ゴブリン救済編 後編
白髪の少女の正体とは
オークの体内から突然発生した竜巻は、周りのオークを飲み込み突風と共に消え去った。
竜巻に飲み込まれたオーク達は塵も残さず消え失せ、ただ白髪の少女だけがそこに立っていた。
「一体何が起こったの?」
驚きと同様を隠せないラピスそして少女はこちらへ振り返った。
「もちゆぺなの?」
その少女は白髪ツインテールで何故かパンダのパーカーを着ている。そして何故か懐かしい雰囲気をかもし出している。
「待ってて。今終わらせるから。」
少女はラピスに微笑みかけた。
「数は多分六千くらい絶滅はダメだからだいたい600は残したい。とりあえず範囲魔法でどのくらい削れるか試して見るのが妥当だな。」
「魔法陣展開」
右手を横に広げると共に背後にとてつもなく大きな魔法陣が現れた。
「我もちゆぺの名において発動する。世界の理を無視し我の思うがままの力をそこに示せ!」
魔法陣が光始め超巨大な炎の塊が現れた。
「極炎魔法 炎帝爆雷」
もちゆぺはオーク軍の方に手を向けた。
その刹那超巨大な炎の塊は音の速さを超え気付いた時にはオーク軍の中心に落ちていた。
しかし想定外の出来事が起こった。
威力が強すぎたのだ。
炎帝爆雷は半径2キロメートルを無に帰し大きな大穴を地面に作ったのであった。
ーやりすぎたーーーーとっさにわっしとラピスは防御魔法で守れたけどオーク絶滅したかもしれない。ー
これにはもちゆぺも苦笑いである。
ラピスは驚きのあまり口を開けたまま硬直している。
遠くをよく見ると辛うじてオーク達が少しだけ生き残ってるのが見える。
「け、計算どうり!」
とりあえずラピスにピースしてみた。
「ちょっ!ちょっとやりすぎよ!死ぬかと思ったじゃない!てかその姿は何なのよ!」
「オークに食べられた時に世界樹の声が聞こえて気が付いたらこの姿に、、、」
自分の姿を再確認した。
「ってわっし女の子だったの!?」
「え!!!今頃!?」
2人が話していたその時
目の前に通常のオークのサイズの2倍はある大きさのオークが攻撃を繰り出していた。
ー完全に気付くのが遅れた!てかいつの間に現れたんだよ。ー
その時世界は止まった。
正確にはもちゆぺの思考速度が超高速化したのだ。
ー世界が止まったように感じる。いや止まってる?もしこの止まった世界で動けるとすればそれは最強何じゃないか?ー
そしてもちゆぺの世界だけ時が回り始めた。
「えっ!?動ける!そうか自分の今の思考速度に対応する自分を想像したことによって魔法が発動したのか!」
オークギガスの周りを一周し、オークギガスの腹になんとなく触れてみた。
その時
オークギガスの腹はだんだん凹み始め、オークギガスに触れたもちゆぺの腕も後ろに交代しはじめた。
そしてもちゆぺの体も速度に耐えれなくなり始め体が言う事を効かなくなり始めた。
「まずい!速度に対応する魔法が発動したけどそれに耐えれる体じゃなかったんだ!」
後退し始めた腕を切り離しもちの姿に戻った。
時間が動き始めた。
「「ドンッ!」」
もちゆぺが切り離した腕は木端微塵に弾け飛びもちゆぺは壁に叩きつけられた。
そしてオークギガスの腹は弾け飛び大きな穴が空いた。
「痛たたた。反動大きすぎだろ。二度とあんな技使うもんか!」
弾けたオークギガスに近ずいたその時、とんでもない速さで修復し始めた。
「え!?」
すかさず後ろに後退した
3秒後完全に修復を完了させた無傷のオークギガスが目の前に現れた。
「嘘だろ。どうすれば倒せるんだよ。」
もちゆぺは再び人の姿になろうとしたがどうしても人の姿になれない。
人の形を形成する程の餅量を今のもちゆぺは持ち合わせていなかったのだ。
そうこうしているとオークギガスが殴りかかってきた。それを交わしオークギガスの拳はもちゆぺの後ろにある壁を消し飛ばした。
ーあんなのくらったら物理攻撃無効とか関係無しに消し飛んじまう!ー
すぐさま距離をとったがオークギガスの追撃は止まらない。
もちゆぺは間一髪のところで交わすのが精一杯である。
ーこうなったら一か八か!ー
距離を取り振り向きざまに魔法を発動した。
「フリーズショット!」
30センチほどの冷気をまとった氷の塊が打ち出された。しかし全く別の方向に飛んでいってしまった。
もちゆぺは餅の姿だとまともに狙いが付けられないのだ。
ーこれは本気でピンチだ。ー
ー 人の姿を形成する程の餅量になるまでに少なくとも2時間はかかる。このままだといずれ攻撃に当たってしまう。ー
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ーゴブリンの村ー
「やっぱりあの餅この村を見捨てて逃げたんだ。世界樹の勇者がお餅なわけなかったんだ。」
