表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/75

14 次の冒険

 初めての【冒険】から一か月ほど経った休日の午前中。

 朝からユウが、沢山の種類のサンドイッチを準備していた。卵・ハムチーズ・トマトレタスなどの普通なものから、みかんクリーム・桃クリームなどのデザート系まで。すべてがミニチュアサイズで、ユウなどの大人の口で一口サイズ。私からすると二口から三口かな?とにかく、ちまちましたサンドが彩り豊かにぎっしり詰まった淡い色のお弁当箱。

 このお弁当箱は見たことないので、恐らくユウが用意したものだろう。女子力が高いようで、何よりだ。

 飲み物も用意したみたいなので、完全に理想のピクニックと言えよう。凄いなぁ。


 さて。

 二回目の【冒険】はっ!


 【日本 初級/森林 エリア13 南キャンプ 時刻:10時】


 リーダー:私。メンバー:ユウ(家政執事)、タケ(猫)、ルル(犬)、フウ(兎)のメンバーで出発する。


 犬兎は、前回行けなかった子たちと交代。

 猫のアルトは、完全室内飼いな子なので却下。参加させません。

 例え室内専用のエリアとかあったとしても、参加させない予定。運動神経ないので、危ないからねっ!

 前回連れ帰った山羊のメルは、妊娠中と言うこともあり安静にして貰う為に、不参加。


 今回は日中の出発なので他の人に会わないか心配だけど、人気の少ない所に行く予定なので、多分大丈夫。そもそも、初級エリアは人少ないらしいからねっ!

 秋も深まって更に寒くなってきているので、陽が差していても風が冷たいので結構な厚着で行く。着膨れする程ではないけどね?


「では、いっくよーっ!」

「わんっ!」

「にゃっ!」

「きゅぅ。」


 掛け声とともに【冒険に出発】を押下するが、同時にユウの腕に抱えあげられるのはデフォルトなのかしら?

 そして、視界が切り替わる。


「うっわぁ~。」


 今回も少しでも暖かい所だと良いなという思いで南キャンプを選択したのだけど、まさか切り立った山の上に出るとは思わなかったよ...。

 これ、森林じゃなくて山なんじゃない!?

 選択を間違えたのかと思って【冒険】欄をじっくりくまなく見るが、決して間違っているわけではないらしい。


「綺麗なところだし、それ程寒くもないけど、凄いところにでたねぇ~。」

「えぇ、凄いところを引き当てましたね。」


 マップを見ると、既にうちの子たちは周囲の探索に向かったらしい。

 ユウに抱えながら背後を見ると、前回よりはよっぽど草原というに相応しい背丈の草花が生えており、標高の高さを感じさせない雰囲気だが、崖から眺める風景は、下に雲が見えるほどだ。


「人も居なそうだし、ここで少しゆっくりして行く?」


 ここは少し広い頂上になっているだけで、下へ降りて行けるなだらかな坂道を発見できた。

 細い坂道なので人とすれ違うには大変そうだけど、遠くまで見渡せる坂道には今のところ誰の姿も見えない。


「そうですね。少し散策してからの休憩を予定していましたが、こちらでゆっくりして行くのも良いかもしれません。今シートを敷きますね。」


 そういうと持ってきていたレジャーシートを中央辺りに敷き、荷物を重し代わりに置く。

 準備良いな~と思いながらも、早速お邪魔する。

 

「こういうところでゆっくりするのも、良いねぇ~。」


 ごろんっとレジャーシートの上で横になると、少し背丈のある草花と秋が深まった季節のちょっと色の薄い水色の空が視界を埋める。

 雲の上に来ているので、視界に映る雲は一つもない。


 視界の端では今も引き続きログが流れているが、三匹は相当頑張っているらしいのが分かる。そんなに頑張らなくても良いのになぁ~と思うが、楽しみ方は色々あるので良いのだろう。

 しかし、前回よりログの流れが速い。

 内容も知らない名前ばかりなのだけど、そのいくつかに後ろに『(レア)』や『(激レア)』という表示が注意書きが付いていたりしている。一体何を拾っているのか。

 どっちにしても、買戻し手続きをしないと私の手元には来ないので関係ないのだけどねぇ。


「紗夜様、失礼しますね。枕が必要ですから。」


 確かに枕は合った方が良い。ただ、絶対必要と言うものでもないと思うのだ。

 それが、ユウの足だとしたら尚更必要とは言えない。

 なのに、なんの断りもなく、いや、断りはあったけど許可した覚えはないのに、私の体はユウの足の間に挟み込まれ、下に敷かれたクッション性のある布の上に体を横たえられ、頭はユウの太ももという訳の分からない状況に置かれた。

 抗議のために体を起こそうとすると、上から両手で押されられる。


「ここは危険地帯に指定されている場所ですからね。そう無防備になりますと、要らぬ危険を呼びますよ。」

「だったら、起きるよ?手を退けて?」

「いえ、大丈夫ですよ。ルルたちも危険を知らせていませんし、紗夜様は起きていても寝ていても変わらないでしょう?」


 確かに、戦闘力は皆無だけども!?

 咄嗟に逃げることくらい、出来るかもしれないじゃないっ!?


