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  作者: ひじきとコロッケ
そろそろ真面目に開拓しようと思うんです。魔王の対応もしますけど
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17-5

「お褒めにあずかり恐悦至極でございます」


 さて、物資を積み込んだので開拓村へ行きましょう。




 開拓村まではリリィさんと一緒に馬車で行くことになっていた。理由はとても簡単だ。


「少しでもいいから寝ておけ」

「え?」

「相当疲れてるんだろう?ひどい顔だ」


 仮面越しでもわかるひどい顔ってなんなのよと思うけど、ここはお言葉に甘えておこうと馬車の中で横になろうとしたら「待て」と止められた。え?なんで?


「ここだ、ここ」


 リリィさんがポンポンと自分の膝を……って、膝枕?

 侯爵家の令嬢に膝枕してもらうとか……と思い、同じ馬車内のシーナさんを見ると、「そちらでどうぞご自由に」と目で返された。

 確かに疲れている。

 だいたいいつもダンジョンを攻略すると体力を使い切っていて倒れるように寝てしまうのに、今回は色々あって休む間もなし。有り難い申し出なんだけどと逡巡していたらリリィさんがじれったそうに言った。


「遠慮するな」

「ええ……」

「いいから!」

「は、はい」


 これ、一体何のイベントなんだろうかと疑問に思いながら、相当に鍛えているはずなのにびっくりするくらい柔らかいのに驚きながら目を閉じると、そっと頭をなでられた。


「レオナ」

「はい?」

「頑張りすぎてないか?」

「うう……よくわかりません」


 前世では戦争の混乱期に地元の小さな工場に就職。その後すぐに結婚して専業主婦。子供が大きくなってからパート勤めをしたことはあるけどその程度で、世紀が変わる前後くらいから話題になっていたブラック企業とかそういうものの実態はよくわからないんだけど、多分それより酷くはない、と思う。命の危険?この世界では日常茶飯事ですね。


「そうか。皆心配しているぞ」

「え?」

「ここ最近のレオナは、あれやこれやで大忙しで、体を壊したりしないかと、な」

「そう……ですか」

「そういう心配をするなら、もう少し店のこととか手を緩めて欲しいと思います」

「オルステッド家の者は食欲には勝てないのだ」

「それ、自慢することでは無いと思います」


 他愛もないやりとりをしていたが、王都をでるまでに私は眠りに落ち、リリィさんに「そろそろ着くぞ」と起こされるまでぐっすりだった。




「移動の間に確認しておいたが、レオナの到着待ちの状態だ」

「うわ、もしかして迷惑かけてます?」

「大丈夫だ。他にやることは山積みだからな」


 待たせてしまっていたら申し訳ない一方で、やることが山積みというのがとても恐いなと思いながら馬車を降り、アランさんとジェライザ様が話をしているところへ向かう。

 仮にも王族相手なのに外で立ち話とか……仕方ないよね。アランさんたちの住んでいる屋敷はまだ内装工事が進んでいないし、村としてもほとんど建物が建っていないから「ちょっとそこで座って話しでも」というのが出来る場所もないし。




「ではまずはロアへ戻りましょう」


 数名がこちらに残り、もう少し具体的な話を詰めていく一方で、ジェライザ様たちと私が向こうへ行くことになっている。

 そしてボニーさんがヴィジョンを発動させると、ドンとでっかい扉が現れ、初めて見る者達が「おお」と感嘆する。


「では……開きます」


 ゆっくりと扉が開き、その向こうにはロアの王様たちのいる辺り。離れたところには避難してきた国民たちも見える。


「本当にすごいですね」

「ええ。ボニーはとても優秀ですのよ」


 私たちが扉をくぐり終えるとゆっくりと閉じていく。


「さて、私はすぐにフェルナンド王国へ向かう者の調整をしてきますので……レオバル、レオナ様と一緒に」

「はい」


 通訳の方――やっと名前がレオバルさんだとわかった――と共に、避難している方たちのいる方へ行くと、簡易的ではあるが結構な規模の調理場が(しつら)えられており、王城の料理長らしき人の元へ。この状況下では王城の料理人も街の料理屋の店主も関係ないと思いきや、こういう大勢のための料理というのは王城の料理人の方が経験が多いと言うことで、そういうことになっているんだとか。


「食材はこの辺りに出していただけますか?」

「はい。あ、これが今回用意してきたものです」

「おお、こんなにいただけるのですか?ありがとうございます」

「いえいえ。それでは出しますね」


 諸々詰め込んでいる袋や樽が破損しないように、少しずつ丁寧に出していく。

 一応、たくさんのものを収納できるようなヴィジョンもあるらしいのだけれど、私のアイテムボックスはヴィジョンでは無くて神様からのチートの上に、収納力が桁違いすぎて驚かれた。

 一通りのものを出し終え、しばらくはここを往復するので何か入り用であれば遠慮無く言ってくれと伝えて戻ると、偉い人たちの話も一通り片付いていて、この後すぐにフェルナンド王国へ向かうことに。


「向こうに着いたら着いたですぐに忙しくなるから先に伝えておこう。第一陣は彼ら五百人。全員が建築とか木工の職人だ」

「建物造りからって事ですね」

「そういうことだ」


 ボニーさんのヴィジョンで一度に移動できる人数はせいぜい千人がいいところらしい。詳しくは聞いていないけど、扉を開けていられる時間に制限があるというのが主な理由。そこで、最初に向かうのを誰にするかと言うことでアランさんたちと調整し、まずは住むところを用意となった。

 私の開拓村は一般的な開拓村に比べると異常な速さで発展している。単純に移住している人数が多いことと、木を切り倒したり地面を(なら)したりと言った力仕事の一部を私のところの護衛騎士たちが――鍛錬の一環として――請け負っているので作業が進みやすいというのが大きな理由。と言っても、移住してきているのは基本的に農民がメインで、家を建てたり家具を作ったり、あるいは井戸を掘ったりなどは得意ではなく、ぶっちゃけた話掘っ立て小屋よりマシという程度の家が大半。そんなところに三万人を受け入れるなど到底出来る話ではないというのは誰にでもわかる話。できるだけ早く開拓村に受け入れたいと言っても、この大平原にいるのと大差ない環境で受け入れるというのもおかしな話になると言うことで、建築職人(のスペシャリスト)を第一陣として受け入れ、ある程度の規模の建物、わかりやすく言えば長屋のような物を建てて仮住まいとしよう、となっている。


「では行きましょうか」


 ボニーさんのヴィジョンをくぐり抜けて開拓村に戻ると、職人さんたちの大半がゾロゾロと案内されて村の隅の方へ。私は棟梁っぽい人たちとジェライザさんを引き連れてアランさんのところへ。




「というような感じになります」

「うん、いいと思う」


 改めて当面の計画について聞き、承諾する。何か順番がおかしい気がする?気のせいよ。


「では我々は早速」

「よろしくお願いします」

「レオナ様も、よろしくお願いしますね」

「ええ」

「すみません。あと少しだけ頑張ってください」


 アランさんが申し訳なさそうに言う理由はとてもシンプル。

 これから職人さんたちは建設予定地に向かい、測量&基礎工事の準備に入る。

 一方で私は建設資材、つまり木材の切り出しだ。現在進行形で結構な人数が森の木を切り倒しているけど、それでは追いつかないので私の出番となったわけです。領主として頼られるのはなんだか照れくさい……いや、木を切り倒すのって領主の仕事なのかしら?……そもそも開拓村に領主が出向いている時点でちょっと異例かも?

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