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なな


 

 

 

 

 『はぁ〜。やっぱり────は卵に絡めて食べるのが凄い美味しいよね!』

 

 鍋を目の前に、口の中に広がるのは草のような味。

 

 『あれ?おっかしいなー。────ってこんな味だったっけ?』

 

 首を傾げた私は鍋の中に箸を突っ込み肉を取り出して器に入っている卵と絡めるとパクリと一口で食べる。

 美味しい料理、の筈なのに口の中に広がるのは草の味。

 不思議に思いつつもパクリ、パクリと食べ続けていく。

 

 ギュゥゥゥゥゥゥッ

 

 次々と食べているのにお腹が鳴った。

 

 『んー?なんで?なんでこんなに食べてるのにお腹空くんだろ?』

 

 困惑しながら茶碗に盛られた白ご飯を箸で摘み食べる。

 突然足首を誰かに掴まれているような違和感を感じて食べるのをやめた。

 伸ばしていた足を見るために机を覗き込んだところで周りの景色が消えた。

 

 『えっ?何?なんなの?何がっ!?』

 

 鍋も机も消えて困惑する。

 足を引っ込めようとしたが誰かに掴まれているせいで片足が動かない。

 どころか暗闇の中どこかに引っ張られている感覚がする。

 

 『いやっ!やめてっ!』

 

 怖くて、引っ張られている中何かを掴もうと暗闇に手を伸ばす。

 硬いものが指先に当たり必死に掴もうとしたが空を切る。

 

 

 

 突如、鳩尾辺りに衝撃が走り息が出来なくなった。

 衝撃は痛みに変わり、ぎゅっと目を瞑り耐える。

 痛みが多少引いたから目を開けてみた。

 光が目に刺さり、痛い。

 

 (なに?なんで?いたいっくるしいっいきがっ)

 

 鳩尾辺りの圧迫感が凄く、苦しい。

 何かが乗っているような感覚がする。

 光に目が慣れてきて圧迫感の正体が分かった。

 この屋敷に住んでいるヒトだ。

 

 

 

 「屋敷に置いてやっているくせにのんびりと寝ているとは……。仕置が必要と見える」

 

 茶色の豪華な服を着た男の人が子供の鳩尾に足を乗せ力を入れる。

 子供の肋骨からミシミシと音がなり、子供が苦しむ。

 

 男の人は手に持っていた杖のグリップ部分と柄部分を持つと横に引いた。

 出てきたのは細身の鋭い剣。

 男の人はその剣の切っ先を子供の細い太腿にゆっくりと突き刺した。

 

 「あ"ぁ"ぁ"あ"ぁぁぁぁっ!!」

 

 痛みに叫ぶ子供の太腿から流れ出る赤い血が、短く刈られた草を伝い地面に染みを作る。

 同時に周りに肉が焦げたかのような臭いが漂った。

 男の人が持っている細い剣に赤いモヤが巻きつく。

 それが子供の太腿を焼いているようだった。

 

 「ふん、全く穢らわしい。アレが無ければ即その心臓をくり抜くというのに……。」

 「御館様」

 「ああ。もうそんな時間か」

 

 声をかけられた男の人は子供の細い太腿に刺していた剣を更に深く、地面に固定するかのように刺す。

 

 「あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁぁ"ぁ"あ"!!!」

 

 子供の叫び声に嫌悪の表情を浮かべた男の人は子供の鳩尾から足を退け、脇腹を力の限り蹴った。

 剣によって太腿が地面に縫い付けられていた子供の身体から何本もの骨が折れるような音が鈍く響く。

 内臓が傷付いたのか子供の口から血が溢れ出る。

 カフッと咳き込んだ子供。

 その拍子に口から溢れていた血が飛び散り、男の人のブーツを汚す。

 

 「汚らしい。杖は処分しておけ。新しい靴を持ってこい、そして後程この靴も処分しろ」

 「畏まりました。新しい物を用意致します」

 

 汚物を見るような目を子供に向けていた男の人は子供から視線を外し、斜め後ろで控えている執事服に身を包んだ初老の男の人に目を向ける。

 初老の男の人は片手を胸元に添えた綺麗な礼をした。

 男の人は初老の人に一つ頷くと子供に背を向けこの場から立ち去る。

 男の人がその場から居なくなり残った初老の男の人は背筋を伸ばすと倒れている子供の傍に近寄った。

 

 「……忌々しく穢らわしいケダモノめ。御館様に生かされている事を感謝するんですよ」

 

 濁った目で優しそうに笑う初老の男の人は、仕込み杖の持ち手を握ると手首を捻り子供の太腿の傷を抉った。

 子供は痛みで叫び声を上げるも口の中の血のせいで咳き込み、辛そうだ。

 少しして満足したのか初老の男の人は仕込み杖から手を離しその場から立ち去っていった。

 

 

 

 

 『あぁ……!私達の愛し子が……!!ヒト風情が……!!苦しめてあげる……!!』

 『許さない許さない許さない許さない許さない許さない……』

 『待って、私達がアレらに何かすれば愛し子が危ないわ。まずは愛し子の傷を癒しましょう?』

 

 一部始終を見ていた上級精霊達が生垣の葉を揺らしながら姿を現し苦しんでいる子供の上を飛ぶ。

 感情に流されている精霊に対して別の精霊が宥める。

 

 『愛し子。私達の愛し子……。』

 『今助けるから。すぐに治してあげるから。だから、頑張って』

 『……周りにヒトは、いないわね。さぁ愛し子の身体に負担がかからないように治しましょう』

 

 精霊達は子供の傍にゆっくりと降りると一人の精霊は刺さっている仕込み杖をゆっくりと引き抜き、一人の精霊は子供の身体に出来た外傷を治し、一人の精霊は内側の怪我を治す。

 ゆっくり、ゆっくりと、でも急いで子供の怪我を治していく。

 

 『お願い、早く来て……森のヒト……。』

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