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閑話 天使アーリンの憂鬱

一日の任務を終えて天界の神殿に帰還した天使アーリンは、非常に機嫌が悪かった。

今日、転生を担当した若者、タケル・オオミヤについて思い出すと、どうしてもイライラしてしまう。

神の恩寵により許されるステータス調整をまさかあのような偏った数値にしてしまうとは、


「まったく、不敬にも程があります。」


一日の疲れを癒す入浴も、今日ばかりはあまり効果を期待できそうにない。



「どうしたのアーリン、珍しく機嫌が悪そうね。」


アーリンが下界での穢れを清めるため、浴槽に浸かっていると、

普段の温厚なアーリンとは違った様子を見て、同僚の天使メロントルが声をかけてくる。


「聞いてくださいメロントル。今日私が担当した転生者なんですけど」


彼女が、今日下界で起こったことを話すと


「あははは、何それ。その子、変わってるぅ。」


メロントルは、楽しそうにコロコロと笑う。


「笑い事じゃありません。」


「ごめん、ごめん。でもそれじゃあ、その子とても下界を生き抜けそうにないね。あるいはもう死んじゃってるかも?」


「不吉な事を言わないでください。」


同僚の天使はかなりのお気楽主義のようだ。

メロントルの不吉な言葉を聞いて、アーリンは眉をひそめる。


とはいえメロントルの言う通り、下界での生活はとても厳しい。

大陸内には、人族よりはるかに強力な魔物がゴロゴロといて、冒険者のようなそれなりの能力を持っている者でも、生き抜くのに苦労している。


特に大陸中央に広がる巨大な森林部は、魔素が非常に濃い上に、その魔素を求めて強力な魔物が数多く集まって来るので、一流の冒険者でも立ち入ることさえ困難とされている。


まさか、異世界に来たばかりの若者が、そんな過酷な環境の場所に飛ばされることはないと思うが、それでも人族にとって安全な場所は多くない。


しかしながら転移先については、担当者の彼女でも知ることはできない。

ただ通常は、その者の適正に合った転移先が選ばれるはずだ。

あんなにINTに偏った少年には、どんな転移地が与えられるのだろう。


「やっぱり、魔法王国かマナの湖あたりが順当なところじゃない?

あの辺りは人族の勢力圏だから、きっと大丈夫よ。」


アーリンがタケル事を考えて黙り込んでしまったのを見て、メロントルは慰めるように言う。


魔法王国グランドルは人族有数の大国だし、マナの湖のほとりには魔術師ギルドの研究施設があったはず。


「そうですね。なんとか安全な所に転移していると良いのですが・・・」


いかに愚かな異世界人といえど、自分が担当した者の行く末は気にかかる。

アーリンは少年に不吉なことが起こりませんようにと、信仰する主神に祈りを捧げるのであった。



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