09 次のステップへ
『全世界変事』から三か月まで後数日。
この頃になると混乱も収まり、世界は情報も物流も何もかもがスムーズに動いていた。
【国主】も全員が【創造主】の部下なので、戦争も全て集結された。
ただ、宗教が絡む争いごとは消えることはなく、そういった地域は大変なようだ。
そして。
一部、日本の倫理が崩壊した。
もしかしたら日本だけでないかもしれないけど、日本で確実に起こったのは事実だ。
一家に一台提供された『家政ロボット』だが、何も家事のみを行う専用機ということではない。
家事をしつつも外に働きに出る『家政ロボット』もいる。そういう『ロボット』たちは、種族が変化しており『汎用ロボット』だったり『万能ロボット』だったりするようだ。
うちのユウも『家政執事』に変化しているし、家事以外に畑仕事までしているので、『ロボット』たちの仕事内容は多岐にわたる。
そんな中、『ロボット』たちに養ってもらって趣味に没頭する人たちが増えたらしいのだ。
創作活動といえば聞こえは良いが、内容が倫理ギリギリというか、大幅に突破してしまっているものが多いらしい。
何せ人類全ての精神年齢が成人しており、肉体が十歳なのだ。
血迷うなと言う方が無理がある。
そういう訳で、ロリ、ショタ系は勿論、アダルト系の出演者も十歳児で作成されることもしばしば。
しかも、何故か今まで存在していた静止画、動画関係に移っている人物はすべてにモヤが掛かっており判別不能となっていたらしいので、今現在存在するものは、倫理観を持ち合わせているロボットの協力が得られるはずもなく、全てが十歳児の人類で作成されたもののみ。
日本は何処よりも早く順応したらしく、一部界隈はそういったもので溢れているっぽい。
すべてはニュースやネットの情報であり、私はまだ実物を目にしていない。
「そろそろ三か月が経ちますね。」
「ん?もう、そんなに経つのか~。早いねぇ~。」
「えぇ、楽しい時間が過ぎ去るのは早いですね。」
祝日の関係で久しぶりの三連休となった初日。
ユウと衣替えの為に、衣服の整理をしていた。
今まで持っていた衣類全てが、今の私の体形に合ったものに変化していたので、買い替える必要がなかったのは良かった。
「しかし、これからは大変になりますよ。」
「うぇ?なんで??」
「三か月が経ちますから。」
「いや、だから、なんで三か月が経つと大変になるの?」
ユウが主語のない会話をするのは珍しい。
こんなに分かりにくい話は初めてかもしれない。
「おや?情報規制が掛かっていますか。えー...、ふむ。一家一台だった『家政ロボット』の増員が許可されますね。」
「えっ?そうなの!?」
「はい。今後に向けての安全策の為に必要ですからね。」
「はぃいっ!?」
「紗夜様に限っては私一人で十分対応可能かと思いますが、どうしてもということでしたら増員に関して相談に乗りましょう。厳選する必要が出てきますからね。絶対お一人でお決めになりませんようお願いしますね。」
「......ま、まぁ、ユウ一人で十分回っているしね。負担掛け過ぎは気もするけど。」
「いえいえ、負担などと。私と致しましては、もう少し忙しいくらいが丁度良いですかね。」
こんなセリフが出てくるって、どれだけ仕事中毒なのよ...。
愚痴を聞いたことはないけど、一応私が雇い主になっている関係で私には言えないだけかもしれないしねぇ。
『細マッチョ』タイプにしたから、体力有り余っているのかしら?
「あ、そうでした。許可頂きたい案件があるのです。」
「なぁに?」
「裏に今は使っていない建物がありますよね?そちらを解体してもよろしいでしょうか?」
「ん~?物置になってるから、荷物を出してからなら問題ないけど...?」
「ありがとうございます。午後にでも確認して頂いてよろしいですか?」
「うん。おっけー。」
結構あからさまだったけれど、情報規制とか言われたら話題変更に協力しない訳にはいかない。
しかし、何が始まるんだろうね~?
