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龍の生まれる国  作者: るるる
第一部 王城の龍 王都
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王都-004 黒ずくめのサテンは、ララルーアの馬車を降りる

黙って二人の様子を眺めていた、黒ずくめのサテンは、ララルーアが馬車を降りると優雅な動きで降り立った。これが、つい最近まで山で暮らして、馬車に乗るのは初めだと言った男だとは誰も信じはしないだろう。実際、ララルーアも信じられずに、どこか薄気味悪いと思ってた。


ただ、龍にはこのくらいの不気味さがあってもいいはずだ、と思ってもいた。だから、これこそが龍の条件だと、資金を出して村を買収し、男を買って来たのである。そう、まさしく、ララルーアは、村にお金をやって男を買って来たのである。男に帰る家はない。


村の外れの山の入口に住む、影のある男は、村の治療師の手で薬と引き換えに売られてしまっていたのである。チェシェ村には、サテンと言う名の男はいない。昔からいなかった、と言うことになっている。村長が管理する書類の上でも、そんな人間はいないことになっている。口に出して名前を言う者もいない。それが、薬を引き渡す条件だった。


ララルーアは安心なはずだ、と思った。身元がばれることはない、と。この男の怪しさは、普通の人間には出せない。そう思うと、ララルーアは安心できた。また、どうせ、何かやってあの村に流れ着いただけの男だろう、とも踏んでいた。


馬車に乗ったことがない田舎者だと言うのも嘘に違いない、と思っていた。ララルーアが危惧すべきは、村に流れ着く前に顔が知られていないかどうかと言うことだった。


ただ、不思議なことに、この男は、本当に二十年以上昔から、あの村に住んでいたらしいと言うことだった。村の外れの小屋に親に連れられて移り住み、その後、村を出たことがないと言うことだった。実際、男の住んでいた小屋には、古びた子供のおもちゃがあった。そんな子供のおもちゃを置いてごまかして芝居がかった作り話だ、と思うのだが、どこか奇妙な感じがする。なぜだろう、と思うのだが、ララルーアには分からなかった。


三人は、馬車を降りて玄関に入る。サテンは、玄関扉を抜けて、ピンクの絨毯の上に立って見上げた。正面には階段があり、途中に踊り場がある。そこに、腹の出た男が、サイズの違うかつらをかぶって立っていた。


白い巻髪の鬘にかけた粉が肩や鼻に落ちていて、どこか滑稽な雰囲気を醸し出す。付きだした分厚い下唇を何度も舌で濡らし、のぼってくる女主を腰砕けになりながら見下ろしている。男の後ろには、まるで隠れるような及び腰で、神経質そうな細い男がステッキを握りしめて見下ろしていた。


二人は、待ちに待ったララルーアが戻ってきて喜んでいるはずだった。自分達に黙って勝手な事をして、と文句を言いに来たつもりらしい。しかし、堂々とした恰幅の良い女が、美しいドレス姿で、裾を鮮やかにさばきながら登ってくると、怖気づいてしまったのか何も言えなくなってしまう。


「マゼラッセ男爵殿。わざわざ訪ねてくれてうれしいわ。テス子爵殿も、お待たせしてしまってごめんなさいね」

と言ってララルーアは笑みを浮かべた。爵位には力を込めて、自分が王の力で買ってやったと思い出させるような口調で呼ぶ。二人の顔はこわばった。ララルーアは、

「何か御用があっていらしたのでしょう? ちょうど良かったわ。わたくしも、お二人に紹介したい方をお連れしましたの」

そう言って、二人をじっと下から見上げ、両手を広げた。びくりと二人の肩が動いた。が、ララルーアは嫣然と微笑みながら、

「さあさあ。それより、わたくしが帰ってまいりましたのよ? 喜んでくださらないの? 田舎の管理は本当にいや。地方ののんびりした優雅な旅なんて、全くの嘘よ。何と言っても埃っぽいのですもの」

と言って、階段を昇り終わる。


すると、男二人はぎくしゃくと言う音が聞こえてきそうなほどぎこちなく、ララルーアの頬にお帰りのキスをしたのだった。

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