぶるぶる震えて立っていた。
「アスラン様! いったいどうしてしまったのですか! そこの地味令嬢に何か言われたのですか!? 地味令嬢にあわせてご自分まで地味にするだなんて、そんなのアスラン様のためになりません!」
セイラはきっとこちらを睨みつけてきた。どうやら、彼女はクラリスがアスランを脅すか何かして言うことを聞かせていると思っているようだ。
そんな訳がないだろう。どんな力を持っていたら子爵家の娘が侯爵家の息子を脅せるんだ。
だいたい、今日のアスランは格好はともかく行動はまったく地味ではなかった。今日一日でどれだけの人間がトラウマを作られたか。
「アスラン様、目を覚まして……」
セイラは目を潤ませてアスランの腕にすがりつこうとした。
だが、アスランはその手をするりとかわし、セイラに冷たい目を向けた。
「セイラ・ソーントン男爵令嬢。俺の婚約者を侮辱するのはやめてもらおう! そして、婚約者ではない男性にみだりに触れるのはふしだらな行いだぞ! もう一度淑女教育をやり直したまえ!」
どの口が。
クラリスはそう思った。
セイラは「そんな……」と悲しげに呟き、はらはらと落涙した。
だが、アスランはそんな彼女にはいっさい構うことなく、クラリスに向かって手を差し伸べた。
「さあ、帰ろうクラリス」
「え……っと、私、ちょっと用事があるから先に帰っていて」
「いや、ここで待っている」
「あ、そう……」
クラリスはアスランの横をすり抜け、泣いているセイラの肩に手を置いてそっと教室から出た。
教室の外の廊下には、どうやら付き添ってきたセイラの友達がいたようで、わらわらと駆け寄ってきたので彼女達にセイラを託した。
「ごめんなさい。アスランが……今日はちょっとおかしいだけで、たぶん、すぐに元に戻ると思うわ」
泣き続けるセイラにハンカチを押しつけて、クラリスは廊下の奥の階段を昇って、滅多に誰も来ない四階の踊り場でうずくまった。
「魔法なんて、あるわけない……」
だが、アスランのあの変わりようは、普通とは思えない。
もし、もしも、アスランが変わってしまったのが、クラリスの口にした他愛のない願いを「恋の雫」が叶えてくれたのが原因だとしたら。
「そんな訳が……」
否定しながらも、クラリスは恐ろしくなって頭を抱えた。
***
そんなつもりではなかったのに。クラリスの愚痴がアスランの人格を変えてしまったのかもしれない。
まさか、まさか、と打ち消しながらも、クラリスはそれを否定できないでいた。
(どうすれば、アスランは元に戻る……?)
クラリスは頭を抱えたまま思案した。
そして、胸元から取り出した小瓶をみつめた。
昨夜の願いを「恋の雫」が聞き届けたのだとしたら、もう一度、願えば叶うだろうか。
クラリスはごくりと息を飲んだ。
「アスランを元に戻して……」
言い掛けて、たくさんの女の子に囲まれるアスランの姿を思い出す。
真面目なアスランとは違い、前の軽薄なアスランは女の子に優しいが、あれはあれで放っておくと甘い言葉で女の子を騙して傷つけるんじゃないだろうか。
せっかく願いが叶うなら、元よりはもう少し、女の子の気持ちがわかるようになってもらいたい。
そう考えて、クラリスは小瓶に向かって呟いた。
「アスランが……女の子の気持ちになりますように」
言い方がまずかった。と、クラリスが気づいたのは、翌朝、校門の前で内股で立っているアスランに、「おはようクラリス! ねぇ、今日の放課後、一緒にお茶を飲みに行きましょ!」と頬を染めて言われた瞬間だった。
***
「女の子の気持ちになれっていったけれど、それは女の子の気持ちを理解しろって意味で、女の子になれって言った訳じゃないのよ!」
階段の踊り場で、クラリスは小瓶に向かって叫んだ。
今日は昨日以上の地獄だった。学園の生徒と教師にとって。
誰しも平和な学園内で内股で走り語尾にハートをつけ空気に花をまき散らし喋る時は頬に手を当てる侯爵令息なぞ見たくないのだ。もちろん、クラリスだって見たくない。アスランに内股で口に手を当ててもう片方の手を振りながら「クラリス~♪ ねえ、見て見て~ネクタイ、リボン結びにしちゃったー♡」などと言って走ってこられた時には、衝動的にアスランを窓から投げ捨てて後から自分も飛び降りるところだった。
