ヒーローと探偵――9.役割
結局僕は何も思い浮かばず、時間だけをどぶに捨てた結果となった。貴重な勉学の時間を無為にして行われた推理は、無駄な努力となった。
ため息をついて鞄を持ち、人の流れに従って校門を出ると、ピンクのスマートフォンを神妙な面持ちで見つめる梨花がいた。
「どうかしたの?」その深刻そうな雰囲気が気になり、僕は思わず声をかけた。
「私もひーくんに電話をかけてみてるんだけど繋がらないの。今日学校にも連絡なしで休んでるみたいだし……」
彼女の声は不安に満ちて、悲しそうに震えていた。僕はそれをどうにかしたいと思った。無謀にもそんな気持ちになった。自分にそんな力がないということぐらい、先の一件で気づいているのに、僕の感情は止まらなかった。
「大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」梨花は明るく笑って言った。
しかし、その笑顔がやせ我慢だということくらい、嘘を見抜く才能のない僕でも分かった。多分僕は、彼や彼女と出会って、潟元夫妻とも触れ合って、人のことを理解できるようになってしまったのだ。
僕には不要だと思っていて、傷つかないために持たないようにしていたものを、僕は持ってしまった。
「僕に出来ることを」だから僕は「教えてくれないか」どうにかしたいと思ったんだ。