03 自宅の変容1
制限速度に従って走る車に乗って三十分が経過した頃、自宅へと車が入っていく。
いつも駐車しているスペースに止まった車から降りようとすると、自動でドアが開いた。
「お帰りなさいませ。」
驚いて視線を向けると、先程自分で指定した通りの【家政ロボット】と思われる人物が車のドアを開けてお出迎えをしてくれた。
何故判別できたかなんて言うまでもない。
自分で【猫耳装着】を指定したのだからっ!!
「た、ただいま帰りました。」
自分で選択しておいてなんだけど、この家に執事服は合わないっ!
その前に、そのイケメンの風貌もちょっとどころでない違和感がっ!!
少し前の自分をやり直したい。せめて遠慮なく直視できる顔にしておけば良かった。
ただ、女性バージョンにするという選択肢はなかったのだ。
平均ステータス値は分からないものの、自分の【体力】・【腕力】・【俊敏】・【持久】とかそこら辺全ての値が低かったので!!
せめて肉体的優位が決定している男性バージョンでないと不便が生じる可能性があったのだ。良い訳じゃないよ!?
「お荷物をお持ちいたします。」
「あ、お願いします。」
「これらの対応は全てデフォルト設定となっております。後程、お嬢様に合いました設定に変更をお願い致します。」
「あ、はい。」
一瞬で冷静に戻れた。そうだよね。この人、ロボットって言ってたじゃないっ!?
しかし、デフォルトでこの対応ですか。丁寧なのは良いけど、庶民には慣れない対応です。ごめんなさい。
玄関に入る前にいつもご挨拶する犬のルルが、お行儀良く小屋の前でお座りしている。
いつもは立ち上がって相手して欲しそうに尻尾フリフリさせて期待の眼差しを向けているのに、今日はどうしたのだろう?家政ロボットに向けて吠えないのは良い子なのだけど。
「ルル、ただいま~。おー、よしよし。」
近づいても嫌がらないので、そのままいつものように鼻筋をナデナデしてから玄関に入る。
もう一匹の犬ココは裏口の方にいるので姿は見えない。
ただ、いつもはワンワン吠えて煩いくらい騒ぐのにそれがない。どうしたのだろう?とは思うが、それは後で良いだろう。
後ろに家政ロボットを従えたまま手を洗って自室前まで行き、荷物を返して貰ってから入室する。
家政ロボットは、そのまま部屋の前で待機して貰う。
「アルト、帰ったよ~。」
これもいつもの習慣で、室内飼いの猫アルトに帰宅のご挨拶。
荷物を所定の位置に...位置には身長が足りなくて届かなかったので、そこら辺に置いてからアルトをゲージの中から出してあげる。
「にゃぁ~。すりすり~。」
「ん~っ、良い子だね~。」
くしゃくしゃ~っと少々乱暴に名で回して、その毛を堪能する。
すると、驚いたことに半透明の所見のウィンドウが表示された。
ーーー 【ステータス】 ーーー
名前:矢野 アルベルト(やの あるべると)
性別:男
年齢:二歳
体力:10
腕力:18
敏捷:15
知力:26
持久:10
耐久:20
魅力:20
所有スキル
【噛みつき/中級】・【引っ掻き/初級】・【へそ天】
パッシブ
【運動音痴】
称号
【矢野紗夜のペット】・【矢野紗夜家の住人】
行動範囲
【紗夜の室内】⇒【自宅建物内】に変更して宜しいですか? Yes/No
ーーーーーーーーーーーーーーーー
愛称アルトの名で呼んでいる猫のアルベルトのステータスが表示されたのだ。
最後に質問があったので、Yesを選択しておく。
すぐさま自分の【ステータス】を表示して【質疑応答】を開き、質問。
Q.ペットのステータスが見れたけど良いの?⇒A.自ら開示した場合のみ、他人にも見ることが出来ます。
あぁ、色々抜け道があるのね。了解だよ。
ペットも【ステータス】表示が可能で、閲覧の知能も意思もあるってことね?
これが、自称【創造主】が言っていた『動物の独自の進化』なのかな??
