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  作者: ひじきとコロッケ
街に来たけれど、自由にさせてもらえません
9/269

2-1

 ……すやすや眠っちゃいましたよ。起きたら夕方でしたよ。すっきりお目覚めですよ。


 さすがにマリアンナさんはいませんでしたが。


「コール」


 そのうち来るだろうから、待ってる間に念のために確認しておこうと呼んでみたら普通に出てきました。フワッと出てきてスッと着地。ちょっとカッコいいかも。見た感じ回復したっぽい?私もちょっと元気になったし。

 じっくり見ていなかったので、改めてよく見てみましょうか。


 腰まである長い金髪。整った顔立ちに透き通るような青い瞳。鼻筋はスッと通り、ピンク色の唇……ちょっと口は大きいかな?これでにっこり笑ってくれたら最高なんだけど……笑いそうに無いな。

 でも、すっごい美少女だよ!それは間違いないよ!

 背丈は私より頭一つ高いくらいか。スタイルは……くっ、なかなか発育の良い体みたい。私とは大違いだ。そう言えば何かで読んだな、胸のサイズは十五歳くらいで決まると。……ヤバいかも。

 手足は……体の大きさ相当。普通の女の子のサイズですね。太くも無く細くも無く、あ、二の腕がぷにぷにだ。


 頭の横、左側に変なモノを引っかけてます。オペラ座の怪人みたいに目と鼻を覆うようなつやのない銀色の仮面。何でこんなモノを?

 思わず手を伸ばしたら、スッと外してこちらに渡してきました。


 くれるの?


 コクリ。


 私、多分この世界の歴史上初めて、ヴィジョンから物をもらった人かも知れない。

 ……何だ、この敗北感は。


 仮面は、オペラ座の怪人のアレそのまんま。伸び縮みする謎素材のひもが付いている。被って……腕が曲がらないから着けられないよ。


「う……これ、着けてくれる?」


 コクリ。


 スイスイッと着けてくれた。うん、顔にぴったり。紐も良い感じに耳にフィット。

 ヴィジョンにもコクコクと(うなず)かれた。


 満足したと言うこと?

 よくわからないけど、とりあえず外してアイテムボックスへ収納する。

 アイテムボックス全然使ってないなと、テーブルの上に置かれた薬草袋を見つめながら苦笑い。


 こっちで生活し始めて「このくらいの能力あるんじゃ無い?ってか状況的にあって(しか)るべき!」と思って「アイテムボックス!」とやったら出来た。空間に穴が開いて、手を突っ込んで物の出し入れをするタイプで。そして中に一枚紙が入っていた。


「エクストラモードだからサービスの追加コンテンツです。有効に使ってね」


 色々やらかしただろ、あの神様!


 生き物は入れられない、容量無制限、中で時間が止まるので物も腐らず、料理が冷めることも無い、と定番の能力(テンプレ通り)でした。中に入れておきたくなるほどの料理を作ったことがないから意味ないけどね。

 今入っているのは、針と糸の裁縫セット、のこぎりトンカチ大工道具に、何にでも使っているハサミ……これで髪を切るのも慣れました。そこに新たに仮面を追加です。

 もっと色々入れろって?入れるものが無かったんだよ。その日に食べるものを手に入れるのが精一杯の生活だったんだから。あ、銅貨が五枚入ってた。




 とりあえずヴィジョン(この子)、どんなことが出来るんだろう……


「テーブルの上の袋、持ってきて」


 スタスタ、ポン。


 ……そうだよね。でも、そのくらいしか思いつかないよ。

 まあいいや。後でじっくり検証しましょう。


「バック」


 スッと消えます。不思議な感じ。


 ゴロンと寝転んで、今の状況を改めて整理。薬草の香りで心を落ち着かせて。

 ここは騎士団の駐屯地、でいいのかな。いきなりメイドさんに抱えられてお風呂で洗われて、薬を塗られて、綺麗な服を着せられて、ご馳走――異世界(こっち)に来てから食べた中で最高だった――を食べて、寝て。うん、どこからどう突っ込んでいいのかわからない状況だ。


 コンコン


「どうぞ」

「失礼します。お目覚めでしたか」

「ええ、おかげさまでよく眠れました」

「お体の具合、大丈夫ですか?」

「?ええ、なんともないですけど」

「丸一日、目を覚まされなかったので、リリィお嬢様が大変心配を」

「え?!」

「朝夕に包帯を取り替えていてもお目覚めにならなかったので、私も心配で」


 グー


 このタイミングで鳴るお腹。


「……はは」

「健康な証拠ですね」


 フォローが心にしみます。


「食事をお持ちします。お待ちください」

「はい……お手数かけます」


 ドアから出て数秒で戻ってくるのが何とも不思議。料理も温かいし。

 もしかしてマリアンナさんもアイテムボックス持ち?


「はい、どうぞ」

「あーん……はむっ」


 モグモグ。


 うわあ……ニッコニコで見つめられてるよ。




「あの、マリアンナさん、質問が」

「私に答えられることでしたら」

「ドアを出てすぐに料理持ってくるって、どんな手品を?」

「メイドですから」


 その一言で片付くの?!でも、なんか納得してしまった。




 食べ終えると、抱っこされて廊下を進む。うーん、フカフカです。同性ですけど役得役得。


 リリィさんの部屋――多分執務室――に入ると、それはもう色々と言われた。


 どこか痛いところは無いか、体調は、お腹はすいていないか……etc


「ご心配おかけしました。もう大丈夫です。ありがとうございました」

「まあ、元気そうで、何よりだ」


 話がある、と椅子を勧められ、マリアンナさんが座らせてくれます。なんか、お人形さん扱い?楽しそうだから何も言えませんが。


「色々とあるんだが……まずその袋。中身を少し見せてもらったが……何だ?」


 ああ、ここに入ってる量だと少なくてよくわからないか。


「薬草です。森で採ってきて乾燥させたのを商人さんが買い取ってくれるんです。何となく持ってきちゃったんですけど」

「商人が買い取りを?その商人の名前は?」


 名前を聞いたことが無いから、いつも「商人さん」とか「おじさん」って呼んでた。素直にそう答える。


「そうか……わかった。では次の質問だ」


 改めて、あの日の出来事を聞かれました。私も話し忘れたことが無いか、思い出しながら答えた。


「よし、聞きたいことはこんなところだ。ありがとう」

「どういたしまして」

「すまないが、色々とやることがあるので今日はこの辺で。もうしばらくここにいてもらいたいが、良いかな?」

「他に行くあても無いので、置いてくださるなら」

「わかった」


 マリアンナさんに連れられて、お風呂へ。

 体を洗って……お、吹き出物が大分治ってますね。

 お風呂から上がるとまた薬を塗り塗り。包帯巻き巻き。この調子なら二、三日でミイラ娘も卒業できそうだ。

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