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貴族令嬢の生活



昨日、 よーし!頑張るぞ!! と気合いを入れた私ですがもう既に心が折れそうです。


早朝、エマに叩き起され、湯船に放り込まれ、拒否する間もなく体を洗われ、髪を梳かれ、薄くメイクを施され、家用のドレスを着せられ、形だけはまさしく貴族令嬢となりました。


エマ曰く、本当はずっと前から身だしなみを私が整えて差し上げたかったのですが、お嬢様が乗り気ではなかったので我慢してましたの。今日からは我慢する必要が無くなりましたのね!!!私の仕事ですわ!腕がなりますわね!!と興奮してました。


あ、うん…今までごめんよ…。


そして、身だしなみを整えたあとはダイニングで、お爺様とロレン様と朝食を頂きました。


私の姿を見たお爺様はもう本当にきもちわr…嬉しそうなご様子で、「おはよう、メーシャは本当に可愛らしいね。…お母様そっくりだ。」と仰っていました。まぁ、お母様に似ていると言われるのは嬉しいです。


ロレン様はちらりとこちらを見て、何故か目を見開いて凝視されました後、「おはよう、メーシャ」と微笑まれました。怖かったです。


今日の朝食は、ハニートーストにスクランブルエッグ、紅茶とフルーツ。といったものでした。


貴族だからといってそんな毎日豪華な食事を食べてるわけじゃないのです!

でも、シェフの料理はなんでも美味しいので大好きです。


ハニートースト美味しかった。


朝食を終えたあと、お爺様は公務へ。


お兄様と私はそれぞれの学習へと移るのですが、それが問題でした。


えぇ、確かに、私はお爺様に立派な令嬢になりたいと言いました。


立派な令嬢になるには作法や知識、覚えることは山積みでしょう。昨日の夕食の席で、 『それらの類については私に任せなさい』と確かにお爺様はおっしゃっていましたのである程度の覚悟はしてました。


いや、本当に覚悟してたんですよ?


でも、これは流石に詰めすぎじゃないですか???


午前中にはぎっしりとマナー講座。令嬢としての挨拶の仕方から立ち方、歩き方まで。食事作法に、立ち振る舞い。『覚えることはいくらでもありますのよ。』とマナーの先生が優しいお顔で、私の精神を殺しにかかってきます。先生は30代ほどの優しそうな人です。いや、優しい皮を被った鬼とでも言おうか。


本を頭に、歩いてみれば、

「あらお嬢様、お体が曲がっていますわよ?」

座っている椅子から言われた通りにゆっくりと立ち上がってみれば、

「あら、お嬢様は街娘の真似事でもなさっているの?」

…しかもこれ、わざと言ってるんじゃないの…悪意全く感じないの…純粋な顔で不思議そうに問いかけられるの…。


ゴリゴリと精神を削られながらやっと午前のレッスンが終われば、私はロレン様と2人での昼食となります。

お爺様は公務でお出かけ中ですので、大体毎日、昼食は2人になるそう。事前に言っておけば、別の場所での食事も可能らしいですけど…。


広いダイニングに2人しかいない。


しんと静まり返るので食器を少しぶつけただけで、音が響きそうで恐る恐る食事を取っている。


「午前は何をしていたんだい?」


ふと声をかけられた。

食事の手を止め、答える、


「午前はマナーを教えて頂いていました。…ロレン様は?」


「僕は、今は薬草学を教えてもらっているんだ。」


「…そ、そうなんですか。」


薬草学、毒、ひぇぇぇぇ。

冷や汗が垂れるのをなんとか堪え、その後もぽつりぽつりと会話をしながら食事を終えた。


食事が終われば午後のレッスンが始まる。今日は、基本的なこの国の歴史らしい。正直、前世では世界史も日本史も苦手だったし、殆どやっていなかったので覚えられる気がしない。


この国の王家の成り立ちから、王位の継承、王家の家系図から、戦争、隣国との関わり。などなど、やっぱり覚えられる気がしない。こっちは厳しそうなおじいちゃん先生だった。


