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幽霊探偵事務所の調査記録  作者: 水流柚子
ファイル1 可ヶ丘高校探偵部
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その4 自己紹介

そろそろ自虐的な前書きもあれなのでやめておく。

こんな駄文に、さらに前書きなんてしょうもない文をつけるのもあれだし(結局する)

 この部屋に訪れてから初めて真剣な空気になったような気がする。でもそれはきっと僕の感じ方自体であって、空気はずっと変わってないのかもしれない。

「さて、『事件』のことを聞く前に改めて紹介をしておこうかねぇ。この場所と人の」

 少女は飲み物を一口だけ飲む。それはさっきのような喉を満たすためのものではなく、喋るために口を濡らしたということだろう。

「詳しい話は追々するとして、とりあえず大雑把に。まずここは探偵部だ」

 少女は『探偵部』という場所の説明をする

 探偵部。それはここまでで何度か記していた【幽霊探偵事務所】とさして変わらないものだった。どんな『事件』も必ず解決する、そんな凄腕の探偵……厳密には探偵と名乗る少女がいる部活動だった。

 ただ、都市伝説の話と違う部分、というか都市伝説の話では触れられていなかった部分。それは『事件』の内容。

「ここに来れたということは、おまえが持ってきた『事件』もそういう類のものなんだろぉ?」

 少女のその問に、僕は頷いた。

 そうだ。そういう類なのだ。



「さてと……探偵部がどういうところかわかったところで、次は人の紹介をしようかねぇ」

 少女はそう言って、靴を脱ぎ始めた。

 何をするのかと思って見ていると、椅子の上に立ち、腕を組む。さっきも見た光景だ

「我こそはこの探偵部の部長にして凄腕の探偵、メルだ!」

 いつものごとく効果音で表すなら、バァーン!! そしてドヤァ。

「そして我に付き従っているこの者が結奏だ!」

 少女――メルが指差すのは容姿端麗でミステリアスさを醸し出している女性。

「メイ様。人に指を指してはいけませんよ」

 そう言って先ほどのようにメルを持ち上げて椅子から下ろす。

 そしてこちらに向きなおし、メルとは違い丁寧な物腰で自己紹介をする。

東雲(しののめ)結奏(ゆいか)です。東の雲でシノノメ、結ぶに奏でるでユイカ。一応探偵部の副部長を担っています」

「結奏は私の身の回りのお世話もしてくれる付き人なんだぞ!」

「いえ、別に付き人ではないけど……。ただ、メイ様が愛らしくて愛おしいので――」

 そういう東雲さんの目は怪しい光を帯びているような気がした。

 もしやこれは噂に聞く、異性より同性が好きという人なのではないだろうか。詳しいことは知らないけどそんな感じがする。

「本当はあと二人ほど部員がいるのですが、あいにく今はいません」

「あのウスカゲと動物女は基本呼ばねぇとこないからねぇ」

「はあ」

 薄影と動物女。一体そう呼ばれるのはどんな人なのか気になる。もしかしてその人たちは『事件』に巻き込まれたことがあるのだろうか。メルと東雲さんはないらしいが。

「これで、こっちの紹介はあらかたおわったな。次は、あんたの紹介をしてもらおうか。もちろん『事件』のことを含めての紹介を」

「わかりました」

 少し余計なことが多すぎたが、やっと本題に、本編に入ることができる。



 まずなにから、どう話そうかと考えて、とりあえず自己紹介をすることにした。

「僕の名前は大智、氷崎(ひざき)大智(たいち)です。漢字は――」

「それはこちらにお願いします」

 東雲さんの自己紹介を真似て、漢字の説明をしようとしたところで東雲さんからスッと紙を差し出される。

 その紙には、名前、性別、生年月日、住所、電話番号などの記入欄があった。他にも家族構成や趣味などいろいろ記入する場所があり、まるで履歴書のようだ。

「これは?」

「なんと言いますか……そうですね。お互いの信頼を成り立たせるための契約書、といったところでしょうか」

「信頼、ですか」

「ええ。こういった『不思議な力』に関わる『事件』を経験して知ってしまった人の中には、『不思議な力』で揉め事に巻き込まれるケースもありますので。『事件』を解決したあとでもお力を貸しますよというためのものです。何かあった時にお客様のことをよく知っていれば対処もしやすいでしょう?」

「はあ……」

 話を聞く限り、それは信頼のためというよりむしろ

「結奏の言い方は相変わらず回りくどくてもやもやするねぇ」

 ――それに薄っぺらい。

 自分が話に参加しないときは興味がないのか、椅子に座りながら窓の外を見ていたメルはそういった。

「そう、でしたか……」

「ああ、そうだね。そんな濁した言い方していないではっきり言っちまえばいい」

 メルは再びこちらに顔を向け、会話に参加する。

「『不思議な力』ってのは上手く使えば便利なモノもあってな、それを悪用する奴もいるんだよ。たとえ自分が巻き込まれただけで直接それに関わってなくても、存在を知っていればそれをむやみに広めようとする奴もいる」

 メルはオレンジジュースを一口飲む

「普通の奴はそれを聞いても本気で信じたりはしねぇけど、別に信じなくても知ればそれに集まってくる奴はいる。マスコミとか好奇心旺盛な奴とかマニアとかそういった『事件』に関係ない奴らが」

「だからその“契約書”はそういった面倒なことが起きないように、起こさせないように書かせてるんだよ。〝余計なことはするな。こっちはあんたの情報を握っているんだぞ〟って意味でな」

 依頼者は『不思議な力』の存在を秘密にすることで絶対に事件を解決してもらえるし、東雲さんが言ったように今後『事件』に巻き込まれても対処してもらえる。そして探偵部は個人情報を握ることで安心して『不思議な力』のことを依頼者に教え、『事件』の解決に全力を出せるということ。そういう契約で結ばれた信頼ということか。

「それ、まだ記入する前の僕に教えても良かったんですか?」

 その話を聞いた僕がもしかしたらここで依頼するのをやめ、このまま帰り、制約を受けていない僕が今日ここで聞いた話をネットとか何かで広めるかも知れないのに。

「あ? ああ、大丈夫だよ。だってお前は絶対に解決して欲しい『事件』があるんだ。書かないわけがねぇ。それにこの話を聞いて嘘の情報を書くというのも不可能だしねぇ」

 メルの言うとおり僕は絶対にこれを記入する。そのために来たのだから、たとえどんなことを言われても記入しただろう。

 それと、僕の印象が悪くならないようにこれだけは言っておく。たとえこのまま書かずに帰ることがあっても僕は別に広めたりなんてしない。そこまで性格は歪んでいない。

「では書きながらでもいいので『事件』について話してくれませんか」

 いつの間にか椅子(生徒用のものではなく、パイプ椅子)に座っていた東雲さんに促される

「わかりました」

 まずなにから、どう話そうかと考える。

 そうして結局、まずは事実を伝えることにした。

「僕の妹がいなくなってしまったんです。消えてしまったんです」

 回想。そういうには少し内容が薄いかもしれないけど、僕は妹が消えたと気づいた昨日の朝のことを思い出す


自己紹介回です。

キャラ達の紹介をどんな風にしようかと考えた結果、上手く本文に組み込めないと判断したので思い切って露骨に自己紹介させました。


実は本文の流れに組み込めずに、書かれることのなかったネタは数知れず……いつか思いっきりネタ満載の作品とか書いてみたいですね。

……これが無事に完結できれば、ですけど。

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