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アント族襲来

「タケルさん!大変です。起きてください。」

早朝、いつになく焦った様子でエクレールが俺の部屋に飛び込んできた。


「どうしたんだ?エクレール、朝っぱらから。」


「一大事ですよ、タケルさん。これを見てください。」


エクレールが書庫の周辺の状況を映し出すと、そこにはなんと書庫の入り口付近にぎっしりと大きなアリンコがたむろしている映像が映っている。


「ゲッ、こいつらは昨日の・・・。

そういえば昨日、アント族に襲われて逃げるときに何匹かやっつけたんだ。」


「なんてことを・・・。

アント族は非常に仲間意識が強い魔物です。

仲間がやられたことに怒って、復讐に来たんでしょう。


「でもどうしてこの場所が分かったんだろう?」


「彼らは非常に嗅覚が良いと言われています。きっと戦闘時に付いた体液の匂いをたどってここまで来たのでしょう。」


映像を見ているとアント達は、なんとか書庫に侵入しようと扉に噛り付いている。


「大丈夫です。彼らの力では書庫の扉には傷一つ付けることはできません。

とはいえ奴らはとても執念深い魔物、タケルさん達を見つけるまであそこに何週間でも張り付いているでしょう。」


それは困る。狩りに出られなくなってしまう。



「ならばこちらから打って出ましょう。私とスノウで突入して敵を引っかき回します。

タケルさんは後方から魔法をお願いします。行きましょうスノウ。」


「ウォン!」


エクレールについてきたセフィアルが、無謀な提案をするとスノウと一緒に部屋を飛び出そうとする。


俺は慌ててセフィアルの服の首筋をつかんで止める。


「君たち、よく考えるように、

いくらセフィアルとスノウが素早くてもあの群れの大群に突っ込んでいったら

あっという間に捕まってしまうだろ。」


クール系美少女かと思っていたらセフィアルの発想は、かなり脳筋である。

スノウとは息が合っているようだが。


「では、どうしたら?」


「うーーーん、そうだな。俺に考えがある聞いてくれ。」


俺はとっさに思いついたアイデアを皆に話した。



書庫の扉からスキャン用の赤い光線が、入り口にたむろしているアント族に向かって放たれる。


よしよし、奴ら驚いてパニックになっているぞ、


その隙に扉を少し、人一人が通れる分だけ開けると、セフィアルとスノウがさっと外に出る。

書庫から出るなり彼女たちは、全速力で走り出して、森の中を駆け回る。


そう敵を倒そうとすれば、どうしても追いつかれて囲まれてしまうが、ただ逃げ回るだけなら問題ない。

彼女たちの敏捷性は、アントよりはるかに高いので捕まる心配はない。

彼女たちが書庫の周りを走り回ると、案の定アント達は後を追い始めた。


一方、俺はというと扉の前からアント達がいなくなったのを確認すると、

そっと扉から出て、ピラミッド状になっている大書庫の壁を這い上がる。

壁の傾斜はそれほど急ではないので、覆っている蔦を使えばなんとかなる。


ただピラミッドとは違い、階段上になっておらず一枚板のような斜面を這うように登らなくてはならない。

<確か地球のピラミッドも、造ったときは化粧石で飾られていてこんな風だったんだよな。>


どうでもいいことを考えながら、俺は書庫を覆う蔦に手をかけながら登っていく。

とうか見つかりませんように。


そのまましばらく、おっちらおっちらと登り続けて、なんとか頂上までたどり着いた。



「セフィアル、スノウ、もういいぞぉぉ!」


魔物を引きつけて書庫周辺を走り回っていたセフィアルとスノウに大声で伝える。

書庫の頂上にいる俺に気が付いたアントどもが、一斉に書庫の壁を駆け上がって来る。

数十匹の巨大な蟻がこちらに向かって来るのは見るも恐ろしい。


「来た来た、流星砲!」


書庫の壁に沿って放たれたコメット・ストライクが、登って来るアントの群れを一撃で吹き飛ばした。

アントを蹴散らした魔法の砲弾は地面に着弾、轟音と共に大穴を開ける。


音に反応してセフィアル達を追っていた他のアントたちも方向転換して壁を登って来る。


奴らが頂上にたどり着くのが先か、俺の魔力が尽きるのが先か


「頼むぜ、もってくれよ」


書庫の頂上に向かって次々と登って来るアントたち、

俺は奴らの集団に向かって魔法を打ち続けた。



俺が最後のコメット・ストライクを放つと、残りのアントがまとめて吹き飛んだ。


何発のコメット・ストライクを撃っただろうか。

書庫周辺の地面にはいくつもの大穴が開いている。


「ハア、ハア、なんとか全部倒したみたいだな。」


「凄いです。タケルさん、あんなにたくさんのアントを一人で倒してしまうなんて。」


「一人じゃないさ、セフィアルがよく敵を引きつけてくれたおかげだよ。」


「ウォン、ウォン。」


「ああ、もちろんスノウもな。よく頑張ったな。」


俺がヨシヨシと頭を撫でてやると、スノウは喜んで尻尾をブンブンと振る。

セフィアルがなにやら羨ましそうに見ているが、さすがに同世代の女の子の頭をナデナデする勇気はない。


彼女たちを褒めると俺はアント族の残した大量の魔石を回収するため、頂上から降りることにした。




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