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  作者: ひじきとコロッケ
迷宮都市という単語に憧れます。でも、潰さなければなりません
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16-15

 と言うか、煙は上がっているけど、表面についたホコリとかそう言うのが燃えているだけっぽい……あ、本格的に燃え始めた。


「ぬぐおぉぉ!」

「ぎゃあああ!」


パンツと鞭、という姿になってもある程度は動ける、つまり移動できるみたいだけど、ダイナミックには動けないらしく、ウネウネと動き回るのが精一杯のよう。それはそれで気持ち悪い動きなのであまり見たくない。

 そして、彼ら自身の耐久力なのか、何らかの魔法防御的なものでもあるのか、一気に燃えたりはしない。しかし五分もすると、限界を迎えたらしく、少しずつ燃えていき、やがてボロボロと崩れていく。


「た……助け……」

「嫌よ」

「せ、せめて……手を」

「触ったら支配するんでしょ」

「そ、それは……」


 彼らがあの体をどこでどう手に入れたのかは知らないし、知りたくもない。一つだけ言えるのは、アレに触れたら私も彼らの支配下に置かれてしまうだろうと言うこと。多分抵抗できるだろうが、抵抗して振り切るまでの間、姿が変わってしまったりしたら私の心には一生消えない傷が残る。

 イゴールの場合はビキニパンツ一丁。いくら私がお子様体型とは言え、絶対NG。

 ヴィクレアの場合は女王様スタイル。私にそういう嗜好はない。

 チラリとコーディを見ると、私と同じ考えのようで、両手で自分を抱きかかえるようにしてちょっと震えていた。


「コーディ、安心して」

「え?」

「悪……いえ、変態は滅んだわ」

「はい」


 処刑台から解放されたときよりもホッとした表情を見せてくれた。これが苦楽を共にしたと言うことなんだろう、と勝手に思うことにした。


「……ぁぁ」

「……っく……ぉぁぁ……」


 やがて燃え尽きてただの炭が残ったのでここを去ることにする。さすがにここから復活することはないだろうと思うし、仮に復活するとしても操るのに適した体になりそうなものは周囲にはない。

 恐いのはドラゴンの肉体を乗っ取ったり、土から体を作り出せたりする可能性だけど、仮にそうだとしたら爆風で吹き上げられたときにドラゴンの方へどうにか飛んでいこうとしたり、地面に落ちたらすぐに体を作ろうとしていたはずなので、大丈夫だろう。


「さて、進みましょう。方角は……あっちね」

「え……これ(・・)の向こうですか」

「大丈夫よ、熱くないくらいの高さを行くから」

「はい……お、落とさないでくださいね」

「自分から振りほどかない限り大丈夫よ」

「う……気をつけます」


 先程、魔道言語で操られたのが引っかかっているんだろうね。


「大丈夫よ」

「え?」

「仮面を外した私の近くにいれば、あの言葉の支配は受けないから」

「不思議ですねえ」

「ふふん、もっと褒めていいのよ」

「いえ、褒めてはいないんですが」


 まあ、褒められてもね。私が努力して身につけた力ではないし。

 下の階層へ向かう間、ドラゴンたちは遠巻きにこちらをうかがっている感じだった。当たり前か。ダンジョン内で産まれたという、普通の魔物とは違う存在とは言え、最強の一翼を担う種族。そんな彼らが逃げるしかなかった相手をあっさりと倒しただけでなく、ダンジョンという基本的に破壊とかそう言うのが出来ない環境をここまで激変させるような相手に向かっていこうなんて考える者はいないはず。

 どちらかというと、機嫌を損ねて暴れられでもしたら、という感じだろう。

 と言っても、彼らの命もあと僅か。このダンジョンのコアを破壊したら彼らはダンジョンと運命を共にする。まあ、その時に感傷じみたものを感じる余裕は私の側にはないけどね。


「ふう……」


 さすがに疲れたのでヴィジョンを呼び寄せてコーディに告げる。


「ちょっと休むわ」


 土魔法で二メートルほどの高さの壁を作って囲み、障壁魔法を展開させ、アイテムボックスから食べる物など色々取り出してコーディに渡し、毛布にくるまって横になる。見張りはコーディに任せよう。

 三時間ほど寝たらすっかり回復。食事を済ませて壁を撤去したら……まだ私が滅却の業火を撃ち込んだところはドロドロの溶岩状態。

 氷の魔法で冷やしても良いけど、どうせ消える運命の場所なので意味は無いからそのままにして先へ進む。

 次の階層は普通の洞窟っぽいところ。広さはこれまでの階層と同じくらいだけど通路が広くて複雑な迷路っぽさはなく、それほど時間をかけずに突破できそう。

 そう思っていた時期が私にもありました。


「きゃあああ!」

「うるさい、コーディうるさいよ!」


 通路が広いということは現れる魔物が軒並みデカいというわけで、見上げるようなサイズの魔物がゾロゾロ出てくるのにいちいちコーディが悲鳴を上げる。たった今吹き飛ばした吹き飛ばした魔物の群れも一番小さいものでも馬車よりも大きい。


「だって!あの大きさですよ?」

「私は負けないわよ?」

「それはそうですけど……ほら、防ぎきれなくて余波が来たり、とか」

「大丈夫だから」


 透明で見えないけどコーディを抱えたヴィジョンの周囲に三重に重ねた障壁を展開してある。一番外側の強度をちょっと下げてあるので、壊れたらすぐに気付きやすく、それでいて二枚目、三枚目で耐えきれるだろう、という構造にした。

 これが一撃で破られるような攻撃って、私の最大威力の魔法クラスになるので、何をやったって防げないからね。

 という説明をしておいたハズなんだけどなあ。

 それと、魔物も量より質という感じになっていて、あまり数は多くない。今までは一つの階層にいる魔物の数を数えるのが面倒なほどだったけど、今は数えられる。例えば今いる九十一層だと入った時点で魔物の数は二十弱と、数えることができるほど少ない。でも、一匹一匹がドラゴン並みに強いので、今までのように殴り飛ばしながら走るのはちょっと厳しい感じ。

 もちろんやろうと思えば、戦いを全部回避することも出来るんだけど、魔王の配下が通過しました、なんてことになると面倒なのでいちいち確認して回る。マップの表示だと普通の魔物っぽい表示にしかならないので不便ね。この辺、神様に言えば何とかなるかしら?

 そして今のところ、あの変態コンビ――コンビと言われるのは不服かも知れないけど――以外には魔王の配下っぽいのはいないのが何とも不気味。

 あの二人、移動速度だけならかなりのものがあったので、他の仲間を置き去りにして進軍していた可能性は高い。実力的には小隊長とか中隊長と言ったような、部下がいてもおかしくないだろう実力者だから、仲間と言うより部下だと思うけど、部下を置き去りにして勝手に進む隊長とか、軍としてはダメなんじゃないかな?まあ、部下もあんな編隊に従うというのは不本意かも知れないけど。

 しかし、他の戦力も投入しているはずだから、油断は禁物。

 一応言っておくと、他はああいう変態ではなく、ある程度は常識をわきまえた相手であって欲しい。戦い方があの二人のように他者の体を乗っ取って操る戦い方だとしてもね。

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