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レクイル、クラスチェンジ

「やりました。お姉ちゃん、私もクラスチェンジできるのです。」

「おめでとうレクイル。あなたの齢でクラスチェンジなんて、銀狼族でも初めてのことかもしれないわ。」

「部族最年少ってことか、凄いじゃないか、レクイル。」

「えへへへ、やったのです。」

「確かにその齢でレベル20は凄いわね。エルフだったらまだ森にすら出ていない年齢よ。」


天職持ちとはいえ、レクイルの戦闘力は決して高くはない。

それでも俺達の役に立とうと治療魔法を習得して、様々なトラブルにも負けずについて来たレクイルは本当にえらい。

俺が感謝の気持ちを込めて頭をナデナデすると、嬉しそうにケモ尻尾を振って応えてくれる。


普通のクラスチェンジとは違って、天職持ちのレクイルの場合はクラスチェンジ先は、自身でも選ぶことはできない。

元々持っていた天職に合わせて、自動的にクラスチェンジが行われるのだ。


彼女に示された転職先は、「銀狼姫ぎんろうひ」であった。


巫女から銀狼姫へのクラスチェンジを果たしたレクイルは、新しい魔法である祈願魔法を使用できるようになった。

祈願魔法は術者の主神となる神に祈りを捧げることで、様々な効果の魔法を使うことができる。

銀狼族であるレクイルの場合は、部族が崇める聖獣プラチナムウルフ、そのプラチナムウルフを地上に遣わしたとされる狼族全体を守護する狼神ウルフゲイザー、その狼神に祈りを捧げることで様々な力を行使できる。

いわば主神と直接コンタクトできるというとんでもない魔法である。

とはいえ当然ではあるが、無制限に神の力を呼び出せるわけではない。

使える力はあくまでレクイル自身のレベルと魔力にかかっている。


今回レクイルに与えられた魔法は「シルバーウルフスピリット」と「サモンワイルドウルフ」

シルバーウルフスピリットは眠りについた銀狼の勇者の魂を呼び出して、仲間に付与することで戦闘力を激的に向上させるというもの。

ただしこれは銀狼族の者に対してしか使用できない。

つまり俺達のパーティではセフィアルに対してしか使えないということだ。

かなりの魔力を使用するうえに、術を付与した仲間にも大きな負担がかかるので、ポンポンと使うわけにはいかない。

強敵専用の必殺技といったところだろうか。


サモンワイルドウルフは、狼神の呼びかけでワイルドウルフを召喚する。

ワイルドウルフは狼系統では中級程度の戦闘力を持ち、召喚者の命令で戦闘に参加したり、偵察を行うなど様々な任に充てることができる。

現時点のレクイルの魔力なら二頭まで同時召喚可能だ。


また追加の回復魔法としてリカバリーも取得した。

リカバリーは毒や麻痺など状態異常から回復させる魔法だ。

まだ取得したてのC1なので、低位の状態異常にしか効果はないが、クラスが上がれば石化なども解除できるようになる。


銀狼姫にクラスチェンジしたことで、祈願魔法を二つも習得して、これまで戦闘には参加できなかったレクイルが一気にパワーアップした。


早速、実戦で試すべく魔の森周辺部へと足を運んだ。


「狼さん、出てきて、力を貸して欲しいのです。サモンワイルドウルフ。」

レクイルの可愛らしい呼びかけに応じて、二頭のワイルドウルフが召喚される。

中位クラスの狼といってもかなりデカい、背丈も俺の胸のあたりまであるし立派な体躯をしている。

彼らに比べれば、スノウはまだまだ子狼程度の大きさしかない。


「狼さん達、魔物を見つけて欲しいのです。」

レクイルの命令を受けて、二頭の狼は森の中に消えていった。

しばらくすると遠くから吠え声が聞こえてくる。獲物を見つけたようだ。

急いで声のした場所へと向かうと、二頭の狼が前後から魔物を囲んで威嚇している。

相手はフレイム・グリズリーだ。


さすがに彼らだけでフレイム・グリズリーの相手は出来ないが、うまく距離を取って魔物をその場に釘付けにしている。狩りの上手な狼ならではの連携だろう。


「レクイル、もう一つの祈願魔法も試してみましょう。」

「うん。いにしえの銀狼族の勇者の魂よ。銀狼姫ぎんろうひたる、私の呼びかけに応じて。シルバーウルフスピリット」

レクイルの手のひらの上に、青白く光る先祖の魂が召喚された。


「行くよ、お姉ちゃん。」

レクイルの放った魂球が、セフィアルに付与された瞬間、セフィアルの体が青白く光り、戦闘力が爆発的に膨れ上がった。


フレイム・グリズリーに突進すると、魔物のかぎ爪をかいくぐり、固い体毛をものともせずに脇腹を切り裂く。そのまま魔物の周囲を跳びまわり脇や首筋など敵の弱点を切り刻む。

見ている俺達が怖いくらいの鬼気迫る戦いぶりだ。

銀狼族の英雄の魂が、セフィアルを一種の興奮状態にしているようだ。


グリズリーを倒すとセフィアルは、膝をついて苦しそうに息をしている。


「セフィアル、大丈夫か。」

「ハイ、でもこの魔法は強力な分だけ反動も大きいようです。」

彼女の体にもかなりの負担が掛かったようだ。やはりこの魔法は使いどころを選ぶ必要がある。


新しい魔法の効果も確かめたし、レクイルのクラスチェンジで、パーティー全体の戦闘力は大きく上がったのだった。



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