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  作者: ひじきとコロッケ
世界最強の力をもらいましたが、ゴブリンに負ける自信があります
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1-3

 薬草の分別をしていたら小屋をノックする音がした。


「レオナちゃん、村長さんのとこへおいで。色々話があるってさ」


 隣のおばさんでした。

 ええ、元二軒隣(・・・・)のおばさんです。お隣が無くなった(・・・・・・・・)ので隣のおばさんに格上げです。っと、余計なことを考えてる暇は無い。慌てておばさんの後を追って村長さんの家に。

 あ、薬草詰めた袋を持ってきてしまった。ま、良いか。ライナスの毛布みたいなもんですよ。

 村長さんの家に着くと、村の人たちに囲まれて、村長さんが何かを書いていた。何を書いているんだろう?


「よし、じゃあ送るぞ」


 村長さんがそう言って、紙を折りたたみ、描かれている模様に触れて何かをつぶやくと、模様が突然光り、紙が宙に浮き、そのまますごい勢いで窓から外へ。

 これって魔法?あの紙、魔道具とかそういうの?疑問だらけなんだけど。

 ちょっとドキドキワクワクしていたら、村長さんからお話があるみたい。えー、さっきの手紙の詳細を知りたいのに。


「皆、聞いてくれ。レオナが今日の夕方、森でゴブリンの足跡らしきものを見つけた。念のため確認したが、間違いなくゴブリンの足跡だと確認した」


 確認に行ってきた二人がうなずいている。間違いであって欲しかったんだけどな。


「あの様子ではおそらく今夜か明日、この村にやってくる。今見たとおり、街に緊急の(しら)せを送った。夜になってしまうだろうが、ハンターが派遣されてくるだろう」


 ハンター……冒険者とかそう言う感じのものって聞いたことがある。


「それまでの間は皆で交代して見張りをしよう。男たちは俺のところへ来てくれ。女は……ハンナ、頼む」

「あいよ」


 ハンナさんは村長の奥さんの名前だ。今初めて知ったよ。名前で呼んでるの聞いたこと無いし。

 さて、私は女なのでそちらへ……なのだが、ん?


「レオナちゃん、お腹すいてるでしょ。これを」


 椅子に座らされ、ふかしたジャガイモ――結構冷めてます――を二個渡された。

 あのー、私は話を聞かなくても?と思ったが、お子様の出る幕では無いのでしょうね。

 ジャガイモを食べ終える頃には話が一段落付いたのか、数人残して外へ。男性陣は見張りに。女性陣は夜食とかの用意をするそうだ。

 私?食べ終えた後は部屋の隅っこで袋抱えておとなしくしてる……聞き分けのよい子なのだ。袋からほんのり薬草が香る。百%天然のアロマ。ちょっと落ち着く。




 日が落ちてもハンターは到着せず。村の男たちは交代で見回り中。

 それを見てるだけの私……無力感ハンパない。


「レオナちゃん、もう眠いんじゃない?」


 ハンナさんに奥の部屋へ連れて行かれた。

 何も無い部屋ですが毛布をもらいごろんと横に。一応十五歳なのでもう少し遅くまで起きてても平気なんですけどねえ?


「あれ?レオナちゃんは?」

「もう遅いから奥で寝かせたよ」

「そうか」


 そんな声が聞こえる。

 ……この件が片付いたらもう少し大人として扱ってもらえるように頼んでみよう。なんて言えばいいかわからないけど。

 毛布にくるまったまま、右の手のひらを開き、いつもの言葉をつぶやく。


顕現せよ(コール)


 カッコよく聞こえるけど、手のひらの上にぼんやりと光る卵が現れるだけ。

 ウズラの卵くらいの大きさでちんまいけど、金色で綺麗なんだよ。向こう側が透けて見えてて幻想的で。




 実在する神の権能――ヴィジョン


 この世界の人なら誰もが持っている能力。

 そう、神様が最初にいろいろやっちゃった結果、文明の発展が停滞した原因の能力。

 早い人は十二歳頃、遅い人だと十八歳頃に、突然神様からの啓示(プレゼント)として各自に与えられるモノ(何か)


 それがヴィジョン。


 人によって何が与えられるかはバラバラで、親子でも同じものになることはほとんど無く、その理由も含めて謎とされている。あの神様のことだから、どうせ適当にやってるんだろうね。


 どんなモノがあるかというと……

 例えば包丁のヴィジョン。どんな食材でも的確に切り分けられる上に、研ぐ必要が無い、料理人にとっては夢のような包丁……通販番組か!

 例えば縫い針。ただ普通に扱うだけで、まるでミシンのようにダダダッと音を上げながらあっという間に縫い上げることが出来るという……完全にオーパーツだろ。

 例えば剣。どんなに斬り合っても刃こぼれせず――正確には欠けてもすぐ治る――たとえ手を離れてもすぐ手元に呼び寄せられる、戦場の頼れる相棒……それ、魔剣じゃん。


 ヴィジョンが色々便利すぎるせいで文明が発達しない……当たり前だよ。神様、何やらかしてんのよ。


 そんな、道具・武具の他に、生物タイプというのもある。

 犬とか猫の他、鳥や鼠、はたまたライオンなんてのもあるし、ほとんど人間と見分けが付かない人型もある。


 さて、私のヴィジョンは生物タイプ。

 生物タイプになる場合、最初は卵が現れ、それからしばらく――数日の人もいれば数年の人もいるとか――待つと、卵から出てくる。

 卵の大きさなどの見た目と何が出てくるかは全く関係なし。

 一抱えもあるほどの卵から鼠が出てきたり、鶏の卵サイズからライオンが出てきたりするそうな……私のは何が出てくるんだろう。


 卵が出るようになって既に三年。

 この世界ではヴィジョンが使えるようになると成人と認められるため、私は未だに成人扱いされない。見た目のせいじゃない、断じて。


退隠せよ(バック)


 じっと見ていても仕方ないので卵を戻す。何も出てくる様子もないし。


 ヴィジョンが使えるようになる時、頭に声が響くと聞いたのでそれも少し期待している。例えば「あらゆる食材を切り分ける力をここに」「全ての布を一つにまとめてみせよう」「最強の武を授けよう」とか。頭抱えてゴロゴロしたくなるだろそれは。まあ、その声が聞こえないと言うことはまだ半端物。子供と同じ扱いも止むなしか。


 ゴブリン……大丈夫かなあ……そんなことを考えているうちに眠ってしまった。

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