そんな凄惨なゴシップはおそらく新聞社だって求めていないだろう。
「女の子らしくしてほしいんじゃなくて、もっとワイルドで……硬派……そうよ、もっと硬派に!」
翌朝、家を出たクラリスの前に、黒い馬にまたがったアスランの姿があった。
「よう、クラリス。送っていくぜ。俺のナナハンの後ろに乗りな!」
そう言ってニッと笑うアスランの制服は、何故か袖のところで破れていた。あと、頬に大きい十字傷がある。たぶん描いたんだろう。
あと、クラリスの記憶が確かなら、アスランの愛馬は「アルターテ」という名前だったはずなのだが。
「……私は、馬車で行くから」
「おいおい。ツレねぇこと言うなよ! 二人で風になっちまおうぜ!」
謹んで遠慮したい。
「ワイルドだろぉ?」
「はあ……」
***
どうにもうまくいかない。
この分だと、「聖人君子になれ」と願ったら穏やかな表情で「私はすべてを許します」と言いながら登場して神々しいオーラを放ちそうだ。下手したら神の道へ入ってしまうかもしれない。侯爵家の跡取りを出家させるわけにはいかないので迂闊なことは願えない。
どうしたものかと思いながら歩いていると、セイラに呼び止められた。
「あの……申し訳ありませんでした」
「え?」
いきなり謝られて、クラリスは目を瞬いた。
「いつも、アスラン様の周りを取り囲んで、クラリス様のことを「地味令嬢」だなんて馬鹿にして……己れがどれだけ愚かだったか、ここ数日で思い知りましたわ」
セイラは恥じ入るように目を伏せた。
「以前は、クラリス様より私の方がアスラン様のことを想っている、などと思い上がっていたのです。ですが、それは大きな間違いでした」
クラリスは首を傾げた。セイラは何が言いたいのだろう。
「私、アスラン様が変わってしまった姿に、戸惑ってしまって……元に戻ってほしいとしか考えられなかったんです」
そりゃあそうだろう。誰だってそう思う。
「ですが、クラリス様は、アスラン様がどんなに変わっても、常に態度をお変えになられない。媚びることも拒絶することもなく、アスラン様を受け入れていらっしゃる。そのお姿を見て、私は所詮、アスラン様のご容姿しか見ていなかったのだと思い知らされました。そして、クラリス様のように、アスラン様の中身を丸ごと愛することは私には出来ないと」
とんだ誤解である。
「私、自分が恥ずかしくて……」
「セイラ様! わたくしも同じですわ!」
「アーデル様!」
突然現れたアーデルがセイラを抱きしめた。
「わたくしも、ずっとクラリス様を「地味令嬢」などと呼ばわって……なんと愚かな真似を……! わたくしはクラリス様にあわせる顔もないのですっ!」
「アーデル様! セイラ様!」
「わたくし達も同じですわ!」
「私も自分が恥ずかしくて!」
「コーラ様! レオナ様! シェリー様!」
駆け寄ってきた令嬢達が抱きしめあって涙を流す。
クラリスには黙ってその光景をみつめることしか出来なかった。
***
セイラはクラリスがアスランの中身を丸ごと愛していると言ったが、とんでもない誤解である。クラリスはアスランを愛したことなどない。
なのに、このところ周囲がクラリスをまるで聖女であるかのように扱うので心が痛い。そもそも、原因であるアスランの豹変はクラリスの願いのせいだ。
(もう、元に戻そう……)
それが一番だ。
そう決意して、クラリスは小瓶をぎゅっと握った。
「アスランを、元に……」
その先が、口から出てこなかった。
ここ数日、真面目なアスランは他の女性を寄せ付けず、女の子アスランはクラリスをみつけると嬉しそうに駆け寄ってきて、ワイルドアスランは黒馬に乗ってクラリスを迎えにきた。
元の、本物のアスランはそんなことしない。
本物のアスランに戻ったら、またたくさんの女の子に囲まれて、クラリスなんかどうでもよくなる。
(別に……それでかまわないし……)
そう思うのに、小瓶に願いを唱えることが出来なかった。
(なんで……?)
