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17 中級に挑戦

 カラス対策の有効だが打てないまま、真冬へと突入した。

 畑の方は諦めて一時中断している。

 自宅敷地内の方へは、温室でも作ろうかと言う話しが出ているのだけど、今は企画段階だ。


「雪だねぇ。」

「えぇ、雪ですね。」


 ここら辺で年内に雪が降るとか、珍しいこともあるものだ。

 薄っすらと白くなっているだけで、積もっているわけではないが、それでも冬だなぁと感じる。


「ヒーターって、偉大だよねっ!」


 温風で温められた室内から、直ぐに溶けてしまいそうな雪を眺める。

 コタツは作らないことにしたのだ。動きたくなくなるので。

 その代わり、温風ヒーターで室内全体を暖かくして、更に石油ストーブの上で干し芋とか焼いていたりする。懐かしいよね。こういうのって。


 世間では【冒険】ブームが加速している。

 どうやら上級エリアで、とんでもなく高価な品物が出たらしく、こぞって【ステータス】値上げに励んでいるようだ。

 なので、今は初級エリアでさえ込んでいるという状況。

 私たち矢野家では、【冒険】への参加を見合わせている。


「そろそろ中級エリアへ行っても問題ないくらいの実力が付いて来たのですよ。みな張り切って鍛錬を積んでおりまして、メキメキ実力が上がってきております。」

「そうなんだ。凄いね~。私も体鍛えるかなぁ~...。」

「えっ、紗夜様が、ですか?」

「ぅん?肉体的には育ちざかりだもの、鍛えれば直ぐ反映されると思わない?外に出ることも増えて、前より体力も大分付いて来たしね。」


 勿論、ユウとかにしてみれば『何言ってるの!?』状態だろうけど、私からしてみたら前より動いているので、体力付いてきてると思うのよね。

 太ももの贅肉なんて分からないくらいよ?凄いと思わない!?一体、いつからぷくぷく増えたのかねぇ??この状態を維持したいところだ。


「ナイフとか握って戦うことは出来ないけど、遠くからぷちぷちと......石でも投げる?銃は撃てるのかな??」

「投げるのでしたら、石ではなくナイフの方が良いかと。銃は、より体を鍛えませんと反動が辛いですね。やってみますか?」

「うん。目標としては良いかもね~。」

「それでは、無理のないような練習メニューを考えますので、少しお時間ください。」

「...ん?そうなの?」

「えぇ、頑張りましょうね。」

「う、うん。そうねぇ~。」


 私としてはもう少しのんびりゆったりとやるつもりだったのだけど、そうもいっていられなくなった感じ?

 まぁ、一人でやっても続かないだろうから良いのだけどねぇ。


「それは後程。その前に中級エリアのことなのですが、行ってみませんか?」

「へっ??今って、込んでいるでしょう??」

「不人気なところはありますよ。海外になりますが、このあたりですね。」


 準備が良いようで、参加者が少ない場所の一覧を用意していたようだ。

 聞いたことないような国名も交じっているが、どういった場所なのかとか補足が全てに対して入っているので分かり易い一覧だ。


「あれ?火山とか人気あるの?ここには入ってないけど。」

「採取物が良いですからね。それに、ご主人様自らが行くことは滅多にないので、選択肢としてはありなのでしょう。」

「あぁ、そっか。そういう理由ね。この孤島とか、不人気なの?湖畔とかも入ってるけど。」

「えぇ、観光に行くわけではないですからね。取得物の価値的に低めなのですよ。決して悪くはないと思うのですが、そこを選ぶなら別の場所の方が稼ぎがありますので。」


 世知辛いなぁ~。分からないでもないけどね。

 孤島と言うとちょっと危険な匂いがするので、今回は湖畔にすることにした。他にも興味を惹かれたところはあるものの、季節的にほんのり暖かい地域を選びたかったので。

 そんなこんなで、中級エリアの湖畔に行くことが決定した。最初の断固とした意志は何処へ行った!?


