07 変わりるモノと変わらないモノ
『全世界変事』から一月が経とうとしている。
生活から紙の使用が極端に減り、自然環境保護活動も縮小を続けている中、新たな変事が起きつつある。いや、発覚しつつあるといった方が良いだろう。
それは、『動物の独自の進化』に関わることだ。
野生の動物立ちの狂暴化が目立ってきているとニュースで連日放送されている中、ペットたちにも異変が現れだしているようなのだ。
『飼い猫が家出して帰ってこない。』や『ハムスターに手の指を食べられかけた。』なんてのは可愛い方で、『いつものように飼い犬と遊んでいたら、腕を齧り切られた!』というのもあった。
病院に運ばれ一命を取り留めたものの、義手になるそうだ。
一方、うちのペットたちは以前にもまして私に懐いてくれている、と思いたい。
外猫のタケは、頻繁に敷地外への外出要請を出してくれたりするのだけど、野生動物が狂暴化する中を散歩させる訳にもいかず、今のところ却下している。
その代わり、今まで以上に撫で付けたり、玩具で遊ぶようになった。
自然と私も庭に出る機会が増えて、健康的な生活を送っている。
そして、兎たちまでもが徐々に懐き始めたのだ!
小さな小屋の中で二匹で生活している兎は、ご飯の時だけ顔を出して、他の時間は自由に過ごしていたのだけど、それに少し変化が表れてきた。
私が外で猫や犬と遊んでいると、顔を出すようになったし、触らせてくれるようにもなった。
これは嬉しい変化だったりする。
うんうん。うちの子たちは、みんな良い子だねっ。
ニュースにあるように怖い出来事など、前兆もないのだよっ!
「うっふふ~。」
上機嫌に外でペットたちと戯れていると、畑仕事を終わらせたであろうユウが沢山の野菜と共に帰宅した。
全身泥にまみれているが、その表情は晴れやかだ。
農作業が性に合っているのだろうか?
「紗夜様、ご機嫌ですね。良い事でもありましたか?」
「ぅん?いや、ニュースで狂暴化するペットに警鐘鳴らしている人が居たけど、うちは大丈夫だな~と思って。」
「ふふっ、それはそうでしょう。ご心配いりませんよ。」
「だよねっ!」
ユウのお墨付きも頂いて、更に上機嫌になる。
それに、外で動くようになったからか、【ステータス】値が上昇していたのだ!
ーーー 【ステータス】 ーーー
名前:矢野 紗夜
性別:女
年齢:十歳
種族:人間
体力:13
腕力:7
敏捷:5
知力:45
持久:10
耐久:80
魅力:18
所持金額:2,398,182円(別途貯蓄 15,358,451円)
所有物:土地・建物・家財・保険・家政ロボット・オークション装置
所有スキル
【運転/上級】・【ピアノ/初級】・【書道/初級】・【PC操作/上級】・【情報収集/上級】・【情報管理/中級】
テレポート先
【自宅】・【職場】
パッシブアビリティ
【天然ボケ】・【おっちょこちょい】・【統率者】・【大黒柱】
アクティブアビリティ
【何もない所で転ぶ】
称号
【情報を収集する者】・【統率する者】・【ユウのご主人様】・【縁の下の力持ち】
僅かな数値かもしれないけど、この短期間にこれだけ上がるのだから、きっと凄い事なのだと思いたい。
初期値が少なすぎるとかいう指摘は要らないです。
所持金が増えているのは給料の入金があったのに加え、ユウが農作物売買による売り上げを入金してくれたからだ。
生活費などの出費を差し引いてプラスが出ているのだと言うのだから、素晴らしい。
休憩はキチンと取って欲しいと伝えているので、大丈夫だと思う。
そして、正式に『家政ロボット』ユウを、うちの執事として迎えた。
一か月の使用期間が経過するということで判断を迫られたのだけど、『国からの派遣』から『矢野家の住人』へと身分が変更になった。
ーーー 【ステータス】 ーーー
名前:矢野 友蒼
愛称:ゆう
性別:男
年齢:二十歳
種族:家政執事
所持金額:4,392,938円
オークションチャージ金額:389,121(世界共通独自通貨)
体力:40
腕力:40
敏捷:35
知力:40
持久:40
耐久:35
魅力:35
所有スキル
【調理/上級】・【掃除/上級】・【洗濯/上級】・【整理整頓/上級】・【ペット管理/初級】・【畑管理/初級】・【農作業/中級】・【商才/中級】・【運動能力向上/上級】・【筋肉強化/上級】・【マッサージ/中級】・【早口】・【甘い微笑み】・【魅了/初級】
テレポート先
【自宅】・【矢野紗夜の居る場所】・【畑】
パッシブ
【細マッチョ】・【矢野紗夜のお世話】
称号
【矢野紗夜の忠実な僕】
行動範囲
【佐野紗夜が所有する土地・建物内(紗夜の私室を除く)】
なにやら色々変化があったようだけど、一番驚いたのは種族。
種族が変化するって、凄い事じゃないかな!?と思って本人に聞いたら、こういうモノらしい。
普通のことなのですか。そうですか。普通って何だろうね~??
「そういえば、また近場で事件があったみたいですから、お気を付けください。」
「また?最近多いねぇ。」
「はい、変化についていけない方々がストレスを溜めているのでしょうか。」
あー...、これだけ環境変化すれば、どこかで歪みが生まれるよね。
職を変えた人も結構な割り合いでいるみたいだけど、適正なしで希望職種に就けない人も居るみたいだし。
適正に関しては、経営者が【国主】の場合は絶望的らしい。仮に、人が経営者になっていたとしても早々空きが出来るわけもなく、難しい状況に追いやられた人も居るようだ。
更に、私の住んでいるような田舎のみならず、そこかしこで野生動物たちが狂暴化していて出歩くことすら難しくなっているらしい。
私はこの一か月、家と職場の行き来のみで、しかも【テレポート】を使っているので、家と職場の敷地外に出ることはなかったので、詳しいことは分からない。
ただ、不法侵入通知を何度も受け取ったことはあった。
その内の一件は弟夫婦だったので、制限解除しておいたのだけど。
ユウとも挨拶を済ませて、定期的にユウとやり取りしているっぽいことは聞いている。
私のところに来ないのは単純に用事がないからだ。
両親が居る頃も、野菜の受け取りに来るくらいで私と接点は殆どなかったので、そこは変わらず。
そして、聞いたところによると、弟は会社を辞めたらしい。
今は畑を分割して、空いているところでユウに手ほどきを受けながら農作業をしているのだとか。
弟夫婦の『家政ロボット』は、女性タイプで完全な家事専用で他の能力は有していないらしい。だから、家のことは任せられるものの、畑作業は手伝ってもらえないのだとか。
運動能力有している『家政ロボット』にした当時の私、グッジョブっ!