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連れ去られた銀狼族

セフィアルの案内で、銀狼族の里までたどり着いた俺達を待っていたのは、変わり果てた里の姿だった。

里にある小さな小屋のような家屋のほとんどは、破壊されて原型をとどめていない。


「そ、そんなッ、里が?!

ミリアル、セプトル、誰かッ!いないのですかッ?!」


セフィアルがあちこちを走り回って、仲間の名を呼ぶが返事はない。

里はもぬけの殻になっていた。


「お姉ちゃん、里のみんなはどうしちゃったの?」

「わかりません。何者かに襲撃されたようですが・・・」


俺達が残された人はいないかと探し回っていると、里の中央にあって唯一原型を留めている大きな小屋から何者かが姿を現した。


亜人のようだか狼族ではない。

細長い顔つきから見て狐の亜人だろうか、暗く嫌な雰囲気を漂わせている。


「おや、おや、まだ隠れている者がいたようですね。」


「あなたは何者です。里の皆はどこに行ったのですか?」


「彼らには、ここから移動していただきましたよ。」


「移動とはどういう事です?」


「彼らにはここから離れて、オーガ族の砦に移ってもらう事にしたのです。

まあ、奴隷としてですがね。」


「奴隷・・・」


オーガ族

彼らは人、エルフ、ドワーフなどおよそ理性ある種族のほとんどと敵対している。

当然、銀狼族も例外ではない。

凶暴で残虐な破壊衝動に支配されたオーガにとってみれば、自分たち以外の種族は餌か奴隷、

どちらかの価値しかない。


狡猾な狐族の一部には、奴隷商としてオーガ族と手を組んでいる者もいると言うが、

この男もそのようだ。


「そんなことより。どうやら、あなた達がバルナドの言っていた族長の娘のようですね。

今回、この里の銀狼族が連れていかれたのも、元はといえばあなた方のせいなのですよ。」


「どういうことです?」


「バルナドが、レアな銀狼族の娘を愛玩用に差し出す約束であったのに、

まんまと逃げられてしまったというではありませんか。

かわりに部族全員を奴隷にすることで償ってもらったという訳ですよ。」


<なんてこと、あの男がまさかそこまでの裏切りをしていたなんて>

セフィアルは悔しさと怒りで体を震わせた。


「皆を連れ去った方向を教えなさい。」


オーガ族の砦に連れていかれてはもう助けるすべはないが、里の者達が捕まってからまださほど時間が経っていないようだ。

今からすぐに追いかければ何とかなるかもしれない。


「タケルさん。今すぐ追いかければ間に合うかもしれません。

力を貸していただけますか?」


「もちらん手を貸すよ。セフィアル」

よく分からないが、セフィアルの仲間たちを連れ去ったのは、悪党共のようだ。手助けしない理由はない。


「おい、お前、いますぐ里の人達の行く先を教えろ。」


「何をバカなことを言っているのですか、人族ふぜいが。

オマエに用はありません。消えなさい。」


「タケルさん!気を付けてください。狐族は魔術に長けた種族です。

特に精神系の魔法を得意としています。」


「教えたところで、どうなるというのです。フィアー・スプレッド!」

狐族の男が呪文を唱えると薄い霧のようなものが俺の周囲に発生した。

だけれどもすぐに消え去ってしまう。


「ん・・・」

何も感じないぞ。失敗か?


「なッ?それならばコンヒュージョン・スプレッド!」

同じ様な霧が再度俺の周りに漂うが、またもすぐに消えてしまう。


「おい、こっちまで届いてないぞ。」

プロテクション・スフィアが防いでいるわけではない。

スフィアの光体に当たる前に、魔法が自然に霧散して消滅してしまうようだ。


「そ、そんなッ、バカなッ!」


狐族の男は呆然として、アングリと口を開けている。


「まあいいか。じゃあ、今度はこっちの番だな。アイスバレット!」

アイス・バレットをもろに受けると、狐族の男は一瞬で氷漬けになった。


「おい、銀狼族の人達をどこに連れ去ったんだ。」


「・・・・・・」


「そうか、なら、スノウ!」


「ウォン!」

スノウが額の結晶石から電撃を発生させると男に浴びせかける。


「アババババババッ!!」


「どうだ 話す気になったか?」


「こ、これくらいのことで」


「スノウ」


「ウォン!」


「アババババババババババババババッッッッ!!!」


「このくらいの・・・」


「スノウ」


「ま、待って、わ、分かりました。

彼らはまとめて荷馬車に乗せて、砦のある南東の方向に連れて行きました。

は、早くこの獣を遠ざけてくださいッ!」


「本当か?もし嘘だったら、戻って来た時に死ぬまで電撃を浴びせ続けるからな」


「う、嘘ではありません。本当です。信じてください。」


「レクイル、どう思う?」


「嘘を言っているようではないようです。」


「よし、なら今すぐ後を追うぞ

スノウ!彼らの匂いをたどれるか?」


「ウォン!ウォン!」


スノウは任せろというように吠えると、すぐに匂いの痕跡をたどって走り始めた。


狐族の男を縄でグルグル巻きにして近くの木に縛り付けると、俺たちは全速で荷馬車を追った。


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