 どんなに抗議しても起き上がらせて貰えなくて、仕方ないのでこの状況を楽しむことにした。

 どうやらユウの心理的な問題のようで、自分の手元に居れば安心できるらしいのだ。


 つい、ウトウトしてしまったけれど、一時間過ぎたくらいだろうか?引っ切り無しに流れていたログが止まっていた。


「ぅん?」

「どうしましたか?」

「採取しつくしたのかな??ログが止まってる...。」

「...どうやら、そのようですね。」


 何処か遠くを眺める仕草をしたかと思うと、私の意見に同意したユウ。

 少しすると三匹が揃って帰ってきて、くつろぎ始めた。

 ぱっと見、汚れている様子もない。何処で何をしてきたのかは、さっぱりだ。


「採りつくすって凄いねぇ。みんな頑張ったんだね!」


 起き上がって一匹ずつ頭を撫でて褒める。

 みんな誇らしげだ。

 うん。誇らしいだろうとも。寝転がって何もしていない人がここに居るのだから。


「少し早いですが、昼食にしますか。」


 持ってきていたバケットからサンドイッチを取り出しつつ、タケとルルには専用のご飯を、フウには水のみ用意する。フウはそこら辺の草をたらふく食べたと思うので。

 美味しそうなサンドイッチが並ぶも、キッチンでは見かけなかったものも出てきた。


「あれ?肉巻きまで作ってたの?」

「はい。チーズ、アスパラ、ゴボウが巻いてありますよ。言ってくれれば取ります。どれにしますか?」

「ううん。自分で取るから良いよ。ユウも一緒に食べよう?」

「...はい。頂きます。」

「うんっ。とっても美味しいぃーー!!」


 お家の中で食べるのとは違った味わいがあるように思える。

 こういったメニューが出てくることも無いので、ピクニックならではだろう。

 いつも様々な料理を作ってくれているユウには感謝している。自分で作るとどうしても同じような料理になってしまうので。


 ゆっくりと食事を堪能してから、坂道を降りる。とはいっても、いつもの如く、私はユウの腕の中なのだけど。

 坂道は草花に囲まれているだけで、木すら生えていない。

 野生動物が潜んでいれば私には分からないが、見渡す限りではその姿を見ることは出来ない。


「そろそろ出ますので、気を引き締めなおしてください。」

「わんっ!」

「にゃっ!」

「きゅぅ。」

「ん?出るって何処へ??」


 分かっていないのは私だけのようで、みんな元気にお返事している。

 不思議に思って、ユウに問い質す。


「普通のエリアにですよ。先程のエリアは所謂ボーナスエリアですね。滅多にお目に掛かれませんが、希少なアイテムが採れる場所です。」

「えっ、そんな場所があるの??」

「はい。希少故にまだ情報が出回っていないようですね。初心者エリアなので価値としては低い方ですが、それでも良いものが出ていますよ。今回は上限いっぱいまで買い戻し致しましょう。」


 この買い戻しシステムには、上限が設定されている、らしい。

 取得物のすべてを持ち帰れるわけではなく、あくまで持ち帰りできるのは【国】からのサービスという位置づけなのだ。

 基本は【国】が買取を行って、物流とお金をより良く回すシステムになっている。

 事実、【国】が物流を管理するようになってから、物価の変動が少なくなった。

 輸出入に関しても、【国】が絡んだ物流であれば安定しているし、不良品も消費者のところまで流れてくることは皆無に近い。


「そこら辺は自由にして良いけど、希少品って高いんじゃないの?」


 貧乏性な私は、価値より価格の方が気になる。

 物品の価値に関しては、名前からして意味不明なので、さっぱりだし。


「先ほども言いましたように初級エリアですから、そこまで高額にはなりませんよ。恐らく、上級エリアでは普通に採取できる品物でしょうしね。」

「あぁ、そういう『希少』なのね。」


 今現在、上級エリアにコンスタンスに通えている人は殆どいないが、ちょっと採取して直ぐ帰って来るくらいなら結構いるらしい。

 危険は冒したくないけど、高額品を採取したいという人が、短時間の隠密行動で参加しているのだ。運が悪ければ危険動物に出くわすが、出現ポイントはキャンプ地になるので安全なのだ。

 様子を見つつ外に出て、すぐ避難するということを繰り返し行っているらしい。奥まで探索できなくてもお金にはなるので、そういうことを繰り返す人もいるようなのだ。


「えぇ、ボーナスエリアの情報は私たち『家政ロボット』コミュニティでは出回っているいますので、知れ渡るのにそれ程時間を要さないでしょう。」

「ぅん?秘密にしている理由は?」

「欲深い人は何処にでもいますからね。身の安全のために。ご主人様が同行せず、買い戻し支持も出ていないのに買い戻しを行っていないという状況に危機感を覚える『家政ロボット』もおりますので。」

「うっわぁぁぁ。こっわいねぇ~。」

「紗夜様は、気になさらないですね?」

「価値が分かってないとも言えるけどね~。」


 正直、名称しか出てこないログを見ても分かる訳がないのだ。

 中には見知っている名称も並んでいたようだけどね。宝石とか興味ないし。希少な植物とかだって、必要なら【国】が繁殖させるでしょ?きっと。

 私の手元にあるよりは、何処かで役立てて貰った方が良いと思うのよ。

 美味しい食材は、ユウが率先して買い戻ししてるみたいだしねぇ。今のところ私が口を挟む余地がないというか、なんというか...。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