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  作者: ひじきとコロッケ
今から初級ダンジョン攻略とか順序がおかしくないですか?
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11-16

 私は作り方が頭に全部入っているし、何なら体が覚えているレベルなので、同時進行で豆とラド麦を処理していった。だけど、調理の感覚、つまり火加減水加減に時間の感覚が身についていない人がやっても、すぐに出来ることではない。

 私のやったとおりに再現するのも結構難しいはず。何しろ触ったことのない食材を今まで未経験の方法で調理していくのだから、手際の悪さはどうしても出てくる。だけど、彼らは今までヴィジョンの力でそれをカバーしていた。

 それはそれでいいのだけれど、あんこもラド麦もクラレッグさんの包丁のヴィジョンの出番がない。つまり、ヴィジョンによるリカバーが効かない。

 でも、一つ一つの工程を丁寧にやれば必ず出来る。ならば、あんこはあんこだけで作り、中身は中身で作ればいい。何ならあんこを先に大量に作り、他の甘味に使いながら、おはぎを作ったっていい。と言うか、店を開くという時点で、あんこだけ作る、ラド麦だけ調理する、という風に分担しないと多分やっていけない。つまり、そもそものレシピとしてあんこのレシピ、おはぎにするときのラド麦のレシピ、と言った具合に細分化した方が絶対にいい。


「さて、出来そうかしら?」

「お任せください」


 いい返事ね。


「それにしても驚きました。どちらも色々使えるんですね」

「え?まあ、そうね」

「これはこれで……楽しくなってきました!」


 よっしゃあ、とメモに色々と書き込んでいくのを見ながら思う。

 うん、あれは何日か徹夜しそうだわ。ちょうどそこへセインさんが戻ってきたので、そのあたりのフォローをお願いしておく。


「わかりました。そちらはしっかり管理します。それと、書面の件ですが」

「はい」

「早ければ本日の深夜、遅くとも明日の朝には到着予定とのことです」

「わかりました」


 南門に到着次第、こちらに連絡が届くそうなので、それから出発となる。持っていく物は先に用意しておきますけどね。


「それと、店の件ですが」

「え?まさかもう何か動きが?」

「はい」

「早いなぁ……どんな感じに?」

「店の場所として候補が三カ所に絞り込まれました」

「ふむ」

「選んでいただければ明日から改装工事にかかると」

「改装工事?」

「どれも飲食店の類いではない物件とのことで、厨房の用意などが必要です」

「なるほど」


 少し考える。主に先ほどの厨房でのアレコレを。

 そして、セインさんに候補の描かれた地図を見せてもらいながら、また悩む。これはまた……王様たちの意図がよく見える。


「セインさん」

「はい」

「三カ所全部抑えましょう。その代わり、ここ。最初に取りかかるのはここにします」

「かしこまりました」


 私の返答は予想通りだったみたいね。

 簡単に言えば三カ所は……貴族街、商店街のほぼ真ん中、住宅街に近いあたり。で、私が示したのは貴族街。理由は簡単。客の人数がコントロールしやすいから。看板を出さず、特定の客だけを相手にする、一見さんお断り、みたいな店。でないと……多分、一ヶ月後とかいう短い準備期間では、客がさばけない店が出来てしまう。

 多分、クラレッグさんがレシピとしてまとめ上げるまでにあと数日……うーん、十日くらいかかるとみた方がいいかな?その間に内装工事して、人を雇って……残り二十日くらいで全員がレシピを頭にたたき込む……ギリギリでしょうね。

 人を雇うのも、結構大変なハズ。多分、身許のはっきりした人、何らかの調理向きのヴィジョン持ちで、今まで触ったこともないような材料を扱うのに抵抗が無い人、とか基準が結構厳しいかも。

 つまり、この短期間だと人を雇ってもせいぜい二、三人がいいところかな。それで、王都の真ん中に店を開いたりしたら、忙しすぎて回らなくなる。本格的に店を出していくのは、訪れる客数をコントロールできる貴族街で慣らし、人を増やせるようになってから。

 その代わり、商店街の真ん中とか住宅街の店は、一号店(仮)ができてから一、二ヶ月くらいで作らないとこれまた色々マズそうね。

 そして、一番の問題は、私自身にそうしたお店の経営とかそういったノウハウが全く無いこと。そして、屋敷にいる人の中で店らしい店を持っていたのはエルンスさんくらいだけど、彼の場合は「誰が作っているか」という意味での店。経営、つまり価格の設定とか客との日常的なやりとりは別の人がしていたらしいからエルンスさんにその辺のノウハウは無い。そして、その人はエルンスさんの引退と共に仕事を辞めて、田舎に引っ込んでしまって呼び戻すのも忍びない。呼んだら来てくれそうだけど、金物屋と食べ物屋ではいろいろ勝手も違うだろうし。


「と言うことでセインさん、お店をやりくりできる人を探さないとマズいのです」

「そうですね。うーむ……どうしたものか」


 オルステッド侯爵家は大貴族だけど、商売ごとはやっていない。貴族としての力が大きすぎて、店なんて出したら大変なことになるから。そんなわけで、お店の経営ノウハウはもちろん、人を紹介してもらえるような(つて)も微妙。

 そして「店を経営できる人を紹介してくれ」なんて商業ギルドに連絡しようものなら、ギルド長クラスが派遣されてきそう。

 ん?待てよ……そうだ。


「セインさん、一つ頼みたいことが」

「何なりと」


 これがダメなら、いよいよ商業ギルドに直接乗り込んで「役職に就いてない人限定で」と言いながら人を紹介してもらうしかない。


「あとは、お店の内装工事だけど、厨房の構成はクラレッグさんに確認を」

「え?私ですか?でも、私はそこでは働かないのでは?」

「ええ。ですが、厨房として何が必要かという指示は出していただきたいですね」

「何が必要……あ、コンロの数とかそう言うことですか」

「ええ。あらかじめ言っておきますけど……油の供給が安定したら唐揚げなんかも作りますからね?」

「わかりました。お任せ下さい……って、私が勝手にコレはいくつ必要、とかやっていいんですか?予算とか、その……」

「大丈夫よ」


 私がどれだけ稼いでいると思ってるのよ。


「ですが……」

「その辺の話し合いには、セインさんも入って下さい。マズそうなことになったら一時保留にして」

「わかりました」


 うーん、セインさんが有能すぎるわ。

 さて、とりあえず今できることはこんな所かな?では、出発に備えて休みましょうか。

少し短くてすみません

区切りが悪くて……

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