42 我が家の人間模様
懸念していたユウとシナの仲だけど、執事とメイドのプロ意識なのか、思ったほど酷い状態にはならなかった。
...たまに棘のありそうな会話して、カイを怯えさせているけれど、まぁ、楽しそうに会話を続けているので大丈夫なのだろう。たまには、刺激も必要だよね!?
シナに『毒舌』入ってるからね。自動でセットされちゃった属性だから、諦めてね?
「紗夜様。お願いがございます。」
いつも以上に畏まった感じで『お願い』してきたのは、カイだ。
相談事は大抵ユウにしているので、こういう事を言ってくるのは珍しい。
ただ、内容が内容だっただけに、ちょっと即答できないのだけど...。
「えっと、それ多分問題ないとは思うけど、カイだけになるよ?アパートって、ペット禁止にしちゃってるから、いくら併設された別施設とはいえ入れないと思うから。」
「はい、勿論です。少し私自身の基礎訓練を、もう一度見直したいと思っておりましたので。」
「そ、そうなんだ~。それ以上強くなるの??」
「はいっ!必要なことですから、頑張りますっ!!」
張り切っているところ申し訳ないのだけど、十分強いと思うのよねぇ。
【ステータス】値的に『家政ロボット』の三人を比べると、ユウは全体的に同じ数値だけどちょっと低め。
カイは、得意不得意が目に見えて分かるけど、三人の中では真ん中くらい。
そして、シナは全て同じ数値で断トツで高い。となっている。
全部が同じ数値って、初めて見たよっ!?
シナが来て、競争心でも芽生えたかな??
ティオが加わった時は、一緒に仲良く訓練しよう!的な雰囲気になっていたのだけど...。
カイがシナと一緒にいるところって、余り見ないのよねぇ...何故か指示されて、肉体労働を頑張っている光景は見るけど。
うん。カイって、なんていうか、頼みやすいのよね。体動かすの好きそうだし、頼んでも嫌がる雰囲気全くださないので。
これがユウだと、カイと一緒に働いている光景が見られるのだけどねぇ。
ペットたちでは、戦闘力があるのは断トツでティオ。経験も豊富らしくて、誰も勝てないらしい。
ただ、逃げるだけならタケ(猫)が断トツ。ついで、リン(兎)。
最初は、リンとフウが似たり寄ったりな【ステータス】値だったのだけど、いつの間にかリンの数値が飛び抜けていた...好戦的だからねっ!
タケとリンで翻弄すると、ティオでも捕まえることは難しいらしい。凄いねっ!熊に負けない猫と兎って!!
数値的にはガリィ(子山羊)も良い線言っているのだけど、如何せん経験が少ないので数値的には完全に劣っているココでも善戦するとか。
えっと、フウ(兎)に関しては、怖がりな上に争いを好まない性格らしく、これ以上の向上は難しいらしいよ。
うんうん。そのままでいいよ?可愛くてか弱い兎のままで居てね?
仕事で遠出していて不在の椿さんへ、カイの要望を伝えたところ、色好いお返事を頂きました。
ただ使わせて頂くだけでは心苦しいので、週に数回程度不定期で、訓練場及び訓練室のお掃除をカイが行うということで話が付きました。
基本、使ったら掃除しましょう!というコンセプトにはなっているのだけど、どうしても偏りが出るし、全体的な掃除は椿さんがやっていたからね。
シナは厨房メインで、今ではアパート内全体の掃除もやるようになったのだとか。不在がちな椿さんが、凄く喜んでましたよ。
余力が出来た分、椿さんが力を入れたのは、なんとっ!!住人の戦闘訓練でした...。
敷地内の音が外に漏れないようにシャットアウトしているのだけど、椿さんが休みの日とかにアパートの敷地内に入ると、とっても勇ましい声が響き渡っておりました。
あの、ちょっと遠慮がちに喋る椿さんが、ですよっ!?
どこの軍事教官ですかっ!?と聞きたくなるくらい威厳たっぷりな大声で、住人を鍛えておりました...意外という程の一面でもないのだけど、ちょっとびっくり。仕事中は、ピリッとした雰囲気纏っていることが多いからね。
ユウは別としても、多くの『家政ロボット』って、好戦的なところあるよねぇ~...。
「えっ!?うちの子たち、滅茶苦茶、戦闘狂だよ!?今も危ないの分かってるだろうに【冒険】行きたがるしっ!!」
とは、深井さんの弁。
外見重視で設定した深井さんの『家政ロボット』ですら、戦闘狂でしたか...。
他の社員たちに聞いてみても、何処も似たり寄ったり。
中には、好きに【冒険】に参加させている人もいましたよ。
最初の『特級エリア氾濫事件』が起きて以来、上級エリアは『氾濫中』の注意書きが常態化する程の危険エリアになってしまったのにね。
それでも、参加する人は後を絶たず、日々怪我人が続出しているらしい。
各国の打撃を受けた軍隊も、一か月もすればロボットたちの修理が終わり訓練に参加しだしたので、上級エリアへの突入を繰り返して『訓練』を行っているらしいし。
そんな世界中の動きを受けて、日本も自衛隊を【冒険】で訓練してるしね。
人同士での争いが無くなるのは、別の脅威が現れた時だけなのかねぇ。な~んて、感慨に耽ったり。
まぁ、その脅威が、とてつもない脅威なので何とも言えないけどねっ!?