落胆するゴブリン達。うつむき最後の時を待つような思い出各々の家に帰ろうとした時それは起こった。
遠くオーク達が住むと思われる谷で今までに見た事の無いような爆発が起きたのだ。そしてその衝撃はゴブリンの村にも届いていた。
「なんだ!今の爆発は!!」
「もしかしてあいつは1人で戦いに行ったとでも言うのか!?」
「ありえない!あんな餅がオークに勝てるはずがない。」
ゴブリン達は少しの希望をいだきはじてめいた。
逃げたと思っていたお餅が1人戦っているのかもしれないという無謀にも見える思い。
しかしあの爆発を起こしオーク達を圧倒しているのかもしれないという希望。
色々な思考が目まぐるしく回り始める。
そしてそれに終止符を打つ者が目の前に現れた。
「あんた達!これを見なさい!」
ゴブリン達の目の前に突然現れたのはラピスであった。
そしてラピスがとった行動はゴブリン達にもちゆぺの姿を見せるという行動であった。
「投影魔法 精霊達の眼!」
ゴブリン達の目の前に大きな映像が浮かび上がった。
それはもちゆぺがオークギガスと戦う姿。
そして爆発の正体オーク軍を消し飛ばしてできた大穴であった。
「もちゆぺは正真正銘勇者よ。あなた達を救う為に本気で戦ってるの。きっともちゆぺがあなた達を救ってくれる。だから信じなさい!」
ゴブリン達のささやかな希望は大きな希望に変り祈り始めた。
「どうかあんたが逃げたと思っていた俺達を許してくれそしてどうか俺達を救ってくれ!世界樹の勇者様!」
ゴブリン達の祈りは願いに変りそして信仰に変わった。その信仰は勇者のものであり世界樹の物である。それは力に変わる。
「世界樹に届きし信仰は勇者への力へと変換される。」
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ーまずい。こいつどんどん動きが早くなってやがる。捕まるのも時間の問題かもしれない。ー
とにかく逃げ回っていたがどんどん攻撃の距離が近くなっている。
「普通の魔法がダメなら範囲魔法だ!くらえ!幻惑のシャドーボックス」
縦横20メートルほどのでかさの黒い箱がオークギガスを包み込んだ。
ーよし!これで距離を取れる!ー
喜んだ束の間シャドーボックスは破られオークギガスの一撃が迫ってきた。油断していたもちゆぺはこれを交わすことは出来ない。
その時
もちゆぺを青白い光が包み込んだ。
オークギガスの拳はもちゆぺを包む光に弾かれ後ろに後退した。
「世界樹の加護が発動しました。世界樹への強い信仰により信仰力を勇者への力へ変換します。」
みるみるうちにもちゆぺの身体は元のサイズへとでかさを取り戻し、オークギガスを倒すべく人の姿へと姿を変えた。
「一撃でかたをたけてやる。」
両手の手のひらに魔法陣を展開し魔力をためる。その魔力は赤と青に変り炎と氷を生成した。しかしその両方はでかさに似つかないエネルギー量で一撃でここ一体を消し飛ばせそうな力を感じる。
「二度と生き返るんじゃねぇ!氷炎魔法フリージングフレア!」
もちゆぺは一回転するほど勢いよく炎の玉を投げその遠心力を使いさらに強い勢いで氷の玉を投げ込んだ。
先行する炎を追撃するかのように氷と炎が混じり合いオークギガスめがけ飛んでいく。
その魔法が通過した場所は世にも珍しい燃え盛る氷が咲き乱れたのだ。
フリージングフレアはオークギガスに直撃した。
そしてその炎はオークギガスを包み込み氷はその炎とオークギガスを包み込んだ。
氷の中で燃え盛る炎。氷の中の灼熱に焼かれるオークギガス。
その氷は決して溶ける事は無い。中の者が確実に死ぬまでは。
世界の理を完全に無視した不死身殺しだ。
これをくらったら最後。逃げる事は出来ない。
「勝った。勝った!!!」
もちゆぺは空に両手を突き上げ喜びそのまま後ろに倒れ込んだ。
「もちゆぺーー!!」
倒れたもちゆぺにすぐさま駆け寄ってきたのはラピスであった。
その顔は喜びと涙でいっぱいであった。
「もう!!!死んじゃうかと思ったじゃない!でも良く倒したわ!あんたはほんとの勇者よ!」
世界樹の書を開いたラピスがもちゆぺに見せたのはオークギガスであろう名前が書いてあった場所その文字は既に消えており完全オブジェとかしたオークギガスは死んだと見なされたのだ。
「ラピス喜ぶのはまだ早いよ。わっし達の目的は生態系を守る事。ゴブリンとオーク2種族を脅威から救ったとしてもこのままだときっと絶滅してしまう。2種族ともほとんど食料がないんだ。」
「確かにそれは不味いわね。そしたらこれからどうするのよ!」
もちゆぺはにやりと頬を和らげた。
「実はいい考えを思いついてるんだ。」
と言って指差したのは大穴であった。
ゴブリン編次で完結します!