「あれ?この人さっき出てきました…?」


「出てきていないぞ」


「あれ?この国さっき滅んだ…。」


「滅んでおらぬ」


いや、だって、なんでみんな名前同じようなかんじなの!?1世だ2世だわからないよ…。この国さっきまでなかったじゃん、いつ出来たのよ…。


先生に呆れられてる気がするけど苦手なものは苦手なんです…。


3時前にはレッスンが終わり、エマがおやつを部屋に運んでくれた。


「お嬢様、お疲れ様です。今日のおやつは桜餅ですよ。シェフの自信作とおっしゃっていましたわ」


この国はいわゆる乙女ゲームの世界なので設定も街も衣装もヨーロッパ風だが、ところどころに和風のものがあったりする。


まぁ、ゲームが作られた国が日本だからね。


だからおやつの時間には和菓子が出ることもあり、和菓子が好きな私にとっては大歓迎である。

まぁ、和菓子には緑茶が会うんだけど、ティーカップに緑茶が入ってるのってなんとなく違和感あるよね。緑茶は湯のみに欲しかった。もう慣れたけど。


「美味しそう…いただきます」


1口ぱくりと口に入れるとふんわりと葉の香りがして甘くて美味しい。

ほっぺが落ちる。


もぐもぐと食べているとエマが幸せそうにこちらを見ている。

どうしたのかと首を傾げると、


「あ、すみませんお嬢様。お嬢様がおやつを召し上がってるのを見るのが初めてでしたので、とても可愛らしくて、つい。」


前まではおやつは運んでもらってもエマは私に気を使ってすぐ部屋から出ていってしまっていた。そして、時間がたった頃に食器を下げに来てくれていたのだ。

思い出すと、急にもぐもぐと食べているのが恥ずかしくなってきた…。


「ふふっ、…こんな日がいつか来てくださるといいと思っていましたの」


エマは私の横に立ちながらニコリと優しく笑った。


「…あの…ありがとう」


「えっ?」


「…私、あんな態度だったのに、だから、今までも…ありがとう。」


なんとなく恥ずかしくなって下を向いてしまう。


「あぁ、嬉しいですわ、お嬢様。そんな事をおっしゃって頂けるなんて。…これからも、私をお側に置いて頂けますか?」


嬉しい。そんな事を言ってくれるなんて。少し照れながらも私も笑顔でエマに笑いかける。


「うん、もちろん。よろしくね、エマ。」


「改めてよろしくお願いしますお嬢様。このエマ、何があろうとお嬢様のためにお仕え致しますわ」


どうしてここまで言ってくれるのだろうと少し不思議に思ったが、素直に好意を受け入れることにした。私はこの屋敷でずっと1人だと思ってたけど、違ったのね。ありがとうエマ。


その後、エマとお話をして、おやつを食べ終わると、私は自由な時間をもらった。おやつのあとから夕食までは自由に過ごしていいらしい。

でも特にすることも思いつかないので、部屋にある本を読んでみたり、刺繍をしてみたりし、エマにも仕事があるから1人で時間を潰した。



「メーシャ、今日はどうだった?」


お爺様が帰ってきて、また3人で夕食を取っている。

夕食のメニューは少し豪華。相変わらず美味しい。


「そうですね…今日は基本的なマナーを教えていただいたのだけれどとても難しいです…」


「ふふっ、そうか。きっとすぐに慣れるだろう。メーシャのペースで覚えていけばいい」


や、優しい…!お爺様、メーシャに少し甘すぎです…!


でも本当に難しかった。これで基礎か?と思うほど難しかった。引きこもっていたつけが回ってきた感じです。


「ロレンもかわりないか?」


「はい、お爺様。薬草学はとても興味深いですね。」


「そうだろう、私も若い頃は薬草学にせいを出していたよ。」


毒薬マニアの遺伝子はここからか……。


「そうだな、もっと詳しく知りたければ薬草学の担当の者に話を通して、アルに少し、薬草を分けてもらうといい。」


と、ロレンに話している。


「アル…?」


「あぁ、メーシャには紹介していなかったね、庭師をしてくれているアルフォンスという男がいるんだよ。大抵庭には、彼とあとセディという見習いの青年がいるからね。」


もし、時間があったら庭に行ってみたらいい、とても綺麗なところだよ。と、教えてくれた。


その後も、シェフの名前とか、昔からいる使用人たちを教えて貰った。何か困ったことがあったら相談するといいと。

沢山いすぎてほとんど名前を覚えられてないけど…。


食べ終えた後は、食後の紅茶を頂き、少しお話をした後、仕事がまだ残っているからと席を立ったお爺様に続き、復習をするからとロレン様も部屋に戻ってしまった。

私も大人しく部屋に戻ることにした。


部屋に戻ったあとはエマに世話をされながら入浴を終え(1人で入れると言ったが聞き入れてもらえなかった)、肌にいいという液体を全身に塗りたくられたあと、髪を梳かれ、やっとベッドに入ることが出来た。


疲れた。普段なにもせずに部屋に引きこもっていた私からしたらかなりの運動量だし、活動量である。

明日、変なところが筋肉痛になってないといいなぁ、と思いながら意識を手放した。



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