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  作者: ひじきとコロッケ
王都に来たから、平和に過ごしたいって贅沢ですか?
34/319

4-8

「いいか、レオナ。別に私は怒っているわけじゃないんだ。正直に答えて欲しいんだよ。昨夜こっそり教会に行ったな?」

「あ……いえ……その……」


 朝食を食べ終えると同時に両側を固められてレイモンドさんの執務室へ。そのまま三人に囲まれ、思わず正座してしまった。

 夜中に出歩いたというのがバレているだけでも充分アレだけど、教会(・・)という具体的な場所まで言われるとは、どういうことだ。寝言で「教会が」とか言ってしまったのか?


「正直に答えて、レオナちゃん。教会に行ったのよね?」

「ごまかしても無駄だぞ。これが証拠だ」


 エリーゼさんに続いてレイモンドさんが一枚の紙を取り出す。教会に残してきた私の書き置きだ。が、筆跡その他の鑑定技術が会ったとしても、私は他に筆跡を残したりしていないから判別は出来ないはず。私が残したという証拠なんて


「この紙……ここに紋章が入っている。これはオルステッド侯爵家の紋章。どうしてこんな物が教会にあったんだろうか」


 気付かなかったよ!ってか、そう言う紙をホイホイ私に渡さないで欲しいんですけどね。


「……えーと……はい。教会に行きました。ごめんなさい」


 しょうが無いじゃん、こんなの言い逃れ出来ないじゃん。

 必死にこの後の受け答えを考える……


「何をしに行ったんだ?」

「その……なんだかいろいろなことが急に続いたので、その……神様にお祈りをと」

「夜中に?私たちに言ってくれれば一緒に行ったものを」

「その……一緒に行きづらくて……」


 だって光るし。


「ほう。で、この紙は?」

「そうしたら……その……声が聞こえたんです」

「声?」

「はい。だから慌てて書き取ったんですけど、落としてしまったみたいで」


 我ながら苦しい言い訳だと思うが、声が聞こえたというのは嘘じゃないし。


「そうか……と言うことはこれは、神の啓示?」

「ふむ……ではこの南のダンジョン、南東のダンジョンというのは……」

「おそらく、奴らに関係しているのだろう。奴らはそのダンジョンから出てきた。そう言うことなのかもな」

「ダンジョンから外に?」

「そんな……」

「だが、そう考えるのが自然だろうな。だが、マズいな。昨日現れた奴、レオナに俺、リリィがいたから良かったようなものの、普通の騎士ではまず相手にならん。ハンターでもAランクで勝てるかどうか……」

「あの強さは確かに問題ねぇ」

「どちらも未踏破ダンジョンだ。どんな魔物がいてもおかしくないが……ダンジョンから外に出られるとなると」

「マズいな。早急に対策しなければ」


 結構大事になってしまった。

 ああでもないこうでもないと、議論が始まりかけたところでそーっと退室(フェードアウト)しようとしたのだが、急に廊下が騒がしくなり、いきなりドアが開いた。


「全く、この家は主が帰宅したというのに、使用人以外は出迎えに来ないのか?」


 ファーガスさんがわざとらしい一言を言いながら入ってきた。


「申し訳ございません、帰着をお伝えしようとしたのですが」


 セインさんがファーガスさんの後ろでひたすら謝り倒している。伝えるより早くファーガスさんがここに来たんだろうな。


「まあ良い。取り込み中のようだしな……出掛ける用意を」

「は、すぐに」


 セインさんが廊下の向こうに消える。


「で、一体何がどうなっているんだ?また何かあったのか?」


 ファーガスさんが室内を見渡して問いかける。


「話せば長くなるのだが……」

「構わん。話せ」

「あなた。事は急を要するわ。レイモンド、先に城へ行って報告をなさい。私たちもすぐに行くわ」

「わかりました」


 レイモンドさんが足早に部屋を出る。

 ファーガスさんは残った面々を一瞥し、私に視線をロックした。


「レオナ絡みか?」


 風評被害が酷い。


「それ、酷いです。私は悪くないですから」

「そうか。どう見てもそうとしか見えなかったんだが、それは申し訳ないことをした。許してくれ」

「まあ、良いですけど」

「ありがとう」

「それに、レオナは無関係ではないし」

「リリィさん、酷いです!」

「でもなぁ」

「まあまあ。とりあえず話を聞きながら行こうじゃないか」

「ええ」


 ファーガスさんとエリーゼさんが玄関へ向かう。

 今のうちに逃げ出そうとしたのだが、すぐ目の前に見覚えのある丸い物体が……というか囲まれた。


「こんなこともあろうかと、侯爵様に同行して参りました」


 タチアナさんの監視を逃れるのは無理でしたよ。って、「こんなこともあろうかと」ってどういう事態を想定してたの?




