オーガ族の刺客 その2
セフィアル達が苦戦している。早く目の前の敵を倒して、仲間の加勢に行かなくては。
俺の中に生まれた焦りを、熟達の戦士であるガザルドガは見逃さなかった。
「フレイム・ボルテックス!」
オーガの中級闘技フレイム・ボルテックスを発動させる。
炎をまとって燃え上がった巨大鉄球が、俺のスフィアに激突して、ガァァァンという轟音が里中に響きわたる。
そしてなんと俺のプロテクション・スフィアが、吹き飛んでしまった。
いままでスフィアごと弾き飛ばされたりしたことはあったが、光体が消滅してしまうことは一度としてなかった。
HPひとケタの俺にとって最も重要な守りの要「プロテクション・スフィア」が、初めて打ち破られてしまったのだ。
完全消滅したスフィアはすぐには再生しない。
無防備になった俺に向かって、ガザルドガは再び鉄球を振るってくる。
10しか敏捷性≪AGI≫のない俺には避けることはできない。
8しか体力≪HP≫のない俺がこの攻撃を受ければ、結果は火を見るよりも明らかだ。
そう「死」である。
「キャイィィィィン!」
俺に攻撃が当たる直前、スノウが飛び込んできた。
俺を押し倒すと自らが鉄球を受けてしまう。
「スノウッ!」
吹き飛ばされたスノウは、グッタリと倒れてまま起き上がってこない。
俺の目の前が真っ赤に染まった。
「よくも、スノウをッ!」
俺の怒りは爆発した。グラビティ・コントロールを最大パワーで発動する。
「ウオッ、これは?」
突然増加した重力の重さに耐えきれずガザルドガが膝をつく。
奴だけではない。里にいるすべての者、オーガも銀狼族も超重力に耐えきれず地面に這いつくばる。
魔法の影響化で動けるのは、俺とその眷属であるセフィアルとレクイルだけである。
「な、なんという魔力だ。う、動けん。」
超重力化では重いモーニング・スターを振るうことは出来ない。
「ライトニング・ストライク」
呪文を唱えると上空に巨大な雷雲が発生した。
そこから
「ライトニング・ストライク」
稲妻が敵に落雷する。
「うわっ」「きゃあ」跳ね飛んだ雷撃の欠片が銀狼族の人達に飛び火するが、今はかまってはいられない。
「ライトニング・ストライク」
「ライトニング・ストライク」
「ライトニング・ストライク」
「ライトニング・ストライク」
・
・
・
・
雷雲から次々と稲妻が落ちてオーガ達を捉える。
いかに魔法抵抗力が高いオーガ族でも耐えきれるはずもなく、大量の電撃を浴びたオーガ達の動きが完全に止まった。
「お、おのれェェ」
リーダ格のガザルドガだけはかろうじて、抵抗しようとするが俺はさらなる魔法を放つ。
「ま、まてッ」
「流星砲ォォォ!」
コメット・ストライクの砲弾を真正面から受けたガザルドガも、吹き飛ばされて地面に転がった。
「タ、タケルさん・・・」
「タケルお兄ちゃん・・・」
あまりの出来事にセフィアルとレクイルは、呆然と俺の名を呼んでいる。
「レクイル、スノウを」
我に返ったレクイルが慌ててスノウに駆け寄るとキュアをかけまくる。
「レクイル、スノウは大丈夫なのか?」
「私のキュアじゃあ、これ以上は治らないよう。」
「とにかく、すぐに書庫に運ぼう。」
俺は傷ついたスノウをそっと抱きかかえると、急いで書庫へと運んだ。
「エクレール、スノウの具合はどうだ?」
「分かりません。かなりのダメージを受けたようです。」
書庫に運び込んたスノウをエクレールが診てくれたが、スノウはぐったりと意識を失ったままだ。
「そんな・・・」
「スノウ・・・」
「お姉ちゃん、スノウは助かるの?」
「回復薬で体の表面の傷は治しましたが。内臓にも損傷があるようです。
結晶獣の力の源はマナです。最も相性が良いタケルさんが魔力を供給してあげてください。」
ここでスノウを死なせるわけにはいかない。
オーガとの戦いの後で疲れ切っていたが、俺は何度もマナ切れを起こしそうになりながらも一晩中かけて全てのマナを注ぎ続けた。
明朝、レクイルは疲れて俺の膝の上で眠ってしまった。
セフィアルも俺に寄りかかってウトウトしている。
俺もマナ切れ寸前で意識が朦朧としていた。
なんだかスノウが光り輝いていた気がする。
ハッと気が付くとスノウが俺の頬をペロペロと舐めていた。
「スノウッ!元気になったのか。」
「ウォン!、ウォン!」
「スノウ、お前・・・第三形態に進化したのか?」
スノウの体には大きな変化が起こっていた。
翼はより大きくなり、その形も鋭さを増した。
尻尾も長く伸びて、一回り太くなった。
そしてなにより、結晶獣のシンボルとも言うべき額の結晶はさらに複雑化して、正五角形の表面に星型が浮き出ていた。
○ガザルドガ オーガ族
職業 重戦士(百人戦士長)
LEVEL 33
HP 1672
MP 38
STR 254
VIT 440
INT 30
AGI 36
WIS 38
LUC 15
闘技
中級 オーガ・クラッシュ
マッスル・アーム
フレイム・ボルテックス
シールド・アッパー
スキル
HP自動回復 (中) (Lv7)
HP増大 (中) (Lv8)
オーガ・アーム (中) (Lv6)
オーガ・スキン (中) (Lv7)
モーニングスター(中) (Lv1)




