ヒーローと探偵――10.届かない
推理小説に出てくる探偵ではない僕たちに出来ることは、推理ではなくて、仮町を探すことだった。事件が起こるのを待って解決に導くのではなく、ただ単純に仮町を探して話をして、真相を聞くという手段しか選べなかった。
だから僕たちは必死になって、日が沈んで辺りが真っ暗になるまで探し続けた。
梨花は仮町の行きそうな場所を頭を抱えて絞り出し、僕は仮町と行った場所をところかまわず探し続けた。
しかし、結果として見つけることは出来なかった。
「仮町の家にはいったの?」今更ながら梨花に聞いた。
「うん、でもいなかった」
「仮町はどこに住んでいるんだ?」
「学校近くの家に、一人で住んでるよ」
高校生の一人暮らしというのが実在するとは……。最近のライトノベルみたいだ。
「でも、最近になって一緒に住もうって言ってくれてる親戚が増えたみたい。ほら、春ちゃんの手術が決まったから」
「今までは断ってたの?」
「春ちゃんから離れるのが嫌だったみたい」
なんだよ。あいつやっぱり妹が好きなんじゃないか。しかしそのことを茶化す気にはならなかった。当然のことだけど。
僕たちはその後帰り道で仮町を見かけたら絶対に気づけるようにしながら、少しだけゆっくりと歩いていった。