表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

05

□    □    □




「ぅえぃ!?」



がば、と起き上がる。

ってか、自分の奇声で目を覚ますって、以外と気分最悪ですね…。

キョロキョロと周りを見れば、周りは真っ暗。

月明かりで浮かぶ上がる室内は、さっきのビップな部屋。

シャレムさんもセシリア皇太子も居ない。

…そりゃそうだ。



「しっかし…何だ?今の夢。」



夢にしてはリアルだった。

ベッドから降りて、大きく伸びをする。

ふと気付く。



「服…変わってる…。」



来てた制服は何処へやら。

今、俺が着ているのは肌触りのいいシルクのパジャマ。



「何て高級そうな…ってか、誰が?」



ぽん、と思い浮かんだのはシャレムさん。

………ないな。

次に思い浮かんだセシリア皇太子。

…ま、男だし、なくはないよね。


ぺたぺたとテラスへと向かう。

窓を開ければ、心地よい風。

空を見上げて、銀色の満月に驚く。



「月まで銀色かよ…。」



その時。



「目が覚めたか?」



セシリア皇太子の声。

同時に、大きな羽音と共に突風が俺に襲い掛かって来た。



「っぷ、何?」



急な出来事で、咄嗟に目を瞑る。

謝罪の声に目を開けば、驚きのあまり言葉を失った。



「どうかしたのか?」



どうしたもこうしたもない。

今、俺の目の前に居るのは、セシリア皇太子…ではなく。



「りゅ、龍!?」



俺の目の前に降りて来たのは、どうにか広いテラスに収まるデカイ銀色のモンスター的龍。

凛々しい顔立ちに、頭部にある鋭い2本の角。

月明かりを照らし返す銀の鱗。

俺、唖然。

でも、声はセシリア皇太子だった。

俺、パニック!


すると、龍の体が淡い輝きを放ち、ポウンと軽い音を立てて人間になる。

銀の髪が風に靡く。



「あの姿が珍しいのか?」


「珍しいも何も…人間は龍になんてなんないし…。」



やはり、あの龍はセシリア皇太子だったようだ。

ムカつくほどの美形だ。

セシリア皇太子は、不思議そうな顔で、俺の言葉に反応した。



「そうなのか?まぁ、我が帝国の人間も、王族以外は変幻せぬが。」


「変幻?」


「龍に転じる事だ。」



あーもう、俺様大混乱!

目が回る。

脳味噌も回る。


その時、体が大きくよろついてしまう。



(あー…床と仲良くチューしちゃう!)



っと思ったのも束の間。

いい匂いに包まれた。



「大丈夫か?」



ごく近場で聞こえた低い声。

思い切り瞑っていた目を、ゆっくりと開いてみる。

最初に目に飛び込んだのは、綺麗な銀髪。

少しの動きでサラサラと流れ落ちる。

そして、ドドンと美形のドアップ。

うわー…コレは落ちない女は居ないな。

…ユキちゃんも落ちそう。


何か、男の俺でも心臓バクバク…。



「おい、星慈?」


「あ、わり。」



一応の謝罪を述べて、体を離す。

いやー…イイ匂いでした。

甘いけど爽やかな匂い。

…雅やか?



「で?皇太子は何してた訳?」



聞いても、じっと見られたまま反応はない。

物凄く居心地が悪い。



「皇太子?」


「それだ。」



びしっと指差され、俺びっくり。

それだって…何が?



「何か違和感を感じていたのだ。その“皇太子”と言うの、止めてくれないか?」



やめるも何も、アンタ、皇太子殿下でしょうが。

我侭言うんじゃありません。



「何が我侭だ。お前が悪い。皇太子と言う割に、お前は一向に敬語にならぬであろう?」



…そう言えば。



「そうですね…。」


「だろう?故に、お前に皇太子などと呼ばれると寒くて敵わぬ。今すぐ改めよ。」



いやいや。

普通、言葉遣いの方を改めさせるでしょうが。

…とは言えない。

言い負かされるのが解ってるから。



「あー…じゃ、何て呼ぶべき?」


「父上たちには、セシーと呼ばれているが…。」


「じゃ、セシルでいいか。」



ほぼ投げやり。

本人も満足そうに頷いてるし、問題はない筈だ。



「で?いい加減、俺の質問に答えてくれない?」



本題からかなりずれた。



「ああ。散歩がてら見回りだ。1日おきにしてるんだが。」


「見回り?なんで?そんな物騒な訳?」



俺とセシリア皇太子は、テラスにある卵みたいなハイギングチェアーにそれぞれ腰掛けた。

柔らかなクッションが、体を優しく包み込む。



「…お前は、何も知らないのだったな…。」


「ま、来たばっかだし。」



むしろ、順応力は高いと思う。



「今、この世界は暗黒の力に支配されようとしている。魔術師達は“エレシュキガル時代”と言っていたな。」


「話に割ってはいるけど…この世界は魔法が使えるの?」


「ん?ああ、皆、生活に困らぬ程度には使える。神々が眠りに就いていても、精霊たちが力を貸してくれるからな。」



ほー…じゃ、セシリア皇太子もシャレムさんも使えるのか…。

俺は使えるのかな。

両掌をムムッと睨み付けるが、何も起こらない。



「勉強しなければ無理だ。この世界の住人ではなかったのだから。」



…何だか疎外感。

胸がチクチクする。



「暗黒の帝王“ジャガンナート”の手下共が、民を襲うんだ。人の血肉を食らって、醜い成長を遂げる。民の魔術では、太刀打ち出来ん。王族に仕える魔術団が、結界を張っているが…最近、稀に侵入して来る輩が居てな。父上も大分年を召された。母上も同様だ。弟妹も居るが…幼過ぎる。私しか、手出し出来る者は居らぬ。」



月明かりに照らされる横顔が、疲れの色を滲ませている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