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探偵とヒーロー  作者: はち
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酸素とアルゴン――9.お決まりのやつパート2

 僕が何をすべきなのか悩むのは間違いだった。僕はただどうしたらいいのかを、回答を求める人間に聞けばよかったのだ。

 そういう考えに至り、僕は放課後に園圭美代子のいる教室に出向いた。


「やあ、今大丈夫かな?」偶然にも教室には美代子ちゃんしかいなかった。誰かが仕組んだかのような展開に僕は運命を感じた。


「ちょっと話したいことがあるんだけど」僕が言葉を続けると、美代子ちゃんは見るからに不機嫌な顔になる。


「何よ、雀が謝らなくていいって言ったんでしょ?もう事件は終わったのよ。それともなに、私に謝って欲しいとか?」不敵な笑みを浮かべ、挑発するように美代子ちゃんは言った。


「謝ってもらおうなんて思っていないよ。ただ、確認したいことがあっただけさ」


 僕は美代子ちゃんに近づいて、話を続けようとした。しかし、どう話していいのか分からなくなった。そもそも人と話すのが苦手なのにこんなことをするべきじゃなかった。でも後悔してももう遅い。僕は踏み出してしまった。この足を引っ込めることはできない。


「顔が見えた距離なのに、犯人の顔が見えなかったと雀ちゃんが言ったのは、見えた顔の人物が犯人だとはとても思えなかったからだ。犯人がガラケーを使った理由は普段使っているものだと、友人に写真を見られてしまう可能性があったからだ。携帯画面を見せるとき、うっかり撮った写真を見られたりする可能性があったからだ。だから普段使わない、昔使ってたガラケーを使ったんだ」

「ちょっと、なに急に語りだしてんのよ。意味わかんない!」


 僕が話していると美代子ちゃんは慌てふためき、感情を爆発させるように怒り始めた。


「あ、そっか、いきなり話してもそうなるよね。でもなあ、僕いわゆるお決まりのやつって恥ずかしくて言いたくないんだ」


 全員を一か所に集め、殺人者もその中にいるのにも関わらず、だらだらと推理を披露する探偵を頭の中に思い浮かべた。僕はずっと、物語の中のそんな探偵を馬鹿にしてきた。もっと緊迫感を持てと、何を格好つけているんだと、そう思ってきた。けれど、人に推理を披露するときは、ああやって順序立ててゆっくり説明することも理にかなっているのかもしれない。

 とにかく、失敗した僕は、挽回としてあのセリフを言わなければいけないだろう。


「犯人は君だ」


 僕は美代子ちゃんを指さしてそう宣言した。誰も見ていないとはいえ、恥ずかしいことに変わりはなかった。


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