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18 幸運とは??

 宝箱。

 下の入れ物部分が長方形の形をしており、上の開閉部分は半円に盛り上がっている。

 所々に金色の装飾が入れられ、豪華そうに飾り立てられた木箱。

 そういった代物が、今まさに、目の前に鎮座している。

 現実では、早々お目に掛かれない代物である。


 これ、放置した方が良いんじゃないかな~?などと、関わり合いになるのに消極的な思考を巡らせていると、リンが小さな前足でカチャカチャ音を鳴らしつつ遊んでいるな~などと思っていたら、ぱかり。と威勢良く目の前に鎮座していた宝箱が開いた。

 その直後に流れる陽気なファンファーレと、空中に投影させる映像の類であろう半透明のくす玉に紙吹雪。

 世間一般でお馴染みの演出だねっ!


 なんだか見てはいけないものを見てしまった後の様な、後味の悪さを味わいつつ目を背ける。

 しかし、逃げられない現実と言うものはある訳で。

 視界の端には、怒涛のように流れだすログの嵐。

 先程までの比ではないくらいに、レアと激レアの文字が躍っていた。


「紗夜様と同行すると、レア率が非常に高いですねっ!」


 珍しく大興奮状態のユウが、私のせいにする。

 確かに変なところで引きが良いことはあるけどね?きっと運が良くて喜ぶべき場面なんだろうけどね?納得いかないっ!!

 もし、私の運がここで適用されているなら、私はもっと別の場所でこの運を使いたかったよ?

 世界が三分割されて、ユウが家にやってきてから、妙に満たされた生活を送れてはいるけれどさっ!?

 それって、ユウが凄いのであって、私何もしてないものねっ?

 ボーナスエリアも宝箱も、たまたま私が同行していただけで、他の誰かの運かもしれないじゃない?

 もしかしたら、確率の問題とかっっっ!!


「はぁ~。ところで、最後に出た、この『中級優待券』って何だろうね?」

「なんでしょうね?自動的に買い戻しになっていますし、金銭は掛かっていないみたいですね。」


 きっちり五枚出ているところを見ると、参加者一人に一枚のようだ。よくよく調べてみると、全てにそれぞれの名前が記載されていたので所有権がハッキリしている品物のようだ。

 譲渡不可とまで注意書きがされている。

 本当に、何に使うんだ??

 まぁ、システム上の代物で、紙で配布されたりするようなものではないらしいので、放置で良いだろう。


「湖畔、何処行ったのかな~。」

「はははっ。そろそろ向かいますか。何処かにキャンプ地への出口があるでしょうから。」

「そうだねぇ。」


 気持ち的には既に疲れてきているのだけど、本来の目的地である湖畔にはまだ着いていない訳で。

 中級エリアからはキャンプ地の選択ができないので、ランダムで送られるから何処に出るか分からない。

 それでも、湖畔エリアというくらいだから、湖の近くにキャンプ地を構えているのだと思う。事前に調べた情報でも、近くに湖がなかったという話しはなかったので。

 だから、この砂漠地帯は本当にイレギュラーなのだろう。きっと、そうに違いない。


「あぁ、あそこですね。」


 ユウが指し示す方向には、両開きの大きな扉がぽつんと、砂漠の砂地の上に立っていた。

 壁なんてものは、どこにもないよ?

 本当に、ただただそこに扉が立っているだけだよ?

 不思議現象もここまでくると、疲れすぎて突っ込みする気力すらなくなるよね~。


 その一枚だけの扉を開けると、そこはキャンプ地だった。

 『トンネルを抜けると、そこは雪国だった。』とか、そんな情緒のある景色では、決してない。


 何処にも砂などなく、茶色い地面が踏みしめられ固められた地面。

 適度に緑溢れる自然豊かな風景。

 ログハウスの様な丸太を使った小屋では常駐の専門員が暇そうに寛いでいる。

 時間がお昼の十二時を過ぎた頃だからだろうか、人気は皆無。

 本当に、今【冒険】ブームで混雑しているのかと疑いたくなる光景だ。


「これはあまり良くない傾向ですね。少し常駐員と話をしてから出掛けることにしましょう。」


 人気がなくて良いとか思っている私の思考を真っ向から否定したユウは、暇そうにカウンターにうつ伏せになっている常駐員を叩き起こして、何やら話をしていた。

 うん。私には何を言っているのか、むしろ何の言語を話しているのかさえ分からなかったけれどね!?

 大分話し込んでいるようだったけれど、その間、私はユウの腕の中だし、三匹は近くで寛いでいたのだった。


「どうだった?」


 小屋を出てから、直ぐにユウに問いかける。


「どうやら興奮状態のオオカミが出たようでして。群れではなく一匹だけなので、それ程危険度は上がっていませんが、すばしっこい上にオオカミの方も逃げているようなので捉えられないようです。」

「ん~...相手が逃げてるなら、危なくないんじゃない??」

「えぇ、固まって動けば問題ないでしょう。リンは抱えて行った方が良いですね。」

「あっ、そっか!兎だものね。私が抱っこしていこう!!」

「きゅぅ!!」


 初めて抱くリンの毛皮は、暖かくふっわふわで、その柔らかさも相まって何とも言えない癒しの力を発揮してくれた。

 そして、犬たち二匹も見える範囲の近場に居るようにして貰っての出発となった。


 その後は、本当に簡単に湖に到着してしまったので、付近を探索。

 それ程時間を掛けずに探索を終えて、撤退したのだった。


 私が気力的に疲れていたのもあるし、やっぱり狂暴化しているというオオカミが気になってゆったりできなかったというのもある。

 今回は、魚も肉も取得物になかったのは、オオカミとそれを追う常駐員の気配に逃げ出したか隠れてしまったかのどちらかだったのだろう。

 得たものは、香草類やキノコ類などの植物系のみとなった。

 とはいえ、その前の取得物で十分な気はするのだけど、それでも採らずにはいられないようですよ?うちのペットたちは。


 しかし、野生動物との接触やら、危険度やらが増してきているなぁ。

 今までは、ニュースやラジオで聞くくらいで、こんな身近に感じたことなかったけどね。

 分かったことは、中級エリア以上でのピクニックは断念した方が良いということだった。

 初級エリアとは全く違う場所でした。流石、初心者用のお試しエリアだ。








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