その2 偉そうな少女と女性
頭の中に思い浮かべた光景や進行を文字にするのがどれだけ大変か痛いほどよくわかりました。
思い通りにいかなくて、伝わりづらくなる。
それを思いながら読むといらいらが半減します(適当)
「え、え?」
今、僕の目の前ではギリ中学生くらいの少女と容姿端麗な女性が抱き合っている。
お互いの顔の距離は近く、あと数センチ近づけば唇同士が触れ合ってしまいそうな――今まで見たことのないそんな光景を目の当たりにして僕はドギマギしていた。
「いつまでもそこで惚けていないで、どうぞ中にお入りください」
女性は少女から顔を遠ざけると、こちらへと向き直りそういった。
その際、窓から差し込む光を受けた長く黒い髪が揺れる。
「そうだぞ。いつまでもドアも開けっ放しでそこに立っていられても迷惑だ」
椅子に座っていた少女が偉そうに言う。
少しこちらを見たあとすぐにあちらを向いてしまったのでよく見えなかったけど、銀色に輝く髪の隙間からちらりとみえた頬は赤みを帯びていた気がする。
「どうぞこちらに」
いつの間にか近くに来ていた女性に、僕がぼーっとしていた間に用意されていただろう席に着くように促される。
別に逆らう必要もないので、僕は椅子を引き座った。
「あの……」
突然のことがあり忘れかけていたが、僕はここに『依頼』をしに来たのだった。
しかしそれをするよりも先に、ここが本当に【幽霊探偵事務所】なのか確認する必要がある。ここが目的の場所だというよくわからない確信があっても、それは確認したわけではないのでもしかしたら違うのかもしれない。むしろ違う可能性の方が高いのだが……
「大丈夫ですよ。ここはあなたが探していた場所です」
女性は全てを見透かし、なんでも知っているかのように言った。
僕が最初にこの人を見たときに感じたミステリアスさ。僕はあまり人を言葉で表すのは得意な方ではないけど、この感じはあっていたのかもしれない。
などといつものように色々考えていると、あちらを向いていた少女がいきなりこちらに振り向き――というか椅子の上に立ち、腕を組み偉そうに言い放った。
「ようこそ、探偵部へ。貴様の持ってきた『事件』を我々が解決してやろう!」
話を区切るとしたらこのあたりが適切なのかもしれない。
などとよくわからないことを考えていると、女性が少女の方に近づいていき
「はいはい。椅子の上に靴を履いたまま立たないでくださいね、メイ様」
そういって少女を持ち上げて椅子から下ろした。効果音はヒョイ、だろう。
「ああ、すまんかったな。次はちゃんと靴を脱いでからにするよ」
「いえ、そういうことではなくてですね……」
「どうしたのだ、結奏」
「……なんでもありません。椅子の上で偉そうにしているメイ様も可愛らしいですね、と」
「ふむ、そうか」
僕のことをそっちのけで会話をしている二人。
この状況は妙に落ち着かなくて、どうしたものかと考えていたところ、それに気がついたらしい女性の方が仕切りなおしてきた。
「すみません。お見苦しいところをお見せしてしまって」
「あ、いえ別にそんなことは……」
「久しぶりのお客様なものだから、この子ついテンションが上がってしまったようで……」
「こら、子供扱いするな!」
「は、はあ……」
両腕を上げ、女性を叩く姿は子供にしか見えなかった。ちなみに叩くといっても柔らかい感じで……効果音で表すなら、ポカポカ。
しかしここにいる、ということはおそらくこの二人は高校生なのだろう。ギリ中学生くらいに見える少女も、このミステリアスさを醸し出している女性も。
もしかしたらこの女性の妹さんが遊びに来ているという可能性もあるけど、さっきの台詞を聞く限りこの少女はこの場所に関係する人のような気がする。
と、そこまで考えてまた思い出す。というかこの状況に流されまた忘れかけていたが、決して忘れてはいけないことが僕にはあった。
「あ、あの!」
話を進めるためにも僕は雑談を始めかけていた二人に声をかける。
「ああ、そういえば依頼人が来てるんだったな」
「忘れてはいけませんよ、メイ様。この方は解決して欲しい『事件』があってここに来てるんですから」
「そういう結奏も忘れてただろ」
「いえいえ、私は忘れていませんでしたよ。決して忘れたりなんかしませんよ」
「ふぅーん。……ま、いいけど」
少女はそういうと椅子に座り直し、改めて言う。
「ようこそ探偵部へ。あんたが持ってきた『事件』とやら、我々が絶対に解決してやろう」
やっぱりどこか偉そうで、幼くて、胡散臭さはあったけど、今の僕には頼りになるというか頼れそうな唯一の人だった。
通常だと1話分くらいのものを1章分として、小分けで投稿するなんとも読みづらい文章
でも短いと短時間で気軽に読めるね!(前回もいった)
小説家さんがいかにすごいか痛いほど身を持って知りました