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衛兵の詰め所に入ると、応接室のような所へ通された。武骨を絵に描いて立体にしたような場所だから飾り気なんて無いけど、椅子のクッションは悪くない。そして出された茶菓子も、悪くなかった。
しばらくすると廊下が少し賑やかになり、ノックの後、二人の男性と一人の女性が入ってきた。
男性の一人は金髪碧眼でエリーゼさんのような綺麗な顔立ちに、ファーガスさんのようながっしりとした体格。言葉で聞くとかなりアンバランスに聞こえるが、それが絶妙なバランスで成立した、凜々しい男性だった。
もう一人は、白髪で顔に刻まれた皺がその年齢を伺わせる物の、背筋のピンと伸びた執事風の男性。いや、執事風じゃないな。間違いなく執事だ。
女性は……典型的なメイドさんだ。濃い茶色のロングヘアにやや青い瞳。くっそ、この人も胸部装甲が立派だ。
「君か、リリィからの手紙にあったレオナというのは」
「あ、はい。そうです。えっと……」
「すまない、先に名乗るべきだったな。フェルナンド王国騎士団団長でオルステッド侯爵家長男のレイモンド・オルステッドだ。こっちは」
「執事のセインです。よろしくお願いいたします。可愛いお嬢様」
「シーナです。よろしくお願いいたします」
「ご丁寧にどうも。レオナです」
二人とも実に丁寧に礼をしてくれた。私?相変わらずだけど、そう言う礼儀作法には疎いからね。いや、日本人的な礼儀作法は一通り身についているけど、スカートの端をちょんとつまんでとかやり方知らないし。見よう見まねというのもアレだし。
「……」
何だろう?レイモンドさんがじっとこちらを見つめてくるんですけど……はっ?!まさかこの人ロ○コンっ?!
「あの……何か?」
「手紙に書かれていたのとずいぶん印象が違うと思ってな」
「え?」
「比べる基準がない規格外で、放っておくと何をしでかすかわからない爆発物のような娘だからから常時監視が必要と書かれていたのだが」
「なんかひどい言われよう?!」
「まあそれはそれとして、盗賊の護送をしてくれたとか」
「あ、はい」
それはそれ、でいいんだ。
「盗賊共の取り調べはこれからだが、あれは狼の牙とか言う盗賊団で間違いないだろう。アレには色々と困っていたのだ。正式な謝礼は後日になるが、まずは言わせてくれ。感謝する」
「い、いえ。その、出来ることをしただけですので」
出来ること……あれが……?と思うが、レイモンドは口にはしない。公式な、騎士団団長としてのここにいるのだから。
何だろう。あの家族の一員とは思えない程、丁寧な人だ。
「ところで」
「はい」
「王都での行くあてもないのだろう?」
「え、ええ……まあ……」
最悪飛んで侯爵領まで戻ってもいいとさえ思ってますけど。
「王都の侯爵邸に部屋を用意した。皆が来るまでそこで過ごすといい」
「ありがとうございます」
「私は仕事があるので、ここで失礼する。セイン、後を頼む」
「お任せください。レオナ様、こちらへどうぞ」
レイモンドさんと別れ、セインさんたちに連れられて建物の外へ。待っていた馬車に乗るとすぐに動き出した。
石畳の上を車輪をガタゴトさせて馬車が走る。だが、この馬車も色々高級なのだろう、ほとんど揺れない。窓に掛かっているカーテンを少し開くが、夜の町は街灯も少なくて暗い。人通りもないようだ。この世界ではこれが普通だけどね。
ところで一つ疑問が。
御者台にはセインさんが座っている。
いや、正確に言おう。セインさんだけが座っている。
問い:シーナさんはどこに?
ヒント:馬車の中にはいない。
いや、確かに馬車に乗るときにそばに立っていたんですよ?
そして、セインさんが御者台に向かい、シーナさんが外からドアを閉めて……アレ?やっぱり乗ってない?
