14/65
姉弟と事件
ここから第二章となります。
家族の定義を考えたとき、僕の思考は止まってしまう。血の繋がりや遺伝子の情報を定義に挙げてしまうと、僕を今育ててくれている潟元夫妻を否定してしまうことになる。
ならば過ごした時間はどうだろうか、と考えるが、潟元夫妻と過ごした時間は六年と少しだけだ。その前にお世話になっていたあの片桐家での時間と二年しか変わらない。定義としては曖昧すぎる。
だから僕の思考は停滞する。そしていつも諦める。そんなものは存在しないのだと思うことになる。
だから僕は答えを後回しにして、潟元夫妻との関係を曖昧にして、のらりくらりと生きている。多分誰かに咎められ否定されれば、反論することも出来ないだろう弱い生き方だ。
そして、そんな風に考え事をしていると、彼女のことを思い出す。血の繋がりとか遺伝子とか時間とか、そういうものをひょいと飛び越えて、軽々と定義や論理を超えた答えを出した彼女のことを思い出す。
思い出すと僕は語りだす。目の前で眠る少女に向かって、丁寧に、ゆっくりと、囁くように話し始める。