自分の部屋で小瓶と睨みあっていると、母のマルティナが入ってきた。
「クラリス。噂で聞いたのだけれど、アスラン様が最近おかしいとか……」
「えー……ええ。でも、一時的なものですよ。すぐに元に戻ります」
クラリスは慌てて小瓶を隠して言った。
「そう? もしも、アスラン様に何かされたり言われたりしたらすぐに言うのよ。どんな手を使ってでも婚約を白紙にさせるわ」
マルティナはおっとりした風情には似合わぬ激しい気性の持ち主である。目が爛々と燃えていた。
「大丈夫です……そんなに気にしないでください」
「気にするわよ。だって、クラリスは小さい頃からずっと「素敵な恋人を作るのが夢」だったじゃない」
悩ましげな溜め息とともに言われたそれに、クラリスは顔をしかめた。
「子供の頃の話です」
「あらぁ、でも、よく理想の恋人の条件を語っていたでしょう? やさしくて、でも他の女の子には見向きもしないで、クラリスを見つけたら駆け寄ってきてくれて、馬の後ろに乗せてくれる人。でしょ」
幼い頃の恥ずかしい話を出されて、クラリスは嫌なことを思い出した。母の言う通り、幼い頃のクラリスは誰彼かまわず「理想の恋人」の話をしていた気がする。幼い頃にあまりにそんな話ばかりしていたがために、人より早く枯れてしまったのかと思うくらい。
だがある時、兄に「条件が多すぎだ。欲張りな女は嫌われるぞ」と言われて、結局「やさしくてかっこいい人」に落ち着いたのだった。
苦い思いで俯いたクラリスは、ふと、気がついた。
やさしくて、でも他の女の子には見向きもしないで、クラリスを見つけたら駆け寄ってきてくれて、馬の後ろに乗せてくれる人。
クラリス以外の女の子を寄せ付けず、クラリスを見つけると嬉しそうに駆け寄ってきて、馬に乗って迎えにきてくれたアスラン。
クラリスはさーっと青ざめた。
(願いって……)
小瓶は本当に、クラリスの願いを叶えていたのだ。クラリス本人さえ、忘れていた願いを。
***
自分のやっていたことの恐ろしさに気づいた。
何度もアスランの人格を改変して、自分の理想に近づけようとしていたのだ。無意識に。
何が丸ごと愛するだ。誰よりもクラリスが一番、アスランの中身など見ていなかった。どうでもいいと思っていた。
アスランの軽薄さを馬鹿にする権利など、クラリスにはない。
そのことに思い至って、クラリスは覚悟を決めた。
「アスラン」
校門前、馬車から降りるとすぐに、クラリスは話しかけられる前にアスランに声をかけた。
「アスラン。私が間違っていたわ。あなたはあなたのままでいいの。変わる必要なんかない」
「クラリス?」
アスランは怪訝そうに眉をひそめた。
クラリスは胸元からペンダントを引き出すと、小瓶に向かって言った。
「アスランは元に戻って、私との婚約を解消して、幸せになって」
クラリスはにっこりと微笑んだ。
(これが、私の一番の願い)
小瓶の向こうで、目を丸くしたアスランがクラリスを凝視している。
クラリスは小瓶を下ろして、アスランの前から去ろうとした。
だが、次の瞬間、
「……っなんでだあああああああぁぁぁあっっ!!」
響いた絶叫に、クラリスだけではなく周りの生徒達も硬直した。
声の主は、両手を地面について崩れ落ちていた。
「ア、アスラン?」
「なんでだっ! なんで、婚約解消なんて言うんだぁぁっっ!! クラリスの理想通りにしたじゃないか! それなのに!」
「へ?」
ぽかん、とするクラリスに、アスランは訴えた。
「クラリスが、「理想の恋人は女の子にやさしくてかっこいい人」って言ったから、頑張ってカッコよくなって女の子に優しくしてたのに! クラリスは俺のこと嫌うし!」
「は?」
「そしたら、クラリスが「婚約するなら地味で誠実でクソ真面目」な奴がいいって言うから、その通りにしたのに!」
「へ?」
「女の子になれって言うからそうしたし、ワイルドで硬派がいいって言うからそうなったのに!! なんで婚約解消なんだあぁぁっ!!」
「えー……」
クラリスは目を瞬いた。
(いや、どういうこと?)
