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あめがないている

作者: みなはら




6月の頃は運が悪い


去年はこの時期に事故で死にかけた

今日もちょっと危なかった



気圧のせいか

移り変わる季節の影響か


体調や気持ちも不安定


良いときと悪いときが、

繰り返し繰り返し訪れる


そんなふうに思える、

梅雨のあめの日の訪れ



そのなかで、今日という日は特別だ

晴天の霹靂に遭った日

19という日は忘れがたい


母親が震える声で電話をしてきた日だ


もうだいぶ経ち、

心のしこりも小さくなったが、まだ消えはしない




父親が余命二か月と、医者から告げられた日

言葉にすると、まだ胸が鈍く痛む



実感がないと話す母親


棒読みのような、けれどもすこし震えている声で、

感情を抑えながらだとわかる、電話口の声を聞きながら、

やはりこちらも、母親の声のいうことが実感できずにいた




そしてもうひとつ、

気持ちが整理できぬままに来た、友人からの電話


自分が当時、想いを寄せていた人からだった


涙声で、告げられた言葉

生活が苦しくて、もう生きたくない


いつも強がるあの人は、

いまも決して助けてとはいわなかった



その時期、あの人は、

生活がかなり苦しいと言っていたが、

そこまで困窮しているとは知らなかった




感情を整理する時間が欲しかった


いつもであれば、

もう少し優しく接していたことだろう


どうすればいい?

手助けしたいと


でも、その時の言葉は違った



生きられるのに、そんなことは言わないでくれ!


気がつくと、

そういう感情的な言葉をぶつけていた



あの人には、何のことかわからなかっただろう


説明もせず、理解もさせず、

ただ感情にまかせて言葉をつむいだ




電話を切ったあと、

口座にあった、わずかな貯金をおろして、

あの人へと送った



助けたかった


けれども、あの時のそれは怒りからだった


ただ生きたくないなんてことで止めることのできる生き方を、

あの人に選ばせたくなかった



あの人には、そんなわずかなことで生きるのをやめさせたりしない


余命もまだ知らず、

今も働く父親は、もう生きられない


止める止めないが選べる生き方なんて、

それでやめるなんて認めない!



いなくなるなんて許さない!


あのときは、

そんな気持ちが渦巻いていた





雨は好きだ


世界が洗われて清められてゆくようで、

ささやくような雨音と、けぶる景色と、

雨上がりの景色の美しさは、本当にこたえられない


だからこの季節は素敵だし好きだけど、

ときどき好きじゃないことがある


気持ちが落ちて汚れているときには、

雨はあまり見たくない



あの頃、

泣くのをがまんしていた人と、

自分の持て余していた感情をおもいだすから





今日も雨が泣いている







フィクションですよ。


現実も混じってますけどね(苦笑)

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― 新着の感想 ―
[良い点] いやいや…これは… 真に…迫りましたですよ…。 フィクション…と…おっしゃるなら… プロフェッショナル… 感服…m(_ _)m
[一言] 読んでいて実話だと思っていました それぐらい真っ直ぐな言葉で 剥き出しの感情のようなものを感じました 深く胸に刺さったこの詩を六月の雨を見るたび思い出すことでしょう
[一言] 言葉にできませんが、うんうんと頷いて読ませていただきました。
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