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脱走をしよう

「ぅわ……うーん……」


 俺は窓から差し込まれる光で、目を覚ます。

 窓の外にあるかなりの高さの時計台を見てみると、針は18:46を示していた。


 もうすぐ夕食の時間だ。

 俺は時間ギリギリまで、上限の10個まで時限爆弾を創造して、食堂に向かう。



 100人は入るだろう食堂には、クラスメイトの何人かが既に長椅子に座って喋っていた。

 俺は適当に空いてる所に座る。

 テーブルには所狭しと料理が並んでいる。

 料理漫画で見るような、鳥の丸焼きや豚のやる焼き。

 パイナップルを輪切りしたものと、メロンを等間隔に切ったものなど、沢山のフルーツがあったり。

 

 確かに凄い豪華で、俺には食べ放題とかでしか見た事がないほどに、美味しそうな料理がテーブルを埋め尽くしていた。


「よぉ、りきとぉ――って、おい待てェや!」


 鬼木が俺の隣に座ろうとしたので、俺は無言で席から立って他の席に移った。

 鬼木はまだ俺に向かって、何やら叫んでいる。

 

 それを注意している女子――学級委員長の水端みずばた夕凪ゆうなが、鬼木を「静かにしなさい!」と注意している。

 委員長の気迫に臆する事なく、鬼木は「あぁん!? ぶっ殺すぞ委員長野郎!?」と、女子にも容赦ないようだ。

 それを止める苦労人な鬼木の友達2人。

 委員長のお陰で、俺は鬼木の意識から離れたようである。

 ナイス委員長。

 

 まぁまぁ笑える光景を見ながら、俺は食事が始まるのを待つ。

 

「やぁ、理希人君」


「ん? あぁ、お前か」


「僕じゃダメかい? ――隣失礼するよ」


 白王子君は、俺が座るなと言う前に座りやがった。

 ま、別に此奴なら鬼木よりはマシだが。


「考えたんだ……」


 白王子君は突然、いつもの優男イケメン顔から一転して、真面目な顔になる。

 それに合わせて、俺も耳を白王子君に向けた。


「僕はやっぱり、君の考えは否定させてもらうよ」


「そうか」


「でも――」


「?」


「君の――理希人の意見には、確かにと思える節もあった」


 白王子君はそう言って、ニコリと笑った。

 白王子君が笑うと、周りで俺達2人をチラチラと見ていた女子達が「キャー!」と、何やら黄色い声を出している。


 いや、俺を呼び捨てにしないでくださいよ白王子君。

 別に君とあまり仲良くないよね? ね?

 なんて言えずに、俺は「そうか」と返した。

 

 白王子君はそれだけを言いに来たのか、いつもの取り巻き美少女3人組白王子親衛隊ファンクラブ会員番号1、2、3の元へと帰っていった。


 すると、姫様が豪華な椅子から立ち上がり、


「勇者様方!」


 と、皆に聴こえるように大きな声を出して、皆の注目を集める。

 どうやら食事が始まるようだ。

 姫様がグラスを持つように促した。

 皆は思い思いに手にジュースや軽いお酒の入ったグラスを、手に持って、姫様を見る。


「今宵の食事は、運命の食事でございますわ。この日より、私達は立ち上がるのです! 魔王を倒しましょう! ――乾杯!」


『乾杯ッ!!』


 皆が一斉にグラスを持った手を上に掲げて、宴が始まった。

 それぞれ前の時からのグループで食べたりだとか、ここに来てから初めて喋って仲良くなった人と食べたりしている。


 因みに俺は1人だ、別に寂しくはない。


 俺はフォークでローストビーフを食べる。

 無駄なタレを付けずに塩で味付けをしてるのか。素材そのものの味を壊してなく、とても美味しい。

 口に入れた瞬間、薄くスライスされた肉が溶けるように無くなり、舌に旨味が広がる。

 上手い食レポはやっぱりできない。いや、そもそもする意味はないか。

 今だけは、食事を楽しむとしよう。


 

 ■■■


 

 その後、肉や野菜、フルーツにパンを沢山食べて、俺は早々と食堂を出た。

 少し残念だったのは、あたりまえだが米が食べれなかった事。


 抜け出そうとした時、最初は怪しまれるかな? と思っていたが、意外と大丈夫だったみたいである。

 入口に待機している兵士の人に、「俺はもう眠たいので、先に休ませていただきます」と言うと、快く通してくれた。


 そして今、俺は自分の部屋に一旦戻ってから、食堂から帰る途中に部屋に侵入して借りた、肩に下げるタイプのバックにタイマーをセットした時限爆弾を詰め、同じく拝借した仮面――目だけを隠せるタイプの――を装着し、闇に身を隠せるだろう黒いローブを羽織って、行動を開始しようとしていた。


 窓から時計台を見る。

 針は19:25を指しており、時間はまだあるようだ。


(良かった、まだまだ余裕だな)


 設置する場所は、俺の部屋に2個。

 女子の寮――陽の部屋から遠い場所――に1個。

 王座の間に1個。

 中庭に1個。

 

 あとの5つはのちに、だ。


「さ、やろうか」


 闇に潜んだ俺は、走り出した。

 できるだけ足音を出さないで、できるだけ速く。

 時間は多いようで少ないのだ。 


 

 ■■■



「はぁ、はぁ、はぁ――疲れた……」


 5つの時限爆弾を設置し終えた俺は、王城入口付近の茂みに隠れて休憩をしていた。

 腹時計によると、あと30秒で爆発するはずだ。


 俺は門を見た。

 門には警備が6人ほどいる。でも、あんまり職務をちゃんとしていない様子。

 お喋りをしている者。欠伸をしている者に寝ている者までいる始末。

 これじゃあ俺の獲物・・になってしまう。


(あと5秒……3秒……1秒――!)