はぁ。
これから、まだまだ驚愕の事実とか待っているんだろうな~...。
「お嬢様。アルベルト様が自室よりお出でになりましたが、よろしいのですか?」
「あ、うん。大丈夫。それより設定だよね?どうやって設定するの?」
「こちらになります。」
開け放ってあるドアの前で待機していた家政ロボット。
彼の設定もしておかなければならないのだった。
この調子で、きっと他のペットたちにもあるのだろう。この作業で今日が終わりそうだよ...。
【実行可能項目】
⇒朝食の用意 No 温かい珈琲の用意をお願いします。
⇒昼食(お弁当)の用意 Yes
⇒夕食の用意 Yes
⇒室内の掃除 Yes キッチン・お風呂・トイレ・廊下・玄関のみで。
⇒庭の掃除 Yes
⇒ペットの散歩 Yes 散歩不要。犬は敷地内を自由に走らせるだけ。外猫は敷地内を基本自由にさせるが、建物内は駄目。
⇒ペットのご飯 Yes 犬・兎・外猫をお願いします。
⇒買い物 No 必要な時に別途頼みます。
⇒お見送り No
⇒お出迎え No
⇒言葉遣いは執事風? No 丁寧語で。
⇒服装は執事風? No(カタログより選択)
⇒お湯の用意 No 入りたいときは別途お願いします。
⇒一緒の入浴 No
⇒添い寝 No お父さんのベットで寝てください。
⇒畑の管理 Yes とりあえず、今ある作物をお願いします。
⇒ (etc)...
あり過ぎじゃないっ!?
確かに、完全に見知らぬ人と一緒に同居するわけだから必要なことだろうけどね!?疲れたよ...。
それと、服装の選択肢もありすぎですっ!!どれだけ凝ってるのよ!?
無難に合いそうなラフな感じの服をいくつか選択しておいて、日ごとに変更して貰うようにしましたよ。
ブラックアウトしていた服装は別途購入が必要みたいで、ホントに課金ゲームをやっているような感覚に陥らせる作りだったと思う!
凝る人は凝るんだろうね~...。
あと、私の選択肢によってアビリティが増えたのかしら?
(New)とついているのは明らかにそうっぽいのだけど。
「それにしても、その顔で魅力20なんだねぇ~。」
このイケメンで、この数値っていうのにびっくりですよ?
平均より低いってことでしょう??
「はい。『細マッチョの執事』を希望されていましたので、魅力以外の数値が高めに設定されております。魅力値は平均値となっています。」
あら、違った。他が高かったのねぇ。
......ん!?
待って?私の【ステータス】って!?
【知力】と【耐久】以外、平均以下ですかっ!?
いや、運動苦手で動いていなかったので、自覚はあったけどねっ!?
「あと、名前を付けて頂きたいです。」
あ、名前って私が付けるのね?
ネーミングセンスないんだけど、何が言いのかな??
「うー...選択肢とかないの?」
「選択肢、ですか?」
「うん。こんな感じが良いな~とか希望みたいなものとか。」
「では、いくつか質問しますね。お好きなものは何ですか?」
「猫」
「お好きな色は?」
「青」
「お好きな食べ物は?」
「パスタ」
「お好きな飲み物は?」
「紅茶と珈琲」
「お好きな音楽は?」
「明るい曲」
「お好きな格闘技は?」
「...ん?運動苦手なので。」
「お好きな武器種は?」
「えっ、武器って何!?」
「こちらの名前が候補です。選んでください。」
「えっ?あ、えーっと、えーっと...コレで!」
「ありがとうごあいます。これより【矢野 友葵】と名乗ります。」
「うん。これから、よろしくね~。」
ーーー 【ステータス】 ーーー
名前:矢野 友蒼
性別:男
年齢:二十歳
体力:30
腕力:30
敏捷:30
知力:30
持久:30
耐久:30
魅力:20
所有スキル
【調理/上級】・【掃除/中級】・【洗濯/中級】・【整理整頓/上級】・【ペット管理/初級】・【畑管理/初級】・【商才/初級】・【運動能力向上/上級】・【筋肉強化/上級】
パッシブ
【細マッチョ】・【矢野紗夜のお世話】
称号
【矢野紗夜の家政ロボット】・【矢野紗夜を保護する者】
行動範囲
【佐野紗夜が所有する土地・建物内】