表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
探偵とヒーロー  作者: はち
34/65

地球の重力と彗星の引力――3.無重力の謎

 放課後、僕が意味もなく泣いている謎に興味を持った仮町が、少し話をしようと教室に入って来た。僕はその時帰る準備をしている真っ最中で、特に用事もなかったのでそれを受け入れた。

 話題は早速事故の時の話になった。


 僕は出来るだけ詳細に事故のことを話した。車と車の正面衝突が起きて、後部座席の僕は宙に浮き、無重力を体験したことを。


「無重力……ね」なぜか意味深に仮町は呟いた。


 昔重力とは何かを考えたことがある。小さい頃だ。多分七歳くらいの時で、結局はどういう原理で地球の上に立てているのか分からなかった。


「重力は愛の力だ」得意げな顔で言う仮町だった

「だからかもな」脈絡もなく仮町は言った。なにが、だから、なのか分からない。

「どういうこと?」

「だからお前は、事故のことを思い出すと悲しくて泣いてしまうのかもしれないな。重力は愛だから」


 仮町が言いたいことが何なのか僕にはよく分からなかった。彼が何かを引用するときはすぐ分かるけれど、彼が彼自身の言葉を言うときは僕には理解できないことが多々あった。


「どういうこと?」分からないときは質問する。大切なことだ。意味不明でもとりあえず聞いてみる。

「事故の瞬間、お前は無重力になったんだろ?つまり愛を失ったんだ。だから悲しいのさ」


 そう言われたときは、彼の戯言を笑ってやろうという気持ちだった。いつも通り、下らない冗談を笑い合う友人同士のように。けれど、その次に浮かんだ疑問が僕の笑顔をかき消した。


「でも僕はその時、嬉しかったんだ。事故の瞬間、嬉しかったんだ」


 今まで朧気だった記憶が、少しずつ鮮明になり、思い出せなかったことが思い出せてきた。

 そうだ、僕は事故のことを思い出すと嬉しくて泣いてしまうんだ。

 けれどその結論は、新たな謎を生んだ。

 どうしてあの時僕は、嬉しかったんだろうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