しかも、一家に二台の『家政ロボット』って、人口より多くなるじゃないのかな??
今でも、一人目の『家政ロボット』と相性が悪かった場合、二人目三人目と次々派遣されるらしいし。
一度派遣された『ロボット』たちは、そのまま別の場所で働くらしいので、現状だってどっこいどっこいの比率な気がする。
あ、古い倉庫の解体は、荷物確認がすんなり終わったので許可しておきました。
ただし、怪我しないようにとは伝えておいたけど、廃材も使用許可取られるって、何するつもりなのだろう??
『ピン・ポン・パン・ポーーーーンッ!!』
二度目の爆音。
一度目の爆音から、きっちり三か月後。
時刻も同じ夕方で、またもや会社に出社している日だった。
「今度は、なんだろーねぇ?」
「おっ、またかっ?」
「元に戻ったりしねぇよな!?」
二度目の怪奇現象は、驚きもなく受け入れられていた。
馴染みのあるお知らせ音なのが良いのかもしれない。
突っ込みを入れる余裕すらあるし。
『創造主からのお知らせです。世界が三分割されてから、三か月が経過しました。順調に人類の生活圏の区分けが完了したことを、ここに報告します。そして、【国主】たちが所有する土地のいくつかを冒険区域に指定し、環境を整えました。今は亡き遺伝子。過去に絶滅した肉食獣たち。彼らを復活させましたので、【ステータス】の【冒険】から挑戦したい区域を選択し、彼らに挑んでください。取得した素材は買取も行いますので、臨時収入としてご期待ください。なお、詳しい説明は付随している説明文を熟読ください。『命を大切に!』をモットーにお楽しみください。』
これが、数日前にユウが言っていた『大変なこと』なのかな?
「あ”ぁ?なんだ??」
「うぉぉぉお!?ハンティングかっ!?ぃゃったぁ!!ハンティングきたーーーっ!!」
「ばっか!リアルで出来るわけねぇだろ!?死ぬぞ!」
この告知にも年代差で対応が変わるようだ。
上の年齢だった人はさっぱりのようだが、下の年齢だった人は直ぐに理解したのか、雄たけびを上げながら喜んでいる。
うん。勿論私も察せたよ?
あれでしょ?アクションゲーム。
普通の人が、リアルで出来るわけないじゃないっ!
職業軍人とかミリオタとか、そっち系の人大歓喜案件かしらねぇ?
「あぁ!!『家政ロボット』追加できるっ!!イケメン三人っ!!やったーーーっ!!」
やけに静かだと思ったら、深井さんは自分の【ステータス】を見て他の変更点に気付いたみたいだ。
そちらもユウが言っていたね。『家政ロボット』の追加。ただ、二人になると思ったら、プラス二人なんだね!?増え過ぎじゃないっ!?
っていうか、三ていう数字好きだね!?偶然かな??
「おい、ソレ、【冒険】に派遣出来るぞ?一組五人だと。」
みんな、ちゃんと説明文とやらを読んでいるのね。
って!?
普通に怪我するし、病気もあるらしいけど、これらはお金さえ払えば治癒が出来るのだとか。
ただし、死に至ったらそこまで。流石に蘇生は無理だよねっ!?
なお、『ロボット』たちはお金さえ払えば修復可能だし、人格のバックアップが取ってあるので、粉々に破壊されたとしても別の肉体への移行も可能だとか。
その場合、今まで取得してきた【スキル】関係はリセットされるけど。
なんだか、ますますゲームだねぇ。
...ん?ちょっ!?
一番最後の注意書きで、『増え過ぎた場合は、危険区域外に侵食しますので、ご注意ください。』ってあるのは、何っ!?
「......コレ、やばくねぇか?」
「やべぇな。」
「うへぇ。私のイケメン、派遣しなきゃ駄目?」
いやいやいやいや。
【創造主】は、なんでこんなシステムにしたのっ!?
コレ、いらなくない?平和に行こうよっ!!
人類、殺しに掛かってない!?