表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: ひじきとコロッケ
世界最強の力をもらいましたが、ゴブリンに負ける自信があります
5/269

1-4

「!」


 大きな音に飛び起きた。えっと……村長さんの家だ、ここ。

 周りが妙に騒がしいような。そして、焦げ臭い匂いがする……え?

 そっとドアを開けて部屋の外を見ると、視界全部が煙。慌てて姿勢を低くして、進む。

 みんなが集まっていた大部屋には誰もおらず、壁と天井が燃えていた。

 外からはギャアギャアという耳障りな声が聞こえる。これがゴブリンの声だろうか。状況はよくわからないが、悪い状況だというのはよくわかる。


 どうしよう。ドア付近もよく燃えているし、窓から外に出るのも難しそうだ。


「コール」


 何となく卵を呼び出し、ぎゅっと握る。感触は無いけど。

 もしかしたら、万が一にも今ここで卵から(かえ)って、私を守ってくれるかも、なんて思いたいじゃない。フラグ?たたき折りますわ、そんなモン。


 バキッと目の前の壁で大きな音がする。


 思わずそちらを見上げると、太い木の棒が突き刺さってる。あ、外に抜けていった。

 そしてその穴から何かがこちらをジロリと見ている。炎に明るく照らされたそれはまるで鬼のような目をした何か。身長二メートル、いやもっとありそうな位置だけど、ゴブリンってそんなに大きいの?


 ごめんなさい。今すぐ誰か助けに来てください。


「ギイ……」


 わずかに見える目がにやりと笑ったように見え、ガン!ガン!と棒が打ち付けられ穴が広がっていく。

 マズいマズい。


 見つかった。ってか襲われる!ゴブリンに襲われる村娘とか結末が見えすぎ!くっころ展開とか私には無理だから!


 逃げないと!でもどこへ?


 アワアワしていたら、右手が光り始めた。正確には握った卵が。


 まさかこのタイミングで?!これが主人公補正って奴?


 ゆっくりと手を開くと卵はさらに強く一度光り、フッと消えた。


 そして目の前に私とさほど背丈の変わらない少女がふわりと漂いながら、こちらを見つめていた。


 そして頭の中に響く言葉。


 ――ご命令を――


 澄んだ鈴の音のようなかわいらしい声。


 腰まである長い金髪に青い瞳。すごい美少女ですが、表情が無く、まるで人形のよう。ひらひらとした白い縁取りのある青い服を(まと)い、同じ色合いの靴を履いてこちらをじっと見つめている。


 ……全体がほんのり光ってるんだけど、気のせいだよね?


 ……フワフワ浮いてるのは何だろね?


 で、ご命令を、ですか。


 バキッと大きな音がして、あのイヤらしい顔がこちらをのぞき込み、穴に手をかけメリメリと引き裂き始めた。


 逃げないと。


「ここから私を逃がして!あいつから遠ざけて!」


 穴から(のぞ)き込んでいる顔を指さして、叫んだ。

 すると、少女はこちらにすっと近づき、身をかがめると、ひょいっと私を抱き上げた。お、お姫様抱っこ?!

 前世でもされた経験の無い事にちょっと慌てる私に構うこと無く、ダンッと大きく踏み出して少女が家の奥に向かって走り出す。でも待って、そっちには外へ出る扉は無いはず!と慌てて進行方向を見ると、あっという間に突き当たりの壁に。


 ぶつかる!と思った瞬間、少女がダンッと床を蹴り、グルンと横に一回転。回し蹴りの横領で壁をぶち抜いた。


「ひえええ!」


 何この子、すっごい力持ち!じゃなくて!


 そのままの勢いで外へ飛び出す。壁にぶつからないように、破片が当たらないように私に覆い被さってる。守ってくれてるのか。と、着地してさらに加速。おお、確かに逃げてるわ、これ。


 だけど……どんどん私の力が抜けてく感じが……ああ、私の体力とかそういうのを消費しているんだ。これ、逃げ切れるのかしら?




 村の入り口を駆け抜けたところで、少女が急に減速し始める。私の体力も限界です。ごめんなさい、体力無しの虚弱娘で。


「ここで良いわ、下ろして」


 立ってられないのでペタンと座る。


「バック」


 憔悴(しょうすい)しきったような表情になっている少女を見ていられなかったので戻すことに。一応表情があるのでちょっと安心。

 さて、ある程度逃げたけど、これ、時間稼ぎにもならない気がする。すぐに追いつかれるのは間違いないね。


 でも、少しでも良いから逃げよう。


 村は……ほとんど燃えていた。

 村のみんながどうなったかなんて、想像に(かた)くないので考えないことにして、逃げることに専念。


 ズリズリ、ズリズリ。


 立ち上げる力も無いので、少しずつ、這うように。


 ってか、この状況で薬草を入れた袋持ってきてどうするつもりなんですかね、私は。

 一応アイテムボックスなんて言う定番の能力(チート)も与えられているからそこに突っ込んでもいいいけど……ま、いいか。ズリズリ。


 全然進めないなあと、ちょっと絶望しかけた時、前方から馬の走る音が聞こえてきた。それも複数。


「なんだあれ!あちこち燃えてるぞ!」

「おい、誰かいる!」


 先頭の人が馬を飛び降りてこちらに走ってきた。革の鎧を身につけ、剣を携えた……ああ、これがハンターかな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