よし、考えるのはやめよう。
やがて馬車は大きな門をくぐり、建物の玄関の前に止まり、ドアが開かれた。シーナさんの手によって。
「お足元にお気を付けくださいませ」
そんな言葉を聞きながら馬車を降りる。
……聞いておこう。
「シーナさん」
「はい」
「どこにいたのですか?」
「馬車に乗っておりましたが」
「御者台はセインさんだけでしたし、車内は私だけでしたけど……」
「メイドですから」
その一言で片付けるの?!この世界、それでいいの?
心の中で一応突っ込みを入れてから屋敷を見上げる。領都の本邸に比べると一回り小さいが……三階建ての立派な作りだった。
「こちらです」と誘導されるままに中へ。調度品とかは領都の本邸に比べるとやや控えめ?それでも一目で「高そう」とわかる物ばかりだけど。
「レオナ様、お夕食がまだと伺っております。こんな時間ですが、いかがなさいますか?」
「あ、はい……お腹ペコペコです」
夜食べても太らないと思うけど、勧められたら断れないじゃ無い?。
「ご用意いたします。その前に湯浴みして体を温められては?」
「あ、そうですね」
雨の中を飛んでいたし。ちょっと冷えたかも?
「それではシーナ、頼みます」
「はい。レオナ様こちらです」
一緒に入ろうとするシーナさんを丁重にお断りして風呂場へ。うん、ここも広いね。体を洗い、湯舟に。多分この体、今後は風邪を引いたりとかしないんだろうけど、寒いものは寒いので、温かな風呂が身にしみる。ふぅ~
たっぷり温まって出てくると、新しい着替えが用意されていてシーナさんに着せられる。サイズもぴったり。個人情報とかそう言う概念がないからね。慣れるしかない。
「お夕食の準備が整っております。こちらへ」
シーナさんに案内された先は食堂。大きなテーブルに椅子は一つだけ。
「どうぞ」
セインさんが引いてくれた椅子に腰掛ける。既に食器は並べられており、すぐにメイドさんたちが料理を持ってきてくれた。温野菜サラダにスープ、パンと焼いた魚。
魚は見たこともない姿だったけど、骨ごと食べても大丈夫だというので、モグモグ。あ、ホントだ。噛むと骨がほろりと崩れていく。
どれもおいしく頂きました。
二階の客間に通されてベッドにダイブ。そのまま朝までぐっすりだった。
「おはようございます」
挨拶しながら食堂へ。レイモンドさんと、栗色の長い髪の女性に、男女二人の子供が朝食を摂っていた。
「ああ、ちょうど良かった。紹介する。さっき話したレオナだ」
「レオナです。初めまして」
「妻のマーガレットと、息子のジョセフ、娘のティファだ」
「よろしくね、レオナちゃん」
「ジョセフです。よ、よろしくおねがいします。えと、こっちが妹のティファです」
「おねがいしまちゅ」
子供二人は慌てすぎてて噛んでる。しかし、可愛いな。二人とも髪と目の色はレイモンドさんと同じ。歳は五歳か六歳と言ったところか。
「早々ですまないが、すぐに仕事でね。失礼する」
「あ、はい」
「セイン、あとのことはよろしく頼む」
「畏まりました」
私が椅子に座るのを見届けると足早に出ていった。昨日の今日だもんね。そりゃ忙しいか。
「ごめんなさいね。慌ただしくて」
「いえ、責任ある立場でしょうから」
「そう言ってもらえるとありがたいわ」
そして、朝食を終えると三人はどこかへ出掛けていく。
「侯爵夫妻が領都に急ぎ戻ったため、色々と忙しいのです」
シーナさんがそう教えてくれた。そうか、二人がいない分を埋めなければならないのか。
国内でもトップクラスの貴族と言うこともあって、今の状況は結構大変なんだそうだ。そこで、苦肉の策として、子供も茶会や食事会に連れて行き、場を和ませるのに役立てているらしい。
何かもう、申し訳ない気持ちでいっぱいだが、シーナさん曰く「意外に好評らしいです」とのこと。そりゃ、あんなにかわいい子だし、ゆくゆくは新しい貴族家になるのだからその子供との顔つなぎは他の貴族にとっては願ったり叶ったりだろう。
祝日もいつも更新してますが、今回は諸事情により見送ります。
詳しくは活動報告で。