 リリィさんが何かあるごとに侯爵に手紙を飛ばしていたので、昨日までのことはほぼ伝わっており、馬車の中では昨夜の教会での出来事と神の啓示の話だけだった。


「フム……そうか」

「お嬢様、その紙はどこに?」

「ん?ああ、これよ」


 リリィさんが私の隣に座ったタチアナに紙を渡す。街の中を走る程度だと、使用人が馬車に同席することは滅多に無いのだが、私のお目付役と言うことで隣に座っている。


「こちら、いただいてもよろしいでしょうか?」

「え?別に良いけど……」

「タチアナ、一応聞くけど、それどうするの?」

「こちらは『レオナの紙』として展示し、複製をお土産として販売しようかと」

「却下!」


 紙を取り上げてビリビリに破いてからアイテムボックスへ収納。ばらまいても全部拾い集めそうだからね。


「残念です」


 私的にはあなたのその中身が残念なんですけどね。




 そんなやりとりをしているうちに城へ到着。セインさんたち使用人が残るかと思いきや一緒に中に入ってくる。


「アレ?」

「今回は会うのは王と宰相他数名だから、うるさいことを言う者もいない。それにどうせタチアナが来ているなら、待たせておいても連れて行っても同じ事だ」


 そう言うものなんですかね。




 前に来たときとは違う部屋に通される。雰囲気的に……王様の執務室?!

 中には王様と宰相他数名にレイモンドさんがいて、難しそうな顔をしていた。


「来たか」


 宰相のロナルドさんに座るよう促されて席に着くと、すぐ後ろにタチアナが立つ。色々と無知な私のサポートに回るらしい。ありがたいことです。




「何度聞いても、信じがたい話だが……神の啓示ではな」

「うむ。それに事実として、正体不明の敵がいたのは確かだ」

「南のダンジョンと南東のダンジョンか」

「どう思う?」

「厳しいな」

「ええ」


 王様、宰相と対等に話をしている人物は誰だろうかと思っていたらタチアナがそっと耳打ちしてくれた。


「ハンターギルドをまとめるギルドマスターのサム・ウィッター男爵です」

「ありがと」


 なんでも現役時代はAランクハンターで、その名を知らぬ者はいない……とまでは行かないが、かなりの有名人だったらしい。

 でも、どうしてハンターギルドが出てきているんだろうと思っていたら、


「どちらも、最高レベルのハンターたちが六、七名で入って、第四層が限界。そこまでの間に魔物があふれ出すような何かは見つかっていないが、その先に何があるか……」

「最高レベルのハンターというと……彼らか」


 ハンターも突き詰めていくと王族や貴族にも知られるようになるんだね。


「ええ。ですが、数名が重傷を負っていて、休暇中です」

「騎士団で動くしか無いか」

「第一部隊を動かそう」

「それしか無いか」

「そうね、第三部隊は少し鍛え直さないとダメだから」


 レイモンドさんが提案し、ファーガスさんが同意し、エリーゼさんが第三部隊にダメ出しする。フム、騎士団を動員するとダンジョンの攻略も出来るのか……ま、方や実力者と言えど数人、方や百人単位の騎士。物量は力だね。かかるコストがすごいから普段なら絶対やらない方法だね。


「そうだな。第三部隊は王都の守りに残そう」

「第二部隊がまだ戻ってきていないのが痛いな」

「部隊長を南東のダンジョンに、副隊長を南のダンジョンとして編成はどうする?」

「あの、失礼ながら申し上げます」


 リリィさんが白熱しかけた議論に割り込んでいく。


「なんだ?」

「その……第一部隊を南東のダンジョンへ。私も同行します」

「それで南のダンジョンはどうする?」

「レオナを向かわせます」

「え?わ、私?!」


 いきなり話を振らないで!


「フム……それもいいか」

「そうだな」

「あのバケモノ相手に無傷で勝利するほどなら、戦力的には問題ないか」


 勝手に話が進んでいくよぉ……

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