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幽霊探偵事務所の調査記録  作者: 水流柚子
ファイル2 ハナコ失踪事件 依頼編
8/10

その2 依頼人

今回は短めだ。

読みやすいな。

 【ラッキースケベ】という言葉をご存知だろうか。

 僕は最近まで、友達に聞くまで知らなかった言葉だ。

 友達の話によると、なんでも男女間でよく起き、少しHなイベントに遭遇した際のことを差す言葉らしい。男が女の着替えている場面に偶然出くわして下着姿を見てしまうとか、転んだ拍子に偶然男の手が女の胸を触ってしまうとか。風が吹いて、スカートがめくれパンチラを目撃してしまうような些細なこともラッキースケベに当てはまるそうだ。

 だったら、僕が今体験しているこの状況、見ず知らずの人に押し倒されてキスをしてしまっているこの状況もラッキースケベになるのだろうか。

「…………」

 但し相手は僕より身長が高く、服越しに結構筋肉があることがわかる、大柄の男なのだけど。ラッキーどころかアンラッキーなのだけれど。



「……うぐ」

 倒れた時の衝撃でほんの少しだけ気絶していたらしい大柄の男が意識を取り戻し、体を起こした。

 前に友人に見せてもらった『ラノベ』というものの挿絵にこんなような状況が描かれていたと不意に思い出す。あの絵で下にいたのは女の子だったけど。

「いてて……」

 大柄な男は頭を押さえ、あたりを見回している。

「……なんスか?」

 状況を理解できての発言なのか、理解できてないからの発言なのか。

「あれ、ミーはなにをしていたんだったスか。というか誰ス?」

 大柄の男は僕を見下ろしながらそう言った。どうやら後者の方だったようだ。

「あの……とりあえず、どいてくれませんか」

 体を起こしたとはいえ、大柄の男はまだ僕の上に被さっていた。

「あ、ああ、すまないス」

「いえ……」

 大柄の男が僕の上から退くために立ち上がる。

 さっきまであった圧迫感が遠のき、体が軽く感じられた。

「それで……ミーはなにをしていたんだったス?」

 記憶が飛んでいるのか、大柄な男が首をかしげている。

「たしか誰かを探していたんじゃないんですか? はなこだとかなんとか叫んでましたよ……」

 僕は体を起こしながらそう言った。その際、体に痛みを感じる。

 試しに腕を動かしてみると、少し痛む。いや腕だけでなく、体のあちらこちらが痛い。さっき押し倒された時に全身を強く打ち付けたようだ。打ち付けられた瞬間はそうでもなかった気もするけど、それはさっきのキスの衝撃が強すぎたせいだろう。

「はなこ……はなこ……そうだったス、ハナコ!」

 大柄の男はどうやら無事に自分がなにをしていたか思い出したようだ。そうして、思い出した途端にまた大柄の男は騒ぎ出す。

「ハナコ! ミーはハナコを探しに来たんだったスよ! なぜ忘れていたんスか! ごめんス、ごめんスよハナコ! ハナコおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

「ちょっと、大きな声出さないでくださいよ」

 この距離で叫ばれると、あまりにも大声のための振動で全身が痛む。というかそれ以前に耳が痛い。

「ハナコおおおおおおおおおおおおおおお!!! ハナコおおおおおおおおおおおおおおおお!!! どこなんスかあああああああああああああああ!!!」

 僕の言葉が聞こえてないのか大柄な男は構わず叫び続ける。そうして教室のあちらこちらを勝手に探し始めた。

「いない! いない! いない! どこにいったんスかハナコおおおおおおおおおおおおお!!!」


「まあ落ち着けよ、ここにそのはなことやらはいねぇーよ」


 大柄の男が叫んでいるというのに、その声はやけにはっきりと聞こえた。

 それは僕にだけではなく、どうやら叫んでいて僕の声すら届いていなかった大柄な男も同様で、急に落ち着きを取り戻す。

「……すまないス」

 本当に急だった。これも『不思議な力』のような現象が働いているのだろうか。

「さて、落ち着いたところで」

「どうやらあんたは誰かを探しているようだねぇ。ここにそいつはいねぇけど、そいつを探し出してやることはできる」

「それは本当スか!」

「ああ、本当だとも。なぜならここは――」

 メルは靴を履いたまま椅子の上、そして机の上に立ち、腕を組んで偉そうに言い放つ。

「――可ヶ丘高校探偵部だからな。あんたが持ってきたその『事件』、我々が絶対に解決してやろう!」

前回のよくわからない展開のせいで脱線しかけたのを、元の流れに戻すためだけに存在する1話です。

そのため短いですが、第1章第3話よりは長いです。


本編が短いのであとがきも短くしますね。

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