1の鍵 光星流るる夜の果て
身長?
…普通。
体重?
…平均ぐらい?
外見?
そこそこ…………中の中?
性格?
それこそ普通……ではないらしい。
そんな俺。
北野星慈。
職業。
高校生。
の筈が。
「ぉ、おお!救世主様じゃぁ!!」
「救世主様じゃぁ!!!!」
「長老を!」
一体、何をどうすれば。
ジジイ共に拝まれる訳?
………………てか。
「ココ…何処。」
俺は大らかさんなO型。
基本的に、大概の事は笑って許す。
そんな俺でも思ったね。
大概の事は笑って過ごせるけど、今回の事は笑えねーだろ。
□ □ □ □
俺は、現在めちゃくちゃ豪華な部屋に居る。
正にスイートルーム。
めっちゃ綺麗。
絨毯も調度品もかなり高そう。
今座ってるソファーなんて、座った事無いくらいフワッフワなんだけど、丁度いい沈み方な訳。
天井も高くて、スワロフスキーか何か宝石なのか無駄にキラキラしたシャンデリア。
部屋の奥に見える場所にキングサイズのベッド。
アレは見るからにふかふかしてる。
よくよく見れば天蓋付きだし。
スイートルーム…以上でしょ。
此処、王様とか王子様とかが住む部屋じゃないか?
仕様も無い事を考えてると、扉を控えめにノックされた。
「あ、ハイ。」
一応、返事をしてみる。
「失礼致します。」
入って来たのは、銀髪銀眼の美人メイド。
確か名前は、シャレム・フレディアさん。
22歳の恋人募集中。
俺をこの部屋に案内してくれた人。
ほんの数分だったけど、何故か意気投合しちゃったり。
「セイ様、陛下と殿下がいらっしゃいました。」
にっこりと微笑む姿はマリア様の如く。
眩しいぜ…。
シャレムさんの後から入って来たのは、老いてはいるが穏かな表情の老紳士と、長身の男前。
服装は正に王族。
二人の肩には、綺麗な銀髪が尻尾として流れている。
そっくりな目は、これまた銀色。
どうやら、銀色なのはこの国の人の特徴らしい。
俺が会釈すると、老紳士は笑みを浮かべ、男前は無表情で会釈を返してきた。
彼等は、俺の目の前のソファーに並んで腰掛けた。
「初めまして、救世主殿。わしの名は、ヴェリシア・アルフレッド・トゥイラ2世だ。」
老紳士は、皇帝陛下の地位だと名乗った。
「これは嫡子の…。」
「セシリア・ヴェリス・クロスナーガだ。」
嫡子って事は、皇太子か。
お偉いさんかー…気難しそうだ。
特にこの皇太子は。
「北野星慈です。失礼ですが、此処ってドコ?」
ずーっと聞くに聞けなかった事を敢えてきっぱり聞いてみる。
すると、陛下は愉快そうに軽やかに笑った。
隣に居るセシリア皇太子が、これでもかって位に深い溜息を吐き出し、説明してくれた。
「此処は、ディルアス・ティーマ帝国と言う、ヴェリッシモ大陸にある国だ。25の街と14の村で構成されている。」
…うーん、ドン位凄いのかが解らないけど、大陸一ってくらいだからね。
相当大きいんだろう。
そう無理矢理納得してみる。
詳しくは、シャレムさんに聞けばいいだろ。
さて、前置きとかメンドクサイから、さくっと本題に入ってみよう。
「あの、俺って何で此処に居るんすかね?」
聞いたはいいが、誰も彼もが無反応。
…なじぇ?
黙殺されてもねー…俺、困るし。
「一応、家で宿題してた筈なんすけど…。」
そうだ。
そうだよ、俺。
すっかり妙ちくりんな出来事で忘れてたけど、数学の宿題してましたのよ。
明日、当てるって担当教師から言われたし。
居眠りくらい許せってのね!
…話ズレタ。
チラリと視線を老紳士に向けるが、難しそうな顔で顎に手を添えて考え込んでた。
扉近辺に立っているシャレムさんに目配せすれば、苦笑が返って来た。
くそ…可愛いぜ。