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古の魔女  作者: 酒々井 陵
第一章:魔女狩りの国編
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魔女邂逅②

突如として現れた少女にカインは驚きを隠せないでいる。


「あ、あんたは一体……?」

「ん? ああ……少年、君が起こしてくれたのか」

「起こすって……どういうことだ?」

「封印だよ、封印。少年が解いてくれたんだろ?」


カインは先ほど開いた本がどこにも見当たらないことに気づいた。


(封印って、まさかさっきの本か!?)


「でも、君みたいな子でも解けたってことは封印も相当弱まってたみたいだね」


少女はカインの顔を見ながら何やらつぶやいている。


「あんたは……誰なんだ?」

「私か? 私は……」


カインの脳裏には、村で老人に言われたことが思い出されていた。

まさか、まさか本当にこの少女が。


「私は……誰なんだろうな」

「……は?」

「いやぁごめん、封印から解かれたばかりでまだ頭がぼーっとしててね」

「なんだよそれ……」


はっはっはと少女は笑っているが、カインは肩透かしを食らったような気分だった。

しかし、少女はすぐさまこう言った。


「ちょっと思い出すから待っててくれ」

「思い出す……?」


そして、少女が手のひらを上向けると

途端に怪しげな光を放つ円、魔法陣が現れた。


何もないところから少女の手に向かって一冊の本が落ちてくる。

少女は平然とした様子でその本を開いて読みだした。


何かを探すようにパラパラとページをめくる音が建物の中に響き

それが止まると、少しの静寂が訪れる。


「よし、これでしっかり思い出したぞ」


カインが目の前の光景に呆気にとられている間に、

またすぐ少女はカインの方に向きなおした。


「では改めて。私の名前はウィズ。しがない魔女だ。」

「ま、魔女……!」


(本当に、いた! あのおじいさんの言っていたことは本当だったのか!)


「さっきの、思い出すって何かしてたのは、魔法か……?」

「ああ、そうだよ。私の魔力”アーカイブ”」


そういって、またウィズは何もないところから本を取り出した。


(やっぱり本物の魔女だ……)


「こうやって私の記憶が魔力となって蓄積されているんだ。」

「それを使えば忘れたものでも思い出せるってことか」

「そういうこと」


ウィズは話しながら建物の外に出て歩きだした。

カインもそのあとに続く。


「でも、魔法の使い方はわかったんだな」

「魔法は体に染みついてるからね。今更忘れないさ」

「そういうもんなのか……?」


(自分の名前忘れてたくせに……)


カインが不審に思っていると、ウィズがくるりと振り返る。


「さてと、少年はどこに向かうのかな」

「俺? 俺は王都に向かって旅してる途中だけど……」


それを聞いたウィズはしばし思案する。

顎に手を当ててうーんと少し唸った後、また笑って言った。


「よし、やっぱり少年についていくことにしよう」

「ええっ!?」

「だって、私はたった今目覚めたばかりで分からないことだらけだし、君についていく方が安全だ。それに王都なら私が封印されていた間の資料があるはずだろう?」


確かに。カインはウィズの言うことが最もだということは理解していた。

自分がウィズと同じ立場でもそうしていただろうと。


が、カインは


「それは、ちょっと難しいかな……」

「あら、それはまたなんで」

「魔女を連れて歩いたりなんかしたら、たぶん俺まで危ないから……」

「危ない? むしろ魔女がついてたら百人力だぞ?」


自信満々にそう答えて見せるウィズに、カインは心配するように言った。


「あんた知らないのか?」

「え?」

「ここは”魔女狩りの国”。あんたらの天敵の国なんだぞ」

「魔女狩りの、国……?」


ウィズの動きが止まる。先ほどまでの自信がだんだんと薄れているのが分かる。


(なんかさっきより小さく見えるな)


「ええええええええええええええええええええ!?」

「ってうるさいな!」

「それはまさか魔女戦争で魔女が負けたってことなのか!?」

「ああ、大昔のね……。そう言われてるけど。」

「大昔……。私はそんなに長い間眠りこけていたのか……」


どうやら自分で思っていたより長く封印されていたらしい。

ウィズはその場に力なくへたり込んでしまった。


「そうか……もしかしてこの国に魔女はいないのか……?」

「まあ、そうなるな」


(初めて魔女を見たけど……ここまで威厳がないものか?)


あまりに哀愁漂うその様をカインは気の毒に思ってしまった。


「その……ウィズ?、一緒に王都まで行くか?」

「え、いいの……?」

「まあ……魔女だってバレなきゃ何とかなるだろ……」

「そう、だよね。そうだよね!」

「で、ちゃんと知りたいこと調べられたら、この国から出ること。それなら連れて行ってもいい」

「うん! そうする!」

「はぁ……」


(言っちまったな……)


調子のいいウィズの言葉にカインは内心少し後悔しながらも、

嬉しそうに笑うウィズを見て、間違ったことはしていないと思うことにした。


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