ピティック族 その2
スノウの活躍のおかげで九死に一生を得たピティック達、助けた彼らの所に近づいていくと、彼らは一斉に膝をついて土下座、両手を頭の上にあげてお辞儀を繰り返し始めた。
まるで神様に祈りを捧げる信者達のような様子だ。
どうやら助けてあげた俺達に、感謝の意を示しているみたいだ。
「どうするよ?これ?」
「さ、さあ?私には何とも」
突然、崇められてもなんとも対応に困ってしまう。セフィアルも戸惑っている。
「タケルお兄ちゃん、カチカチだよ、この人達!」
レクイルは土下座しているピティックの一人を、コンコンと軽く叩いて感触を確かめている。
スノウも猫パンチならぬ狼パンチで、突っついている。
君達、おもちゃじゃないので遊ばないようにね。
しばらく待ってみたが、なかなか祈りの儀式が終わりそうにない。
「この儀式、なかなか終わらないぞ。」
「ピティック族は、マナが大好物だと聞いたことがあります。」
「そうか、じゃあ少しだけあげてみよう。」
俺が少しだけマナを空中に放出すると「ピィキャ、ピィキィ」と大喜び。
今度は俺達の周囲を回って踊り始めた。
感謝の舞?だろうか
これもまた結構長く続いたのだ、途中で出ていく訳にもいかずジッと我慢しているのも結構しんどかった。
「やっと、終わったか。じゃあそろそろ撤収するか」
しばらくピティック達の輪の中で耐えていると、やっと儀式が終わったみたいだ。
俺達はこれ以上彼らを刺激しないように、注意してこの場を離れることにした。
「おいおい、ついて来ちゃってるよ」
なんと俺達が移動を始めると、ピティック族も後をついて来るではないか。
「おそらくマナをあげたからでしょう。
大きな魔力を持つタケルさんのマナに誘われて、ついて来たんだと思います。」
セフィアルは冷静に解説してくれるが、君が勧めたんだからね。
「このまま書庫までついてきても大丈夫なのか
「特に害はないはずですが、どうしましょうか振り切りますか?」
彼らの動きは速くない、俺達が移動速度を上げればついてこれないだろう。
表情が無いとはいえ、転びながらも必死な様子でついて来る彼らを置き去りにするのも心苦しくて、結局俺たちは10匹ほどのピティック族を書庫まで連れ帰ってしまった。
「別に書庫の中に入らないのなら問題ありませんよ。
それに彼らは自然界にとって有益な存在です。濁ったマナを食べることで浄化してくれています。」
なるほど彼らの存在にはそんな意味もあるのか、エクレールの説明を聞いて彼らのおかしな生態にも納得できた。
書庫の近くにある岩場に、ピティック達を案内してやる。
ここなら大きな魔物はこないし、安心して岩を食べられるだろう。
たまに様子を見に行くと、俺を見かけるとトコトコと寄って来るので少しだけマナを放出してやる。
するととても喜んで、俺の周りを転がったり踊ったりするので見ていて飽きない。
こうしてピティック族は、書庫の近くに住み着くことになったのだ。