「アスラン様。今のを聞いた限りでは、私達に優しくしていたのは、クラリス様の理想になるためだったということでしょうか?」
生徒達の中から歩み出てきたセイラが尋ねると、アスランは涙目で頷いた。
***
アスラン・ミューゼルは侯爵家の嫡男として生まれ、これでもかと甘やかされて育った。
何をしても褒められる日々で培われたのは幼児期特有の万能感の特大のやつだ。アスランは自分は何でも出来ると疑わなかったし、誰からも愛されると信じていた。
その鼻っ柱が盛大にへし折られたのは六歳で初めて参加したお茶会の席だ。
どこの貴族の子息子女も、皆きらびやかで愛らしかった。そんな彼らにも愛されて優しくされると信じていたアスランは、想像とは全く逆の嘲笑を浴びせかけられた。
アスランは、盛大に甘やかされた結果、六歳にしてぶくぶくに肥えていたのである。
きらびやかな子供達は自分達の空間に混ざってきた態度のでかい太った子供を、子供特有の残酷さで徹底的に打ちのめした。
これまで甘やかされたことしかなかったアスランはあっさりと心を折られ、そこから逃げ出した。
誰もいない庭の隅で泣いていると、一人の女の子が声をかけてきた。
「どうしたの?」
アスランは心を折られたばかりだったので、その女の子も自分を罵倒しにきたのだと思い込んだ。
「あっちへ行け!」
「どうして?」
「うるさい!」
「む。そんな言い方したら、女の子に嫌われちゃうよ」
女の子はアスランの横にしゃがみ込むと、アスランの頭をぽんぽんと撫でた。
「私の理想の恋人はね。「優しくてかっこいい人」なの! 女の子にも優しくなくちゃダメよ。 あなたはどんな恋人が理想なの?」
女の子に尋ねられ、アスランは顔を上げた。
目の前にはにこにこ笑う可愛い少女が、アスランをみつめていた。
アスランはこっぴどく罵倒された直後だったので、優しく微笑んでくれた少女がまさしく天使に見えたのだ。
かくて、アスランは恋の底まで一直線に落ちきったのである。
それからアスランは生まれ変わった。
父に頼み込んであのお茶会にきていた令嬢の中からクラリスの名前を捜し当てると、クラリスの理想の男になれるように努力した。
体重を落とし、侯爵家の嫡男にふさわしい教養を身につけ、女の子には優しくした。
そうして、かっこよくなったアスランはクラリスに婚約を申し込もうとした。
だが、再会したクラリスは落ち着いた雰囲気の淑女となっていて、長年かけて煮詰まった初恋を抱えたアスランはクラリスの前だといつもうまく喋れなかった。
このままではクラリスが他の男に奪われてしまうと焦った結果、父に泣きついて侯爵家の力でクラリスを婚約者にしてもらった。
自分改造に成功したアスランだが、性根は甘ったれのままだった。
婚約できて一安心したアスランだったがやっぱりクラリスとはうまく喋れなかった。敬語はやめて名前を呼び捨てにしてほしいとお願いするのが精一杯だった。
このままではクラリスに捨てられてしまうかもしれない。
そう危惧したアスランは、クラリスの前でことさら女の子に優しくした。クラリスの理想「女の子に優しいかっこいい人」であることをアピールしたのである。
しかし、これでもかとアピールしていたのに、クラリスは素っ気ないまま。しまいには、「婚約解消」だの「白い結婚」だのと言い出す始末。