ただ、兵器開発はどこも縮小傾向にあるらしいことは、ニュースでやってたかな~?肉体強化の方が先らしいよ!?
そして、私がやったみたいに、強い獣のペット化が流行っているのだとか。
成功率は少ないらしいけどねぇ?
特級エリアには、はるか昔に絶滅した恐竜とかいるらしいし、一部の人にとってはロマン溢れる場所みたいよ!?
残念ながら、私には分からないけどね!
そうだ!
気になってので調べてみたのだけど、シナみたいに設定直後の【ステータス】値が高い子っていうのは、たまに居るらしい。
基本は、設定した年齢によって上下するけど、普通の人とあまり大差ないくらいの数値らしいのだけどね。
それを受けた軍人やら戦闘狂やらの人達は、リトライ祭りが発生。
ただ、作ってみないと【ステータス】値が見られないので、あまり成果は得られていないようだ。
特に、国に所属している軍人さんたちは、理由のない『家政ロボット』の解雇は禁止されているらしく、慎重に慎重を期して作成したり、しなかったり。
つい先日、条件有りで五人の『家政ロボット』が持てるようになったのだけど、許可されている人の中でも五人持っている人は極僅かという状態。
その条件が不明なので、一部では『都市伝説』としてなかったことにされてるみたいだけどねっ!
「五人いれば、戦隊モノが作れるよなっ!」
「はぁ!?何言ってるのっ!!そこは、バンド組むべきでしょ!?家で生バンド演奏とか、憧れるぅ!!」
「五人でチーム組める競技って、何かあったか??」
「おい、数人でチーム組んで対抗戦やるかっ!?」
うちの会社は、実に平和でした。
元からいる社員たちは仲良いからねぇ。
休憩時間で休憩室での会話だから、帰ってきてる人は殆どいるのよね。数人、外で休憩している人も居るけど。
『職人ロボット』の人達は加われないので仕方ないけど、最近入社した人たちの殆どは、ちょっと距離を置いて眺めてる感じかな?中には果敢にも加わっていってる人もいるけど、そういう人は元々目に見えて仲が悪そうではなかった人たちだ。
「あ、アイドルグループ...。」
うん?何やら聞こえた気がしたけど、なんだろうね?誰も反応してないし、気のせいだねっ!!
なんて恐ろしい空耳が聞こえるのだ...。
あっ、私も何故か『家政ロボット』五人所持が許可されてましたよ?なんでだろうね??
やっと三人目を迎えたところなのにっ!!
当分、作る予定何てないよっ!?
家周辺の人口比率が、かなり極端になってきてるんだからっ!!
人間なんて、私一人よっ!?
ペットは、九匹か~。増えたねぇ~。
ロボットは、家に三人とアパートに十二人なので、計十五人。圧倒的ですよ...。
あっ、弟が離婚したらしくて畑に作った作業小屋で暮らしているので、人間が二人になったんだよねっ!そして、三人の『家政ロボット』を雇ったらしいので...あぁ、より比率が偏ったぁ~っ!!
人対ロボットの比率は、どこのご家庭も似たり寄ったりじゃないかなぁ??
ペットは手放す人も増えているらしいので、私のパターンは珍しいらしいけど。
そういえば、うちの会社のご夫婦さん方は、離婚したとか聞かないねぇ。夫婦円満で羨ましいことで。
五月連休が、今年はカレンダーに恵まれ五連休となりました!
それを目前に、早くもお休み気分が蔓延しているようです。
「矢野さんは、連休中、またどこか旅行行くの??」
「おっ、矢野さんは、どっか行ったのか!?」
「年末年始の休みに、温泉行ってきましたっ!」
「うぁ、羨ましいっ!!」
「何処?営業続けてる旅館とか少なくて、何処も予約とれないんだよぉ!!」
深井さんが話を振ったら、一斉に温泉談議に移行。
みんな、娯楽に飢えてるのねぇ。
「矢野さんとこの、例のイケメンがセッティングしたらしいよ!?『出来る男』って感じの雰囲気出してたものねーっ!!」
「あはは。うん。なので、何処行ってきたのか、分からないんだよね~。」
「マジかよっ!?」
「えっ!?『家政ロボット』って、そんなことまで出来るのかよっ!?頼んでみるか...。」
運転手のみなさんは、仕事で日本中移動しているから、余計に観光地激減を実感しているのだろう。
事実、経営者が違う世代で後継者もおらず、閉鎖した旅館やホテルは結構な数に上るらしい。
他にも、経営者は居るのだけど従業員が急激に減ってしまって、経営難を起こして閉鎖なんてところも。
今残っているところは、本当に恵まれた環境にあったところのみなのだ。だからと言ってサービスが充実しているかと言うと微妙なところで。
元々人気のない宿泊施設だったりすると、口コミが広がり、やっぱり寂れる運命に...。
だから、優良な宿泊施設はとっても少なく、人気で予約も満足に取れないのだとか。
娯楽が減ったというか、観光地が減ってしまったというか、少々出掛けにくい環境になったというか...。