「ねぇ?湖畔っていうくらいだから、湖があるべきよね?」

「えぇ、そうですね。」

「ないよ?」

「ないですね。」


 今回のメンバーは、リーダーが私。ユウ(家政執事)、ルル(犬)、ココ(犬)、リン(兎)の構成だ。

 戦闘になる可能性が高いので、犬多めで。

 家の留守番は、タケとメルに任せてきた。フウは、ちょっと気が弱い所があるので隠れてくれれば良いかな~。


 そして、勇んで来たのは湖畔のはずが、砂漠?

 カラッカラの空気に、黄金色の砂地から照り返る陽射しは、遮るものがないので上から下から突き刺すように痛い。

 こんなこと前もやったなぁと思いながら、【冒険】で選んだ行き先を確認するも、やはり湖畔で間違いない。


「元は湖畔だったけど、温暖化か何かで砂漠化したとか??」

「えぇーと、それはどうでしょう?流石に、その時点で名称が変更になっているはずです。」


 動物たちは探索に余念がないようで、既に取得物のログが流れて行っている。

 それらを見るに、決して湖畔で手に入るような品物ではなく、間違いなく砂漠にいるようだと実感する。


「砂地ですと、より危険度が増しますので、抱き上げたまま移動しますね。」

「はーい。」


 基本【冒険】に出ている時は問答無用で抱き上げられている気もするが、降りたいと主張すれば降ろして貰えていたのかと納得する。

 そして、今回は駄目ということなのだろう。


 うろうろと当てもなく歩き回ったとしても、マップシステムが機能しているので迷子になることはない。

 しかし、行けども行けども砂一色。たまに岩場とかサボテンと思しき何かとかを見掛けるくらいだ。

 ログにはトカゲっぽい何かとかの取得物が流れているが、私がその姿を見ることはない。


「ふむ...どうやら今回もボーナスエリアのようですね。」

「そうなの?滅多に行けないところじゃなかった?」

「取得物に激レアの明記が多すぎます。」


 言われてみればそのような気もするけど、前と変わらない気もするので分からない。

 前もボーナスエリアだったことを考えれば、同じだとも考えられるが、ノーマルな普通のエリアって最初の一回だけなので、私には比較のしようがないのだ。


「採れるだけ採っていきましょう。今回も限界まで買い戻しをしましょう!」


 相当良いものが出ているのか、心なしかユウが楽しそうだ。

 初級エリアの激レアが、上級エリアで普通に採取できるものであれば、中級エリアの激レアって、特級エリアの採取物なのかしら?そう単純じゃないかもしれないけど。

 取得物のログは自宅に戻っても残るので、あとで調べてみるのも良いかもしれない。

 今回の買い戻しも、うっきうきな雰囲気のユウに全て任せてしまう。


「ん?あれ、何かな??」

「どれですか?...あぁ、何かありますね。お待ちください。」


 代り映えのしない砂地のみの光景を見渡していると、ちょっと違和感のある砂地を見つけたのだ。

 いや、砂地であることには変わりないのだけどね?なんか、ちょっと気になったのよ。

 同じ違和感に気付いたのか、ユウが目的の場所へと近付いてくれる。


「何か、ある、ようですね?」


 どこから取り出したのか、長い棒のようなものを片手に、目的の場所をつんつん突いている。

 確かに間違った対応ではないだろうけど、何か、他になかったのかなぁ??


 つん、つん。 うろうろ。 うろうろ。


 ユウが棒で突いて、ルルとココが周りを走る。

 傍から見たら、何か怪しい儀式の様じゃない!?

 あれ?リンは何処行った??マップによると近くに居るようだけど。


「きゅきゅっ!!」


 何処から姿を現したのか、ぴよぉ~~んっ!と鋭いジャンプをしたかと思うと、直滑降で例の目的地へと着地する。


「えぇ!?リン、大丈夫っ!?」

「きゅぅ!!」


 もやもやっとした陽炎の様な場所へ着地したリンは誇らしげに鳴く。

 すると不思議なことに、そのもやもやが消えて、如何にも宝箱ですっ!といった形の箱が出てきた。

 ゲームなどでお馴染みのアレである。


「えぇ~...。」

「おぉー!」

「きゅっきゅぅ~っ!!」


 私だけテンションの違う反応なのは、仕方ないものだと思っていただきたい。

 だって、宝箱の形状した何かだよっ!?ゲーム内ではお馴染みであろうとも、リアルで出されたら胡散臭い事この上ないじゃないっ!!








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