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  作者: ひじきとコロッケ
世界最強の力をもらいましたが、ゴブリンに負ける自信があります
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1-6

 目を覚ました時に見えたのは……何かなこれは。

 ああ、やっとお決まりの台詞が言える。


「知らない天井だ」


 起き上がれ……無い。ホント体力無いな。


 ここは、テントだよね?天井も壁も布だし。

 簡素な寝台に毛布。飾り気が無い実用性重視な感じは……軍とかそう言うのを連想させる。


 私のつぶやいた声が聞こえたのか、外で何か話し声がして、バサッと布をまくり上げて一人の女性が入ってきた。

 金属鎧を着込んだかっこいい女性と言うのが第一印象。オス○ル実体化とでも言えばわかりやすいかも。金髪ショート、(とび)色の瞳のすっごい美人。サインもらいたい。ああ、色紙もペンもないや。


「気がついたか?」


 うん、声も何だかカッコよく聞こえます。当社比五倍くらいで。


「どこか痛いところは無いか?」

「大丈夫です」

「そうか」


 グー


 ……何でこのタイミングでお腹が鳴りますかね。でも、それを聞いてクスリと笑いました。うわ、すっごくいい笑顔。


「何か持ってこよう。そのまま待ってて」


 はい、何年でも待ちます!……嘘です。


 女性がすぐにお椀を持って戻ってきた。


「こんなものしか無くて申し訳ないが」


 差し出されたのは麦の(かゆ)。これ、私が週に一度しか食べられない、ご馳走じゃ無いですか!

 目の前に座って、(さじ)(すく)って私の前に差し出された。


「ほら」


 えーと、これもしかして「あーん」しないとダメな流れ?ダメなんですね、仕方ない。


「あーん……はむっ」


 モグモグ。麦の味しかしませんが、素朴でおいしい。ついつい頬が緩んじゃうよ。

 あ、満足げな笑顔が目の前に。さらにひと(すく)い。あーん、モグモグ。さらにもう一度、あーん……

結局全部食べさせてもらっちゃいました。一人で食べられるのに、申し訳ない。


 正直に言います。あーんしてもらうの、最高でした。ついでにうれしそうな笑顔も見られました。この世界に来て初めての癒やしかも。


「少しは落ち着いたかい?」

「はい」

「すまないがいろいろ聞かせてくれ。状況が全くわからんのだ」

「状況?」

「村がゴブリンに襲われた。それは知っているが、詳しく聞きたい」


 とりあえずわかることを全て話しますか。


 森で足跡を見つけたこと。村長が街に連絡をしたこと。村長の家で寝てしまったこと。起きたら家が燃えていたこと。なんとか逃げ出したこと。ハンターらしい四人が来たこと。二人が中に入っていったこと。なぜか襲われそうになったこと。でかいのが来たこと。みんな殺されちゃったこと。


「あの下半身丸出しは戦って脱げたんじゃ無かったんだな……」


 あ、頭抱えちゃいました。ですよねー。そうなりますよねー。


「で、ちょうどそこに私たちが来たというわけだな。なるほど、だいたいわかった」


 今度はこの女性の事情を教えてくれました。この女性は、王国騎士団の第二部隊副隊長のリリィ・オルステッドさん。家名もあるし、多分結構身分の高い人だよ!

 たまたま近くの街に滞在していたところ、ハンターギルドに村からの連絡が入り、ハンターも向かったと聞いたが、大きな足跡があった――私が見つけた足跡の近くにあったらしい――という情報が気になり、部隊を率いてこちらへ。村長GJ(グッジョブ)

  そして到着してみたら村が燃えてるわ、なんかでかいのがいるわ、私が倒れてるわで、何だかよくわからないけどゴブリンを殲滅(せんめつ)し、火事を消し、私を介抱しながら現在に至る、と。


 運が良かったんだね、私。


 ちなみに、すっかり夜が明けて、もうすぐ昼になるという位の時間でした。夜明けと共に起きる習慣が身についてたんだけど、昨日のアレは結構体力を消耗するみたい。課題山積みだわ。


「副隊長、よろしいですか?」

「すぐに行く。すまないが、待っててくれ」

「はい」


 しばらくして戻ってきたリリィさんが「街へ移動する」と抱き上げられ、連れられるままに馬車へ。おっとその前に一度村の前へ寄らせてもらい、手を合わせる。

 色々大変だったけど、いい人たちばかりだったな。私がもう少しうまく力を使えたらきっとこんなことにならなかったはず。ごめんなさい。どうか安らかに。


 あと、苦情は神様へお願いします。




 ゴツゴツとした感じの飾り気の無い馬車に乗せられて出発。生まれて初めてというか、前世から通じて初めての馬車に興奮が止まらない。


 同乗者がいませんけどね。荷物を運ぶのがメインの馬車に乗せられてるだけなので。

 少し揺れがひどいですが、文句を言える立場では無いのでおとなしく座って風景を楽しむ……ような窓も無かった。

 いい加減お尻が痛くて感覚が麻痺しそうになってきた頃――お昼頃に――に街に到着。そのまま衛兵の詰め所兼、騎士団第二部隊の滞在先へ。


「よし、着いたぞ」


 リリィさんに抱き上げられながら馬車を降りる。この高さの上り下りは私には無理だからね。


 さて、ここでお別れか。だってただの小汚い村娘ですから。騎士団がこれ以上面倒を見るいわれはありません。


 とりあえず、いつも薬草を買ってくれる商人さんのところへ行って、この袋の中身を売れば当面のお金は出来るかな?この街にいるのは知ってるけど、どこだろう?あ、聞いて回ればわかると思う……名前知らないな、そう言えば。まあ……頑張るか。一応今までも一人でなんとかやって来てるから、この街でも……


「マリアンナ」

「は」


 すぐ隣には誰もいなかったはずなのにメイドさんが!どこから現れた?

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