いち
なんで、なんで私はここに、この屋敷で暮らしているのだろう。
わからない。
でもここにいなきゃダメなんだ。
さもなきゃ痛い、痛いお仕置きをされる。
あぁ、いけない。
これを持っていかないと。
大きな屋敷の裏口に馬車が停まり荷下ろしをしていた。
その中に、ボロボロでやせ細った一人の幼い子供が野菜が入った大きな籠を持って歩く。
しかしその足取りはおぼつかなく、フラフラと身体が右に左に揺れている。
にも関わらず周りを同じように荷物を持ってせかせかと歩いている人間達は気にする様子もない。
子供は疲れてしまったのか立ち止まる。
すると荷物を担いだ大柄な男が、横に突き飛ばすかのように子供の身体を勢いよく押した。
その勢いで子供の身体は籠ごと横に吹き飛ばされ地面に転がった。
その拍子に籠の中に入っていた野菜が地面に転がり出てくる。
「おいグズ!大切な野菜に泥を付けやがったな!!何を寝ていやがる早く起きて運べ!!」
荷物を取りに来た使用人がグズと呼び、腹を蹴る。
周りの人間は嘲笑いながら歩いて行くか、存在自体無視しているかで助けようとしない。
子供は震える腕を地面について起き上がると、小さく、すみません、と言う。
「全く、本気で役に立たねぇガキだ!俺達の仕事を増やしてんじゃねえよケガレが!!」
起き上がる様子を見ていた別の使用人が忌々しそうに子供の腹に蹴りを入れる。
よほど蹴りに力が入っていたのか、それとも魔法を使っていたのか吹き飛んでいく。
地面に転がった子供は起きる気配がない。
「おい起きろ」
子供が落とした野菜を拾った使用人は子供の側まで歩いて近寄ると頭を足でつつく。
「..............」
コフッと胃液を吐き出した子供は懸命にも起き上がろうとするが、身体に力が入らないらしく起きあがれない。
焦れた使用人は野菜が入った籠を持っていない方の手で子供の髪を引っ掴むと文字通り地面を引き摺って屋敷へと歩みを進める。
「ーーーっ!」
いたいっ!いたいよっ!!やめて!!
子供の心の叫びなど使用人に聞こえるはずもない。
例え聞こえていたとしても、無視をしただろう。
子供が連れてこられた先は厨房の玄関先の横。
使用人はそこに掴んでいた子供の髪を離すと、重力にしたがって子供の頭が地面に衝突する。
しかし、そこには運悪く大きめの石があり、子供は後頭部をぶつけてしまった。
流れ出す鮮血。
それに気づかず使用人は厨房へと入っていった。
いや、気付いたとしても汚物を見る目を向けるだけだろう。
いたい.......いたいよ..............。
お腹空いたよ。身体もいたい.......。
もう、眠っていたい..............。
子供の意識はゆっくりと闇に飲まれていった。