 ドガーンッッ!! 


 大きな爆発音が、城内、城外に大気を切り裂くように響き渡る。

 

 耳を塞いでも聴こえるその爆音に、俺は顔を顰めた。


「な、なんだ!?」

「何が起こってるんだ!?」

「近くで大きな音が! 行くぞお前達!」

『おぉぉぉぉぉ!』


 よしっ。兵士が皆、爆発のした方へ走っていった。


「ハハッ。バーカ!」


 知らないとはいえ、バカな兵士達を嘲笑いながら、俺は最後の仕事を始めた。

 門の色んな所に時限爆弾を置いたのだ。

 これでもし、俺に追手がやって来ようが暫くの間は時間を稼げるはずだ。

 

「じゃなあ! 皆!」

 

 時限爆弾の爆発まであと20秒。

 早くしないと俺は5つの爆弾にやられてしまうので、急いで門を潜って街まで続く長い石階段を下りていく。


 どうやらこの大きな城は、山に沿うように建てられた城のようだ。

 その為、防衛面ではその防衛力を発揮するだろうが、下りる時は物凄く不便である。


「クッソ! ってうわッ!」


 その時、門に仕掛けた時限爆弾が爆発した。


 もうすぐ爆発するって知っていても、やっぱり爆発音は結構ビビるな。

 

 俺は階段の下を見る。

 下には門がなく、警備もいない。

 つまりは通りたい放題。


 俺は階段を下り続ける事10分。その何もない所を通り、街の中に入っていった。


 時間はもうすっかり夜なのに、街の中は人は行き交い、酔っ払いたちが楽しそうに肩を組んで踊っていたりだとか。

 楽器を演奏している者達が沢山いたりと、静かな城とは打って変わって街はうるさい。

 でも、この賑わいを見ていると、なんだか不思議と楽しくなってくる。


(いい所だな)


 やはり異世界。

 現実世界より法整備は整ってないのか、街の人々はやりたい放題である。

 例えば、路上で裸で寝ていたりだとか。

 石を空に向かって投げている奴までいる。 


 そんな街を歩きながら、俺は考える。


「これからどうしよっかな? とりあえず、ここにいたい気持ちもあるが、この国から出ないといけないしな」


 明日には俺は死んだ身となっているだろうから、そんな俺がここにいたらヤバイよな。

 だから、この国から出て他の街で冒険者でもやろうかな、なんて思っていたりする。


「まぁ、今は安宿でも探すか」


 運がいい事に、ローブの内ポケットには金貨が1枚入っていた。

 これで今日の所は休む事ができる。

 

「お、あそこは宿じゃねぇか?」


 俺は前方に、やすらぎの宿と書かれた看板を見つけた。


 何故こちらの異世界言語を理解できるかというと、俺達は勇者として強力な魔法使いの魔力を沢山注がれた魔法陣で召喚されたため、こちらの言語を理解できるらしい。

 そう、クールが言っていた。


 多分だが、魔法陣にそういう設定・・をしていたのだろうと、俺は思う。


「――っと、ついたな」


 人混みの中をたまに肩をぶつけながら、掻き分けて進んでいくと宿の前についた。

 陽気な街の人は、肩がぶつかったくらいでは怒らないみたいだ。

 当たっても普通に「すまんな〜」と、言ってどこかへ去っていった。

 

(やっぱりいい街だ)


 俺は宿に入った。

 宿の中に入ると、まず見えるのは受付カウンター。

 内装はちゃんと掃除をしているのだろう、木造だが綺麗にされている。

 

 俺はカウンターに近づいて、店番をしている少女に話しかけた。


「すいません、1泊したいんだけど……」


「はい、1泊ですね。個室ですか? 相部屋ですか? 相部屋の場合は安くなりますが、ある程度距離はありますけど知らない人の横で寝なくてはいけませんが」


「えっと、個室でお願い」


「わかりました。朝食はどうしますか? 食べていかれますか?」


「あ、はい。お願いします」


「かしこまりました。それでは銀貨1枚になります」


 銀貨1枚か。どれくらいの価格なのだろうか?

 1万円くらいだろうか?

 

 俺は金貨を1枚取り出し、手渡した。


「金貨1枚お預かりします。大銀貨1枚と銀貨49枚のお釣りとなります。ご確認を」


 俺は少女の手からお釣りを貰う。

 なるほど、大体ではあるけれど、値段がわかってきた。


「それでは2階の203号室になります。おやすみなさいませ〜」


 少女から鍵を受け取ると、俺は奥にある階段を上がって、203号室のドアを貰った鍵で開けて中に入った。


 部屋の中は、王城の寮より物が少ない。

 木のベッドに布団を敷いたものと、その上に掛け布団。

 木の机と椅子。

 そしてトドメの蝋燭。

 

(別に文句はないけどさ)


 俺はする事もないし、今日は色々と疲れたのでもう眠る事にした。

 昼に寝たけど、意外とすんなり寝れそうである。


「明日は……とりあえず、ステータスの確認から始めるか」


 俺は綺麗な輝く星を見ながら、眠りについた。

 

 



 




 

  

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