どうしてなんだ、と追いかけたアスランの耳に届いたのは、クラリスの「婚約するなら地味で誠実でクソ真面目な男がよかった」という嘆き。
アスランは衝撃を受けた。
クラリスの理想は変わってしまったのか。いや、女子がよく言う「恋人と結婚相手は別」って奴か。そうか。クラリスも理想の恋人と理想の結婚相手は違うんだ。
そう悟ったアスランはすぐさまクラリスの理想の通りになろうとした。
だが、やっぱりクラリスとの距離は近づかない。
その後もクラリスの望み通りにしてみたのに、結果は「婚約解消してください」だ。
「なんでだあぁぁぁぁっ!!」
地面を叩いて嘆くアスランに、クラリスより早く我に返ったのは周りで見ていた令嬢達だった。
「……ポンコツ」
ぼそっ、と、セイラが呟いた。
「ポンコツですわね」
「見た目だけは良くて、中身はアレですわ」
「告白もせずに、結局侯爵家の力でゴリ押しってなんですの?」
「最低ですわ」
令嬢達は冷たい目でアスランを見下ろした。
そして、彼女達の心は一つになった。
この男、どげんかせんといかん。
「立ちなさい、アスラン・ミューゼル!」
アーデルが一喝すると、アスランはびくっと体を震わせた。
「いいですか? 貴方のそのどうしようもない勘違いと甘ったれた根性を、叩き直して差し上げます」
「クラリス様、少々お待ちください。わたくし達が全力でアスラン様をクラリス様にふさわしい男にしてみせますから」
綺麗な笑みを浮かべた令嬢達がアスランを引きずって連れて行った。
ちなみにこの時、クラリスは
「え? っていうことは、あの時に出会った子豚くんがアスランだったということ?」
いまだにその時点で思考回路が停止していた。
***
それから一ヶ月間、アスランは令嬢達による地獄の再教育を受けさせられた。
一ヶ月の間、首から「私はポンコツです。餌を与えないでください」と書いた看板をぶら下げ、令嬢達に引きずられるように歩かされ(時には比喩ではなく引きずられ)、自分でものを考えずにクラリスの言葉の表面だけを受け取る悪癖と自分の手に余ったら父に泣きつく甘ったれ根性を散々に叩きのめされた。
それはかつてのお茶会で心を折られた時よりも壮絶に、完膚なきまでに心をばっきばきにされ、心配して様子を見に来た父の侯爵までが「貴方が甘やかすからこんなポンコツに!」と正座で説教されるという地獄の一ヶ月だった。
ちなみに、「餌」とはクラリスのことである。
アスランの奇行によっていらんトラウマを植え付けられた学園の面々は、生徒会役員全会一致で「学園騒乱罪」で有罪、一ヶ月間のクラリス接近禁止を言い渡したのである。
かくて、愛しのクラリスの姿を見ることさえ許されない日々を過ごしたアスランは、一ヶ月の再教育の果てに再会したクラリスの前にひざまずき、
「初めて会った時から好きでしたぁぁぁぁっ!!」
と絶叫したのである。
それに対して、一ヶ月間いろいろ考えすぎて訳が分からなくなったクラリスは、
「あー……なんか、たぶん、私も好きな気がしてきた」
と答えた。
そうして、長年のすれ違いを解消して、アスラン・ミューゼルとクラリス・シスケンは相思相愛の婚約者となったのである。
ちなみに、「恋の雫」は隣国で女の子のお小遣いでも買える、人気のおまじないグッズである。
完
 




