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探偵とヒーロー  作者: はち
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酸素とアルゴン――11.間黒男

 翌日の放課後、僕は更衣室に向かう雀ちゃんを見つけ声をかけた。


「雀ちゃん、やっぱり謝るよ。盗撮したの僕なんだ」雀ちゃんは呆気にとられ声も出せないでいた。

「僕は君みたいな華奢な女の子に欲情する質なんだ。あの日僕は君を見つけて、名前も知らない君の裸を撮りたくなったんだ」なぜかすらすらとそんな台詞が出てきた。これが僕の本心でないことを祈るばかりだ。


 そして変態による変態の為の変態的言葉を聞いた雀ちゃんは、目に涙を浮かべ、茹でだこの様に顔を真っ赤にして僕の頬を引っ叩いた。ぱしいん、と良い音が鳴った。

 僕は叩かれた頬を擦りながら、逃げるように廊下を走っていく雀ちゃんを見ていた。そしてそんな情けない僕を、後ろで仮町が見ていた。


「酔狂だなお前も」にやにやと笑いながら言う彼は少し嬉しそうだった。

「いたなら言ってくれよ。恥ずかしいところ見られちゃったな」まだ頬が痛くて呂律が回らなかった。

「恥ずかしくはねえだろ、ああすれば確かにあの二人にとっては一番いいだろうな」


 多分仮町も、僕が犯人になってしまうことを、いの一番に思いついていたのだろう。しかし僕が犠牲になるというこの案は、言いづらかったのだ。


「でもまさか引っ叩かれるとは思わなかった」

「まあいいじゃねえか。これで二人の友情は壊れずに済んだんだからよ」


 僕はそう言われて考えてしまった。これで良かったのだろうか、と。

 思いは伝わらないまま、想いは募り、重くなっていく彼女たちは、幸せになれるのだろうか。


「僕のしたことはただの先延ばしで、延命で、意味のないことだったんじゃないかな」


 僕は零すように不安を言った。仮町は笑って答えた。


「そんなこと言ったら、生きることだって意味のないものになっちまうじゃねえか。生きるつうのはつまりただの先延ばしで、延命だろ?でもだからこそ、意味のあるものにしようって生きてんだろ?」


 昔、ブラックジャックが言った台詞を思い出した。


「それでも私は人を治すんだ」僕が目を閉じて、陶酔するように言うと、仮町は呼応するように「自分が生きるために」と言った。


 にんまりと笑う仮町を見て、僕も笑った。


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